真夜中の子どもたち 下 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152076519

作品紹介・あらすじ

魔術師リアリズムの極致。ガルシア=マルケス『百年の孤独』以上と評価された、80年代最高の話題作。英国ブッカー賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • (上)の感想の最後に読むのが大変と書いたが、エネルギー溢れる文字の氾濫に、頭がふらふらの状態になって、いやいや老体にはどおっと疲れが出てやっと読み終わりました。

    第1巻、第2巻、第3巻の構成になっていて、第1巻は語り手主人公サリームの家系図から始まります。母方の祖父の青春、その妻祖母との結婚のいきさつ、サリームの母の青春、結婚、そしてサリームが1947年の歴史的なインド独立の真夜中に生まれます。その家族の記録がぶっ飛んでいて面白いのですが、しかしこの第1巻の終わりでこの物語の仕掛けがわかってしまうのです。

    さあ、第2巻、第3巻はどーする、です。でも心配はいりません。アラビアンナイトも真っ青、奇想天外の冒険&インドの歴史的事実をからめた考察・批判なり、インド観光地案内です。

    というと漫画チックですが、近代世界文学にはない、超現代世界文学の真骨頂なのでしょう。マジックリアリズム!これからますます世界の文学にこのエネルギーはあふれるのでしょう。

  • 「百年の孤独」が好きだったので、マジック・リアリズムを読んでみようと思って手に取った作品。混沌としたインドの歴史はマジック・リアリズムと相性がいいなと思う。悲劇と喜劇が表裏一体になったようなテンションの高い物語、鮮やかな色彩のイメージや大げさな身体描写など、「百年の孤独」からも感じたマジック・リアリズムの楽しさを再確認できた。

  • 本当に打ちのめさせられた。サリームの持つ神秘的能力はたやすく現実に追い越され、無数の地を流す腐敗と騒乱と宗教対立に潰されていくが、それすら数億の神々を擁するインドの神話の下に吸収される。己の血族とインドの歴史そのものと密接に結びついた激動の半生は20世紀の寓話であり、現代への問題提起でもある。サリームほどでないにしろ、誰だって家族や時代、歴史といったものから完全に逃れた人生を送ることはできない。しかし例え希望が切除されるような時代であれど、個人が個人として生き、ささやかな私生活を暮らす事は肯定できるのだ。

  • 長かった…実に4ヶ月ほどかかってしまった。
    読み終わったときに、これはなんだろう?と一応考えたんですが、もちろん一言で表せる内容ではないので。
    だけど、こういうことってあるよな、と思った。
    人々の記憶にいっ時はセンセーショナルに映った人や事件が、いつしか忘れられて、でもその人や事件自体は忘れられた後も、存在している、みたいな

    人々のそういった勝手さ
    家族や環境
    国や宗教

    色んなものに振り回されながら
    生きてるよな

  • サリーム・シナイは真夜中の子供たちの一時党首を意識していた点からか31歳の誕生日に止むを得ず結婚し、バックトゥボムした(ボンベイへ帰ってきた)彼は爆弾(ボム)となる決意をする。


    たまたまだが、主人公と同い年で読めてよかったが、一体どういう人生を送って同い年のサリームはここまで達観できたのか、こんな文が書けるのかと打ちのめされた。私の誕生日は爆発しなかったし、真夜中の子供たちみたいな魔法の子に生まれなかった凡性をつきつけられた。
    面白かった。それ以上言葉がない。語ることは全部この小説が中で語ってくれた。否、語り終えてしまった。読了後、啞になるしかないような小説。

  • 下巻はラシュディの筆が乗ってる感じでどんどん読めた。上巻には「何でこの本こんなに有名なの?」と思わなくもなかったのだけれど、下巻には有無を言わさない王道感が漂ってた。そうかブッカー賞だものね、みたいな。上巻で張られた伏線が回収されていくのも読んでいて気持ち良かった。

    独立後のインドの混乱・隣国との戦争が、子供時代を抜け出したサリームくんとその一家を翻弄する。バングラデシュ独立戦争に派兵されたくだりはおなかがひんやりするような怖さで、その後のサリームくんが襤褸雑巾化するのもしかたない。そしてそれでもインドと自分を同一化せずにはいられないサリームくん。永遠の長子。報われない人生。

    それでも彼の息子が(サリームくんの人生観においてだけど)一段階先に進んだ気質を持って生まれてきて、次の世代があるんだっていう希望がちらりと見える終わり方はちょっとよかった。70年代前半で話は終わるんだけど、今のインドの若者はこの本にどういう感想を持つんだろうな。

  • ブラス•モンキーが可愛過ぎて、私はすっかりファンになってしまったんだけど、最高に面白くって最っ高に長い小説。

    長い年月の後サリーム•シナイはパールヴァティの顔にジャミラ•シンガーを見る事になり、私はジャミラ•シンガーからブラス•モンキーの姿を見失ってしまうのだが、莫大な数の中で数字が1,2,3と進んで行き、サリーム•シナイが群衆の中に馴染み深い人々の顔を見出す事になったその日、身を潜めていた修道院から抜け出し駆けて来るジャミラの懸命な表情に、私はかつて見失ったブラス•モンキーを再び見つけ出すのだった。

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