アデスタを吹く冷たい風 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 35-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151811012

作品紹介・あらすじ

妥協なき謎の解明者〈テナント大佐〉の短篇を含めた伝説的短篇集を文庫化。7篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • “ポケミス”の愛称「ハヤカワ・ミステリ」の復刊希望アンケ-トで、二度に亘ってNo.1の票を集めた<トマス・フラナガン>の短編七編の文庫版。 表題作を含む四編は、某共和国の軍警察に在籍するテナント少佐(上官には不遜な態度をとり、出世とは無縁、有能であることは認められながらも周囲から孤立した存在) が、歪んだ国家体制もとで正義の実現を目指すハードボイルド・ミステリ-。『もし君が陪審員なら』『うまくいったようだわね』は、捻りの効いたサスペンス・ミステリ。『玉を懐いて罪あり』は、歴史ミステリの快作。

  • 1998年、2003年の復刊希望アンケートでどちらも1位を獲得した名作が、ハヤカワ文庫補完計画で文庫化。
    『共和国』と呼ばれる架空の独裁国家を舞台にしたテナント少佐ものの短編4本、ノンシリーズ短編2本、そして歴史ものの短編が1本、合計7本が収録されている。短編集としてもさほど分厚くない文庫本、収録数もまぁ普通……という割にはバリエーションに富み、『テナント少佐』ものでは特に人間の心理的な死角を突いたトリックの切れ味が鋭い。
    逆に『もし君が陪審員なら』『うまくいったようだわね』の2本は、読了後に『その先』の想像をかき立てる幕切れ。こちらも良かった。
    これがずっと品切れだったのは勿体ない。版を重ねていれば、定番の名作として愛されたような気がするのだが……。文庫化をきっかけに『定番の名作』になることを祈りたい。

  •  7編収録の短編集。

     前半の4編は軍人のテナント少佐が活躍する
    短編。架空の国が舞台で将軍の圧政や革命など
    ところどころ不穏なその国の空気が描かれている
    のが上手いです。


     またテナント少佐の軍隊の権力や派閥に縛られず、
    自分の正義と思考に愚直に行動する姿がとても男前
    です。

     テナント少佐ものがこの短編だけなのが残念…
    この国の政治をもっと掘り下げた長編があったら
    間違いなく名作になりそうな予感がします。


     他3編は歴史ミステリにブラックユーモア、奇妙
    な雰囲気のものとバリエーションが豊か。特に自分
    が好きだったのは、
     被告の無罪を勝ち取った弁護士がその友人の
    大学教授に被告の男の過去を語る「もし君が陪審員
    だったら」
     結末の何とも言えない感じをぜひ味わってほしい
    です。 

  • アメリカの作家トマス・フラナガンの短篇ミステリ作品集『アデスタを吹く冷たい風(原題:The Cold Winds of Adesta)』を読みました。
    ここのところ、アメリカの作家の作品が続いています。

    -----story-------------
    復刊希望アンケートで二度〈第1位〉を獲得!

    風が吹き荒れる中、闇を裂いてトラックがやってきた。商人が運ぶのは葡萄酒か密輸銃か? 
    職業軍人にして警察官のテナント少佐は強制的に調べるが確証を得られず、トラックは通過してゆく。
    謹厳実直の士、テナントが起こした行動とは?
    「復刊希望アンケート」で二度No1に輝いた七篇収録の名短篇集、初文庫化。
    -----------------------

    日本で独自に編纂され1961年(昭和36年)に刊行された短篇集を文庫化して2015年(平成27年)に復刊された作品で、トマス・フラナガンのミステリ作品が全て収録された唯一の作品のようですね。

     ■アデスタを吹く冷たい風(原題:The Cold Wind of Adesta/1952年)
     ■獅子のたてがみ(原題:The Lion's Mane/1953年)
     ■良心の問題(原題:The Point of Honor/1952年)
     ■国のしきたり(原題:The Customs of The Country/1956年)
     ■もし君が陪審員なら(原題:Suppose You Were on the Jury/1958年)
     ■うまくいったようだわね(原題:This Will Do Nicely/1955年)
     ■玉を懐いて罪あり(『北イタリア物語』を改題)(原題:The Fine Italian Hand/1949年)
     ■解説 千街晶之

    最初の4篇はテナント少佐シリーズの作品、残りの3篇はノンシリーズの読み切り作品です。

    テナント少佐シリーズは、クーデターで王政を打倒した無慈悲な将軍が国の全権を掌握し戒厳令下にある地中海の共和国の職業軍人・テナント少佐を探偵役にした独特の雰囲気を持ったシリーズ… そんな中でも印象に残ったのは『獅子のたてがみ』と『良心の問題』の2篇かな、、、

    被害者?加害者?どちらも意外などんでん返しが愉しめましたね… 構成の巧みさが味わえる秀作でした。

    その他の作品では、『もし君が陪審員なら』と『うまくいったようだわね』の2篇が印象的でした… いずれも弁護士が主人公で夫婦間での殺人がテーマとなっているのですが、どちらも弁護士に訪れる意外な結末が用意されていて面白かったです、、、

    どちらも弁護士に同情しちゃいましたね… 世にも奇妙な物語 的な展開でしたね。

    好みは分かれるところかもしれませんが、まずまず愉しめましたね。

  • 乾いた味わいの短編集.
    テナント少佐シリーズの4編が良い.
    ただ,訳が分かりにくい.

  • ノン・シリーズも異色短編として悪くはないが、水準作(「玉を懐いて罪あり」を除く)。やはり読みどころはテナント少佐シリーズ。フランコ独裁政権下のスペインをイメージした架空の共和国で、かつては反将軍派でありながら、今はその将軍に仕えなければならないテナント少佐の、面従腹背を地で行く苦闘が描かれる。テナントの闘いは単に謎を解いて、犯人を捕まえれば良いと言うものではない。ときにおぞましいとも思える命令に従いながら、自らの矜持や正義を守り抜くためのパズルを、テナントは解かねばならないのだ。
    実は数十年ぶりの再読なのだけれど、びっくりするくらい覚えてましたね。これは傑作。

  • 期待ほどではないかな

  • どちらかというと俺的には苦手なトンチものの短編集。「もし君が陪審員なら」「うまくいったようだわね」が1950年代の奇妙な味があって面白かった。ポケミスで長らく絶版で復刊希望アンケートでは上位であった本作が、文庫化されたことは素直にうれしいことだと思う。

  • 思いがけず面白い。短編ミステリでここまで楽しいとは。
    独裁政権下の軍人テナント少佐シリーズは手に汗握るし、陪審裁判の話は冷や汗モノ。

  • ベースの古さはいなめないが、独創性は秀でていると思った。

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トマス・フラナガンの作品

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