ミスティック・リバー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
3.92
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (667ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151744013

作品紹介・あらすじ

境遇を越えて友情を育んできた、ショーン、ジミー、デイヴ。だが、十一歳のある日、デイヴが警官らしき男たちにさらわれた時、少年時代は終わりをつげた。四日後、デイヴは戻ってきたが、何をされたのかは誰の目にも明らかだった。それから二十五年後、ジミーの十九歳の娘が惨殺された。事件を担当するのは刑事となったショーン。そして捜査線上にはデイヴの名が…少年時代を懐かしむすべての大人たちに捧げる感動のミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • パトリックとアンジーシリーズと同じ作者だったので。

    映画を見たのだろうか。
    映画館で見た記憶はないが、
    少なくとも題名は知っていたし、
    幼なじみの男が三人出てくるのも知っていた。
    テレビで放映されたのだろうか。
    いづれにせよ、
    幸運なことに(?)中身は全く覚えていなかった。

    殺人事件も謎解きもあるが、
    ミステリー要素よりは、
    三人の男の人生の物語と言った方が良いかもしれない。
    全体的に暗いし、救いもないが、
    善悪を超えた命や生の脈動に魅かれた。
    特に子供の頃の描き方か秀逸。

    後半、有力情報を得た時の
    刑事のショーンと部長刑事の掛け合いが面白かった。

  • 川、それも「清流」でも「大河」でもない、田舎町に流れる普通の「川」

    「ヨイ子はここで遊ばない」と立札があり、近づくと得体のしれないものに引き込まれそうな陰鬱な「川」
    流れてはいるものの本質はいつまでも変わらない「川」

    物語は、出だしからどの場面でも「不安」「疑心」「悲しみ」「怒り」といった負の感情が、渦を巻いてまとわりつく。
    渦の陰の中心は主人公3人の少年時代の出来事。

    650ページ、ひたすら「陰」が付きまとい、主要な人物が動くたびに、感情や周りの人の状況などがこと細かに描かれる。
    また、ちょっと登場する人にも当たり前に名前があり普通に登場するので、ひっきりなしに巻頭の「登場人物一覧」を引くことに…。

    一つ一つ読み込むのに根気が必要な、重厚な人間ドラマ(謎解きではない)。

    2003年クリントイーストウッド監督で映画化された。
    ジミー役のショーン・ペンはアカデミー主演男優賞を、デイヴ役のティム・ロビンスは助演男優賞をとる。ショーン役はケビン・ベーコン。

    ア~、監督・役者を見ても……暗い。

  • この小説を一文で表すとするなら、「運命の分かれ道をたどっていくような小説」だと思います。

     主要登場人物はショーン、ジミー、デイヴ。三人で遊んでいた11歳の時、警察の名を騙った男たちによってデイヴが誘拐されます。それを機に三人の距離は遠くなり25年後。ジミーの娘が殺され、刑事となったショーンは、その捜査を担当することに。そして、当日デイヴがジミーの娘のいた酒場にいたことが分かり…

     誘拐犯の車に乗ったデイヴと、乗らなかったショーンとジミー。三人の運命はここで大きく分かれますが、それが事件を機に再び合流することになるのです。

     作中全体に漂うのはやるせなさ。愛するものを失った哀しみ、戻らない人生への悲嘆、運命への諦め。そうしたものを叙情的な心理描写や比喩を使いこれでもか、とばかりに描きます。

    そのため、展開はかなりスローテンポ。人によっては、読みにくさを感じるかとも思います。でも、この雰囲気がこの作品を、作品足らしめているとも言えると思います。

     合流した道は再び分かれ、そして三人が最終的にたどりつく場所。それは運命に抗えない人の弱さ、人生の残酷さをこれ以上ないくらいに感じさせると思います。

     読みやすいわけでもなく、読後感がいいわけでもなく…。それでもこの文体が肌に合ったならば、忘れ得ぬ物語体験ができる、そんな小説だったように思います。

    2002年版このミステリーがすごい! 海外部門10位

  • ともかく可哀想なデイブ!なんである。
    小学生で気持ち悪いオッサンにイイコトされて、それを乗り越えようとしたらまたあらぬ容疑をかけられて。これといって目立つところもないのに。嫌なことばかり巡ってくるという切なさ。
    もう一人のレイも、ただのレイと言われるくらい小市民で、でも何も無いが故にひどい目にあって。結局モブキャラとはそういうものか。。

    最終的には正義のヒーローたるショーンさんと、ダークヒーローのジョニーさんが、お互いにライヴァル感を出してカッコいいじゃんお前らってなって、デイブは単なる引き立て役で、ラストに至ってこの現実の厳しさに打ちのめされてもう堪らんわけですよ。

  • 「泣いてスッキリできる物語ではない」
    「娘を盲目的に愛する男の犯す罪」
    「人間の愚かさを描いた傑作」

    ‥というような評論に惹かれ、映画を先に見たのだが、登場人物のあまりの不憫さにショックを受けた。当時はまだ学生だったので、「社会がこんなに理不尽ならば恐ろしくて悲しくてやりきれない」と観賞後しばらく呆然とした。これほど衝撃的な映画の原作はどうなってるんだ、と思い読んだ本作。登場人物の心情が丁寧に描かれているぶん、映画よりずっと絶望感が強かった。

    死者は死後、家族や友人が笑っていると、自分のこと覚えてる?忘れないでくれよと叫んでいるのだ
    という文言が印象的。
    私の生涯忘れられない本のひとつとなった。

  •  ショーン、ジミー、デイヴの主人公3人の関係性がとてもおもしろかった。設定は最高だと思う。内容もまあ普通におもしろいと思う内容だった。

     話の最後、ショーンと奥さんの無言電話の謎もなかなか素敵なオチだった。

  • 映画化もされた文学的なベストセラーミステリだが読後は錘のような物が腹に残る。話は3人の少年に起こったある暗い誘拐事件から始まる。25年が過ぎ元ギャングで雑貨屋のジミーの美しい娘が公園で射殺された。過去の負の連鎖は避けられない。刑事になったショーン、当時誘拐されたデイヴ、 そしてジミー、3人はそれぞれの宿命を背負い事件に関わっていく。そして捜査線上にデイヴの名が現れた時…。人は自分の居場所をいつも探している。今の自分を招いたのは血の切なさと不幸な偶然の巡り合わせが作る宿命という愚かさ。そこに救いはないのか。すべては脳の中で起こり人は傷ついていく。人生は苦く切ない

  • ミステリ

  • この間、ルヘイン初めて、と書いたけど、実は「ミスティック・リバー」を数年前に読んでいたことに気づいた。だから再読ということになる。
    終わりの方まではとても面白かった。ストーリーというより、この人はやはりキャラクターがいいかな。心の揺れ、切なさ、辛い中での決断。運命が厳しい環境を与える中で、それでも精一杯筋を通してまっすぐに生きようとする人々の心の動きがとても牽引力があると思う。
    この本すごく厚くて、ドラマティックな設定(3人の少年の子供時代に起きたある出来事、成長した3人がそれぞれ刑事、被害者の父、容疑者かも知れない男、として再び引き寄せられる……)もすごく面白いんだけど、ストーリー自体はそれほどドラマティックに展開はしない。行間にずっと漂っているやるせない雰囲気の方が印象的。 で、そう、終わりの方まではとても面白かったんだけど、最後のところで私はついていけなくなったというか、興味を失ってしまった。確かにあれもひとつの終わり方で、実際、現実にはすべてがすっきりすることなんてめったにないのだけど、でも、あれはどうなんだろう。もう少しだけ、すっきりしたかった。救いがほしかった。でもきっとこれがルヘインさんらしさなのかも。

  • 久しぶりの再読。作者の熱量が感じられる力作。重厚な人間ドラマだ。少年時代に深い傷を負った3人の少年ショーン、ジミー、デイブが、大人になり再びリンクすることになる。ジミーの娘が殺され、刑事となったショーンが捜査し、デイブが容疑者となる。辛い子供時代を送った彼らがどのように成長し、どのような生き方をするようになったのかが丁寧に描写され、読者の胸に迫ってくる。憎しみや恐怖を心にしまい込み続けると人はどうなっていくのかがよく分かる。わずかにショーンの結末に光が見えるが、それにしても暗澹とさせられる最後だった。

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