マヂック・オペラ --二・二六殺人事件 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 92
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152086716

感想・レビュー・書評

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  • どこかのブックガイドから。意図した訳じゃないんだけど、本作も二・二六事件にまつわる物語だった。偶然~。さておき、知名度も人気も宮部作品の方が上なんだろうけど、自分的にはこちらに軍配。改めて思うけど、やっぱり主人公の人物造形の良し悪しで、かなり明暗が分かれる。記憶が新しいこともあり、どうしても”蒲生邸”と比べて、って読み方になってしまったけど、本作は、より史実寄り。怪人二十面相みたいな突拍子もない設定を入れつつも、歴史の暗闇に斬りこむ作業にもかなりの熱量が注がれている印象。って、事件に全然詳しくない自分が何をかいわんや、ではあるけど。単行本上下段で500頁近い分量には正直ちょっと疲れたけど、でもスリリングな読書体験でした。できれば本作を含むオペラ三部作を読破したいけど、時間がな~…。

  • 昭和史をテーマにした骨太なミステリーです。この作品では二・二六事件がテーマとなっていて、史実と虚実が入り混じり、「虚」が「実」だったのではないかと錯覚するような作品になっています。現実を舞台にノンフィクションを創造するタイプの小説としては、非常に出来が好いと思います。

    何も前情報なしに読んだのですが、どうやらこの作品は著者の「オペラ三部作」と呼ばれるもののうち、二作目にあたるようです。とは言っても、恐らく三部作に共通するのは主人公格で登場する「黙忌一郎」という人物のみで、それ以外は別個の作品になっているかと思われます。

    置屋で殺された芸者の死の真相を巡る中で、徐々に明らかになっていく新たな事実や人間関係は、非常に複雑。登場人物は恐らく20名程度で大して多くはないのですが、そのうち3割ぐらいは歴史上の実在の人物だったりするので、「この実在の人物と、この創造の人物が関係するのか?」と考え込んでしまうと、頭の中は一気に混乱します。

    内容的にもページ的にも(ハードカバー、1ページ2段組で450ページ強!)ヘビーなので、軽々しく勧められるものでもないですが、日本の近現代史に関心が深い人ならば特に面白く読めるはずです。

  • ちょっと物足りない感じはあったけどおもしろかった。

  • ミステリ・オペラ3部作、その2
    二・二六事件に詳しい人であれば、面白く読めるかも。
    つまらなくはないが、ミステリ・オペラ(その1)よりは、ちょい劣るかも。

  • 求めていたものというか、二二六の本筋に関わってくるものとは違ったのだけれど、面白かった。前巻より確実に好き。ラストのどんどん展開が転がっていって雪崩がおきる感じがもう…黙さんウワアアアってなる…

  • 「二十世紀の大都会ではおよそ人から、「自分」というものが剥奪されてしまう。もうこの時代には唯一無二の「自分」などというものはどこにも存在しない。写真であなたの「複製」が無数に作られる。あなたはここにいるのにあなたの声は電話ではるか遠方まで届いてしまう。ここにいたはずのあなたは電車に乗ってあっという間に遠方に運ばれる。本当のあなたはどこにいるのだろう。本当の自分はどこにいるのか。そもそも本当の自分などというものが存在するのだろうか。それは虚妄にすぎないのではないか。二十世紀のメトロポリスにおいてあなたがあなたである必要がどこにあるのか。そこにいるあなたはすでにあなた自身にとっても見知らぬあなたではないのか。あなたはどこまであなたなのか。」

    第二部完了。ミステリーとしてはそれほどでもないが、面白かった。

  • 山田正紀がまた新しい引き出しを開けた。 誰が二・二六事件と怪人二十面相とを組み合わせられようか。
    一言で言ってしまえば二・二六事件を扱った歴史ミステリー。過去と現代が錯綜する前作の作風を期待する肩すかしを食う。前作ほどの豪腕はふるわれてはいないが、 十分に突拍子なく、十分にデカい風呂敷を広げている。 まさしく山田正紀にしか書けない本である。

  • 二・二六事件前夜。置屋の密室で芸者が刺殺された。
    詳細は「“乃木坂芸者殺人事件”備忘録」と縊死した囚人の手による「感想録」に綴られていた。
    “検閲図書館”黙忌一郎(もだしきいちろう)の依頼で調査を始めた特高警察の警部補が遭遇する奇怪な出来事・・・。
    黙が追い続けたドッペルゲンガーとは?昭和維新の影に潜む恐るべき陰謀とは?
    <巻末あらすじより>

    初めての作家さんです。
    二・二六事件についての部分を期待して手にとったのですが、ちょっと失敗したかも。
    この作品は『ミステリ・オペラ』という作品に続き、昭和史を探偵小説で描く<オペラ三部作>の第二弾だったそうです。
    前作を読んでいないのでキャラを把握するのに手間取ってしまいました。

    「D坂」ならぬ“N坂の殺人事件”、「押絵と旅する男」「猟奇の果」など江戸川乱歩ヘのオマージュでもある作品。
    萩原朔太郎の「猫町」や芥川龍之介、小林多喜二、安倍定なども登場し昭和初期の雰囲気をとてもよく醸し出していましたが、どうも伝奇・幻想味が強すぎて、面白くなってきたと思ったらそこでスピードダウンの繰り返しでした。
    乱歩を読んでいたのはすでに約20年ちかく前。どうも最近はあの雰囲気は苦手のようです。

    ミステリ部分のトリック的にはちょっと拍子抜けでしたが、この殺人事件がどのように昭和維新に絡んでいたのかについては新鮮な驚きでした。
    「猫町」的な違和感の正体も納得!
    歴史部分も先人の文章や残された法廷録などが引用され、満足とはいきませんが欲求をある程度は充たしてくれました。
    「二・二六事件については真相ではなく作者の妄想です」とありましたが、説得力ありました。
    最後までがんばって読んでよかったのですが、やっぱり長かった~!もう少し短くしてもよかったのでは?

  • 二・二六事件に関するもろもろの部分はややこしくて苦労したけれど、その分読み応えはあり。約半分突破すれば、あとはさくさくいけます。密室殺人ありドッペルゲンガーの謎もありと、盛りだくさん。そして随所にあの歴史的有名人が脇役で登場していたりも……。
    へーそうなんだ。あの事件の裏にはこんな真相が隠されていたんだな~……なんてまた信じそうになっちゃった(苦笑)。
    でも乱歩ネタで、当時伏せ字にされていた箇所の解釈なんかには、妙に納得。なるほど、これは今の時代では見当つかないや。

  • ん~。山田正紀にしては、もう少しかな~。

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著者プロフィール

1950年生まれ。74年『神狩り』でデビュー。『地球・精神分析記録』『宝石泥棒』などで星雲賞、『最後の敵』で日本SF大賞、『ミステリ・オペラ』で本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞を受賞。SF、本格ミステリ、時代小説など、多ジャンルで活躍。

「2023年 『山田正紀・超絶ミステリコレクション#7 神曲法廷』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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