灰色の嵐 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151786556

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  • アメリカの作家「ロバート・B・パーカー」のハードボイルド小説『灰色の嵐(原題:Rough Weather)』を読みました。

    『初秋』、『ドリームガール』に続き、「ロバート・B・パーカー」作品です。

    -----story-------------
    裕福な婦人からの依頼は奇妙なものだった。娘の結婚式で自分のそばにいてほしいというのだ。
    「スペンサー」は引き受け、「スーザン」とともに孤島に赴く。
    突然の嵐の中、豪華な招待客を集めた結婚式が強行される。
    だが武装した一団が襲来し、花嫁を連れ去った。
    一団を率いていたのは、「スペンサー」と深い因縁のある「灰色の男(グレイ・マン)」だった。
    彼らしからぬ犯行。
    そして婦人の依頼の裏にあるものは? 
    疑惑を抱き、「スペンサー」は調査を始める!
    -----------------------

    私立探偵「スペンサー」を主人公とするシリーズ全39作品のうちの第36作にあたり、2008年(平成20年)に発表された作品です、、、

    全身灰色ずくめの腕利き殺し屋で、「スペンサー」と深い因縁のある「灰色の男[グレイ・マン]」は、『悪党』、『冷たい銃声』に続き3作目の登場らしいですね… ハードボイルド作品としては異質な感じのする絶海の孤島を舞台にした事件をきっかけにして二人は再会し、ある部分ではお互いを認め合う二人の駆け引きや、お互いを理解し合うが故の苦悩を描いた物語でしたね。


    大金持ちの有名人「ハイディ・ブラッドショー」が「スペンサー」を訪れ、娘「アデレード・ヴァン・ミーア」の結婚式で自分のそばについていてほしいと頼んできた… 奇妙で曖昧な依頼を怪しみつつも、「スペンサー」は「スーザン」とともにマサチューセッツ沖の「ハイディ」所有の孤島へと赴く、、、

    豪華な顔ぶれの招待客が島に集まってくるなか、「スペンサー」は思いがけない人物を見かける… かつて「スペンサー」を殺しかけ、のちに協力しあったこともある因縁のガンマン、「灰色の男[グレイ・マン]」であった。

    華やかな結婚式にはそぐわない殺し屋の存在に不吉な予感がみなぎる… ハリケーン級の嵐が荒れ狂うなかで式は強行されたが、、、

    式がクライマックスにさしかかったそのとき、招かれざる客「灰色の男[グレイ・マン]」はマシンガンで武装した部下を率いて現れた… 銃撃により新郎の「モーリス・レサード」や司祭、4人の警備員が殺されるとともに、新婦「アデレード」が誘拐され、そして「スーザン」を守ることを最優先した「スペンサー」を残し、「灰色の男[グレイ・マン]」と部下たちは大型ヘリコプターで逃走する。

    多くの人が見ている中での、派手な立ち回りによる雑な犯行… 「灰色の男[グレイ・マン]」の彼らしからぬ劇的な犯行や、依頼人「ハイディ」は非常事態にも関わらず取り乱した様子がなく、「スペンサー」は不審を抱く、、、

    「灰色の男[グレイ・マン]」が現われる場所に「スペンサー」が呼ばれていたのは本当に偶然なのか… 「スペンサー」は、相棒「ホーク」とともに独自に調査を開始する。

    「スペンサー」は、「ハイディ」の別居中の夫「ハーデン・ブラッドショー」や、最初の夫で大学教授の「J・テイラー・ウォッシュバーン」二番目の夫で富豪の「ピーター・ヴァン・ミーア」、警備会社の社長「アーティ・フォンセカ」等々の関係者を訪ね歩くとともに、ボストン市警の警部「マーティン・クワーク」や州警察殺人課課長「ヒーリイ」、情報局員「アイヴズ」等々の警察関係者等にも接触し、徐々に真相に近付いて行きます… 死闘を演じた過去にもかかわらずお互いを理解し合ったかに思われた「スペンサー」と「灰色の男[グレイ・マン]」は、やはり相容れぬ敵同士でしかありえないのか、、、

    謎の男「灰色の男[グレイ・マン]」の核心へ分け入る「スペンサー」の調査は意外な真実へとたどり着きます… 二人が死闘を繰り広げるのかと想像しながら読み進めましたが、やや想定外の幕引きでしたね。

    「ハイディ」の過去を調査する中で判明した事実から、「灰色の男[グレイ・マン]」と「ハイディ」、「アデレード」母子の関係については、ある程度想定できまたが… 終盤で、「灰色の男[グレイ・マン]」が「スペンサー」の部屋を訪ねてきて、自ら明かされる過去と、それを受け止めた「スペンサー」の葛藤と決断、、、

    不幸な過去を背負った「アデレード」にとっては、明るい将来が期待できるハッピーエンドだったと思います… 許せないのは金の亡者「ハイディ」ですね、司法で裁けたのかな、その後がちょっと気になります。




    以下、主な登場人物です。

    「スペンサー」
     私立探偵

    「スーザン・シルヴァマン」
     スペンサーの恋人

    「ホーク」
     スペンサーの相棒

    「ハイディ・ブラッドショー」
     裕福な婦人

    「アデレード・ヴァン・ミーア」
     ハイディの娘

    「J・テイラー・ウォッシュバーン」
     ハイディの最初の夫。大学教授

    「ピーター・ヴァン・ミーア」
     ハイディの二番目の夫。富豪

    「ハーデン・ブラッドショー」
     ハイディの現在の夫

    「マギー・レイン」
     ハイディのアシスタント

    「モーリス・レサード」
     アデレードの夫。製薬会社の御曹司

    「アーティ・フォンセカ」
     <アブソルート・セキュリティ>CEO

    「エミール・ロッセリ」
     治療カウンセラー

    「ラマー・ディラード」
     弁護士

    「トニイ・マーカス」
     大物ギャング

    「レナード」
     トニイの手下

    「ジュニア」
     トニイの手下

    「タイ・ボップ」
     トニイの手下

    「ディックス」
     精神科医

    「リタ・フィオーレ」
     弁護士

    「マーティン・クワーク」
     ボストン市警の警部

    「ヒーリイ」
     州警察殺人課課長

    「エプスタイン」
     FBIボストン支局長

    「アイヴズ」
     情報局員

    「灰色の男[グレイ・マン](ルーガー)」
     情報局員

  • 2○Sorellina:イタリア料理店。1 Huntington Ave, Boston, MA。すこし高級。
    3○catamaran:双胴船。2つの船体(ハル、Hull)を甲板で平行に繋いだ船。
    ○New Bedford:マサチューセッツ州ブリストル郡南部海岸に位置する都市。捕鯨博物館がある。
    ○Buzzards Bay:マサチューセッツ州の南部に接する長さ約45キロ、幅約12キロの湾。
    ○Camelot:ミュージカル。Alan Jay Lerner(脚本と歌詞),Frederick Loewe(作曲)。アーサー王の伝説に基づく T. H. Whiteの小説『永遠の王(The Once and Future King)』が原作。映画化もされた。
    ○Cirque du Soleil:1984年にカナダのケベック州モントリオールに本拠地を置くエンターテイメント会社。世界最大の現代サーカスの製作者。2020年6月29日、事実上経営破綻し、会社更生を目指すこととなった。
    ○Clydesdale:スコットランド原産の輓馬。Lanarkshire郡内の地名に由来する。
    ○Belgian:ベルギーの輓馬。
    5○Windsor collar:襟元の間隔が約89~216mmのもの。スプレッド・カラー。よりフォーマルなスタイル。
    ○“Only where love and need are one,:Two Tramps in Mud Time by Robert Frost.
    9○鹿弾:狩猟用の大粒散弾。
    11○Candy Sloan:『残酷な土地』を参照。
    16○Grill 23:161 Berkeley St, Boston。
    ○空いた席にバッグを置き,その隣に坐った。:原文:sat down next to me.
    ○リア王:change places and, handy-dandy, which is the justice, which is the thief? 『リア王』四幕第六場。
    17○Acushnet川:Acushnet川はマサチューセッツ州の南部,大西洋の一部であるBuzzards Bayに流れ込み,その両岸にFairhavenとNew Bedfordがある。橋は湾内の二つの島を通過している。事務所はNew Bedfordの捕鯨博物館の近くにあると思われる。
    19○Lydia Hall College:実在しない。
    ○cocktail dress:パーティーやその他の夜の社交イベントに着用するためのフォーマルドレス。
    ○Chippendales:米国の男性ストリップ・ダンス・ツアー・グループ。蝶ネクタイ・襟・カフを付けていることが多い。
    ○殴り合う前に手に持っていたはずのビール瓶はどうしんだろう?
    21○Rein's:435 Hartford Turnpike, Vernon。『秘められた貌』(High Profile, 2007。ジェッシイ・ストーン・シリーズ) 22でも言及されたタン・サンドイッチは,メニューに見当たらない。2020/12/19現在。
    23○Lock-Ober:正しくはLocke-Ober。『Looking for Rachel Wallace』(1980年)では,こう書かれていた。フランス料理とシーフードの店。ボストンで4番目に古いレストランだった。2012年に閉店。
    24○black watch:黒い番人。タータンの一種。青地に緑と黒の配色による格子柄綾織物。Scotlandの独立歩兵中隊六隊の別名に由来。
    ○Courvoisier:サントリーの子会社ビーム サントリーが所有するコニャックのブランド。
    27○P. F. Chang's:8 Park Plaza Spc D-6, Boston, MA。ポークの甘酢あんかけ=酢豚。
    28○Bone Handle:把手が骨製。牛の骨が一般的だが,鹿の骨なども使われる。
    29○rep stripe tie:畝織りのレジメンタル(斜めの)・ストライプ・タイ。
    ○Lochinvar:Ivesがスペンサーにつけた愛称。『キャッツキルの鷲』を参照。 Walter Scottの詩『Marmion: A Tale of Flodden Field』から。無理矢理結婚させられる恋する女性を教会から連れ出す騎士の名前。スーザン救出になぞらえる。
    ○Krug:最高級シャンパーニュ。
    ○Uncle Sam:米国政府を擬人化したキャラクター。原文は「his uncle」。
    30○アルファベット順:Arlington:Berkeley:Clarendon:Dartmouth:Exeter:Fairfield:Gloucester:Hereford:
    32○Good Samaritan:困った時や何かあった時に助けてくれる,特に見知らぬ人。ある人がエルサレムからエリコに向かう道中で強盗に襲われて身ぐるみはがれ、半死半生となって道端に倒れていた。三番目に通りかかったあるサマリア人は、そばに来ると、この半死半生の人を助けた。ウィキペディア
    ○ミズ・グラスは不法入国者に静かに話しつづけていた。ふたりはディラードを見て,ミズ・グラスに何か言った。彼女は首を振って話しつづけた。:この部分,初版では訳し漏れ。
    35○あなたの犬を職場に:Pet Sitters Internationalが1999年からはじめた年一回金曜日に職場に犬を連れて行くことを企業が認めるように制定した日。それによって犬の養子縁組が促進されると考えている。
    ○tally-ho!:キツネを見つけたときに猟師が猟犬にけしかけることば。
    37○Franklin Park:ボストン最大の公園で,敷地内に動物園もある。White Stadiumはその一部で,1万席を有し,フットボールなどのスポーツイベントや,各種の集会に使用される。
    ○Louis:234 Berkeley St Boston, MA.
    39○windowpane:窓枠の格子のように縦横の線の模様。格子縞。
    40○ドレスを着てると思うか?:フーヴァーが同性愛者であり、服装倒錯者(Cross-dressing)だったという推測及び噂が生前から多く出回っていた。ウィキペディア
    41○Boston Braves: Atlanta Bravesの前身。1952年までボストンを本拠地としていた。
    ○Gonzaga University:、ワシントン州スポケーンにある米国の私立大学。1887年にイエズス会により設立された。
    42○感謝祭:米国の祝日。11月の第4木曜日。フットボールの試合を見るのは、定番の過ごし方の一つ。元々は収穫祭であり、感謝祭の中心となるのはサンクスギビング・ディナーである。wikipedia.
    45○Mount Holyoke:マサチューセッツ州にあるセブン・シスターズのひとつ、米国最古の女子大で難関大学。
    46○Miss Daisy:アルフレッド・ウーリーの戯曲『Driving Miss Daisy』から。映画化された。アメリカ南部を舞台に、老齢のユダヤ系未亡人とアフリカ系運転手の交流をユーモラスに描く。邦題『ドライビング Miss デイジー』。/『ドリームガール』55でも。
    ○親密な関係にある:原文:Significant other.大切な人。心理学の用語でもある。
    48○自宅で州に二、三日:週に。初版からなおしていない。
    52○Dix:『スクール・デイズ』School Daysおよび,ジェッシイ・ストーン・シリーズを参照。
    53○Nassau Inn:ニュージャージー州プリンストンのダウンタウンにある唯一のフルサービスホテル。プリンストン大学の近くにある。1756年に建てられた建物は,独立戦争の際,英国軍に占領された。1938年に10 Palmer Squareに移築された。バー(taproom)は,Yankee Doodle Tap Roomといい,Norman Rockwellによる大きな壁画がある。
    ○Schuylkill:ペンシルベニア州東部を流れる川で、フィラデルフィア近くでデラウェア川へ合流して、大西洋へ流れ込む。プリンストン大学は,フィラデルフィアの北東50kmほどにある。
    56○Annie Oakley:1860年~1926年。米国オハイオ州生まれの女性の射撃名手。『アニーよ銃をとれ』の題材となった。20feetは、6.1m。
    57○Agawam Diner:マサチューセッツ州ローリー(米国ルート1)にある歴史的なダイナー〔食堂車型の軽食レストラン〕。1947に製造されたもので、1999年に国の史跡に登録された。
    ○糸も紡がないし、種も蒔かない:マタイ伝福音書-第六章28「又なにゆゑ衣のことを思ひ煩ふや。野の百合は如何して育つかを思へ、勞せず、紡がざるなり。」
    58○魚に自転車が必要:Irina Dunnのフェミニストのスローガン「A woman needs a man like a fish needs a bicycle.」より。女に男は必要ない。
    59○Davio's:Davio's Northern Italian Steakhouse. 75 Arlington St, Boston, MA.
    ○金に加えて何かあるはずだ:この前に「"Always a good guess,"I said."But it is so against his nature."/Hawk nodded.」あり。
    62○信用せよ,ただし確かめよ。:Trust, but verify。ロシア語のことわざの翻訳語。ロナルド・レーガン大統領がソ連との核軍縮協議の際に何度も使用して,英語で知られるようになった。ゴルバチョフ書記長はそれに答えて,エマーソンの言葉を引用した。"The reward of a thing well done is to have done it."
    ○Namu, the Killer Whale:1966年の米国の映画。Namuはシャチに付けられた名前。
    ○愛はどこだ?:what's love got to do with it? ティナ・ターナーが1984年に発表した楽曲の題名。日本でのタイトルは「愛の魔力」。

  • 物語のスタートはスペンサーシリーズらしからぬダイハード的。その後はいつもの藪をつついて蛇が出るのを待つパターン。最後の出立の乾杯シーン、「私たちは友人にはなれない。だが、ふたたひ敵になることはない」のセリフでここ一番の作品になったと思う。

  •  2010年01月22日~24日。

     いつものスペンサー。
     水戸黄門的な面白さがある。

  • 最高!

  •  スペンサーがボディガードを引き受けた結婚式に、かつてスペンサーを撃った灰色の男=グレイマンが姿を現す。そして結婚式の会場は銃撃に洗われ、血の海に。

     そんな前振りを受けていたせいか(少しは過剰な思い込みがあったとしても)、おお、あのグレイマンがスペンサーをてこずらせにやって来たのだなと、たまにこのシリーズにも訪れるハード・アクション・ストーリーへの期待を込めて巻を開く。

     ところが期待したそれと違って、グレイマンはグレイマンでありながら、どこか第三者的な距離の伺えるプロフェッショナルな存在のようには見えない部分があり、それもそのはず、本書は灰色の男が最初から最後まで主役のようなものなのだ。それをスペンサーと相棒ホークが解き明かすまでの過激ながらも、どこか甘党な現代アメリカの肥満度さえも感じさせるストーリーに堕しているあたりが期待はずれ。

     ラストシーンでは、ダーティ・ハリーが第四作でついに女性容疑者を逃亡させてしまったときに匹敵するくらい甘党であり、それを笑わせてしまうスペンサーとホークの会話は、もっと世知辛い。

     銃撃と暴力を売りに出している私立探偵という商売のなかで、家族だとか娘だとかセックスフレンドだとかいった存在とのなあなあな繋がりばかりが先受けしているプロットに少し飽きがきた。そんなシリーズの難所なのかもしれない。

     かつて訪れたシリーズ最大の凹みをまたふたたび凌駕するような真似はよせよ、と思いたくなる掌編であった。

     ちなみに電車のなかでカバーをつけずにこれを読んでいる人がいた。眼鏡をかけた50年輩の女性である。スペンサーのシリーズが今も継続して巷でしっかり読まれている現象に遭遇して少し嬉しい。若い人が『初秋』や『失投』あたりを読んでくれているシーンに出会えれば、もっと嬉しいはずなのだが、そんな光景にお目にかかったことは残念ながら一度もない。

  • 読書【灰色の嵐】スペンサーシリーズ。今回はこのシリーズには珍しくハードアクションと依頼人が大金持ちで調査費用を入金出来た所から始まる。過去に何度か登場したグレーマンとのやり取りに活字に釘付け状態!ラスト20頁では歓喜余って不覚にも泣いてしまった。アデレードの今後の幸せを望む!

  • スペンサー・シリーズの第三十六作目。

    初読 2011.10.21

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