熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ル 6-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151821516

感想・レビュー・書評

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  • 『ミレニアム』を生み出した北欧ミステリが熱い!ということで,スウェーデンはラーシュ・ケプレルの『催眠』にしようと思っていたのですが,『ラスト・ウェイ・アウト』の帯にあったこちらが気になって気になって予定変更。
    何!『熊と踊れ」って!!原題の"Bjorndansen"はまさに,「熊のダンス」という意味の模様。

    「なあ,ヴィンセント・・・熊のダンスだよ」(p.284)。

    父親から暴力を振るわれて育った3兄弟は,大胆な現金輸送車の襲撃,そして銀行強盗を企てる。彼らを追うブロンクス警部もまた,暴力の被害を受けた子ども時代を送り,そして,そんな家庭で兄と身を寄せ合って生きていた。同じような境遇で育ち,暴力の影響を心身に受けた両者の対決はいったいどちらが勝つのか?
    3兄弟に協力する幼馴染のヤスペル,長男レオの恋人アンネリー,ブロンクスのかつての恋人サンナや服役中の兄サムなどの面々と,父イヴァンとが絡みつつ,昔(14年前?)と現在とが交錯しながら物語は進みます。

    とにかく最初の銀行強盗のシーンがすごい!ものすごい緊迫感(特にヴィンセントの)が伝わってきます。その瞬間にヴィンセントを安心させようとするレオの「愛しているよ」が,ブロンクス警部が彼らの絆を見破るきっかけになるとは,なんという伏線。鏡の双子のように似ているけれど正反対の3兄弟とブロンクスの関係が大きな見所です。
    完璧な強盗計画は実は随所にもろさが見え,紙一重で難を逃れたりもしているところがリアリティがあってすばらしいです。

    本筋と関係ないところでは,スウェーデンのクリスマス料理「ヤンソンの誘惑」とかへえと思いました。聖ルチア祭も知らなかったし。
    スウェーデンは移民が多い国のようで(日本と比べればどこも多いけど),3兄弟の父イヴァンもクロアチア系移民という設定です。こういうのも勉強になりますな。

    というわけで,下巻へ続く。

  • 【ハヤカワ・ミステリ文庫創刊40周年記念作品】凶暴な父によって崩壊した家庭で育ったレオ、フェリックス、ヴィンセントの三人兄弟。独立した彼らは、軍の倉庫からひそかに大量の銃器を入手する。その目的とは史上例のない銀行強盗計画を決行することだった――。連続する容赦無い襲撃。市警のブロンクス警部は、事件解決に執念を燃やすが……。はたして勝つのは兄弟か、警察か。スウェーデンを震撼させた実際の事件をモデルにした迫真の傑作。最高熱度の北欧ミステリ。

  • 実際の事件をモデルにした、父親の暴力で育てられた兄弟が起こした、などの事前情報をついうっかり読んでしまって、読み始めるのがちょっと億劫だったけど、ページを開いたら一気呵成に読み終えてしまった。

    確かに父親の暴力シーンは読んでいて辛かった。
    まだたったの10歳のレオ、7歳のフェリックス、3歳のヴィンセント。
    父の暴力は子どもたちに向かうわけではない。
    けれど、少なくともレオとフェリックスは、父の暴力の気配を怖れながら育ったように見える。

    特にレオは、暴力を抑えられない父を、暴力に支配された男とみる。
    だから自分は決して暴力に支配されることがないよう、自分を律して生きてきた。

    で、何でそれが銀行強盗になるのかわからないよ。
    結局自分を律することのできる自分ってのに酔ってるの?
    警察に銃を向けられた時のために備えはするが、自らは暴力を振るわない銀行強盗。
    権力にたてつき、強かに裏をかいて、勝利を得る。
    レオの心理としてはそういうことなのだろうか。

    しかし、頑固なフェリックス、臆病なヴィンセント、そして短絡的で自制心のない幼馴染みのヤスペル。
    彼らをうまくまとめて、何があっても決して彼らを危険な目から守ってやる男として、レオは存在する。

    だけどレオのしていることは、肉体的な暴力ではないけれども、精神的な暴力ではないのか?
    弟たちは、特にヴィンセントは積極的に銀行強盗をしたいなんて思っていない。
    そして、現在17歳のヴィンセントは、普通に生活していさえすれば、それほど兄の庇護を必要としないはずだ。
    「守ってやる」そう思った時点で、レオは兄弟たちを精神的に縛ってしまったのではないか。

    そして彼らを追うストックホルム市警のヨン。
    彼もまた暴力に支配された家庭で育って来たらしい。
    だから彼はレオたちのしていることは単なる『強盗』ではなく『安全の強奪』だ、と思っている。
    過剰な暴力にさらされた人は、身体の瑕が癒えても心の傷が癒えないことが多いからだ。

    レオたちの中で一番やらかしそうな人が、計画に反することをやらかして、単純な銀行強盗が大事になってしまったところで次巻に続く。

  • 実在の事件を下にしたという作品。

    スウェーデンでは2010年まで徴兵制が実施されていたので、一定年齢以上の男性は、基礎的軍事訓練は受けているという事になりますね。この作品は、そのことを知っていると、中身の理解が進みます。

    とはいっても、基礎訓練だけで、ここまでのことできるんですかね?あとは、才能と努力なのかな。

    上巻の最後で、いよいよ物語が動き始めます。下巻で、どういうように三人兄弟が追い詰められていくのか?期待です。

  • 暴力性と歪ながら強固な家族の話
    スリルはあるが似た空気感が続いて長い

  • 【所蔵館】
    総合図書館中百舌鳥

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000940698

  • 図書館で。
    今ちょっとこういうお話読みたい気分じゃなかったので…

  • 三兄弟と幼なじみとの四人が軍の武器庫から大量の銃や弾薬を盗み、強奪を図る。現金輸送車を襲い銀行を襲い同時に二つの銀行を襲う。統率のとれた彼らのことをマスコミは軍人ギャングと呼んだ。
    一般の家庭で育てば、暴力に馴染みはない。しかし犯人グループのリーダーである長兄レオは、暴力を厭わない。躊躇なくふるう。なぜふるえるのかその理由も描かれている。
    見事に銀行強盗を成功させる彼らだったが、きっとこのままうまくはいくまいと予感させながら下巻へと続く。

  • 2014年発表
    原題:Björndansen

  • 暴力扱い方がある意味新鮮。

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著者プロフィール

アンデシュ・ルースルンド 1961年生まれ。作家・ジャーナリスト。ヘルストレムとの共著『制裁』で最優秀北欧犯罪小説賞を受賞。

「2013年 『三秒間の死角 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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