繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(下)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091659

感想・レビュー・書評

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  • ・良書。
    ・再生可能エネルギーはちっとも地球に優しくないなど、興味深い主張が多い。
    ・バイオエタノールはものすごく効率が悪い。その為、作物から取れる燃料の量と、作物を育てる為に必要な燃料の量(トラクターなど)がほぼ同じという、まったく意味のない行為。

  • プロローグ アイデアが生殖するときつがう心
    第1章 より良い今日
    第2章 集団的頭脳
    第3章 徳の形成
    第4章 90億人を養う
    第5章 都市の勝利

  • 悲観主義が世界の雰囲気を包んでいる昨今にあって、著者は勇気をもってそれでも未来の世界はすばらしいものになることを多くのデータと証拠事実を集めた上で主張する。

  • 『やわらかな遺伝子』などでは人間と他の動物の類似性を書いた著者だが、今回は反対に違いに取り組んだ。
    「交換」と「専門化」。この二つが人類繁栄のキーワードなのだ。
    昔は良かった、なんてノスタルジーにひたってたってしょうがない。現代が人類史上もっとも幸せな時代ということが信じられない人は本書を読むとよい。

  • 下巻では産業革命以降の歴史と将来予測が語られる。温暖化のような悲観論を語る者はこれまでも絶えずいたが、解決策や代替案は必ず見つかられてきた、という原題の"Rational optimist" の立場が最後まで貫かれている。市場を介することで不合理な個人の行動が集団として合理的な行動になるという考えと、人類がこれまで発揮してきた問題解決能力への信頼のようなものが終始目立つ。・最初はテクノロジーの進歩によって、収入逓増をの時期がある。しばらくして頭打ちになると次のテクノロジーが出てくる、というプロセスが繰り返されてきた。交換、とりわけ知識の交換によってテクノロジーは推進されてきており、現代社会ではネットワークの発達に伴い、加速度的な進歩が続いている。将来的には機械が機械をデザインするようになり、進歩の速度が無限大となる特異点に到達するかもしれない・再生可能エネルギーは化石燃料よりも高くつく。再生可能エネルギーの利用が進んでエネルギー価格が高騰すると、発展途上国はかえって不利益をこうむる。

  • 日本経済の長期にわたる停滞により、悲観的な書物もしくは現実逃
    避のためのエンタメ本が売れている今日。

    やっと、前向きな本に出会うことができました。

    本日の一冊は、フィナンシャル・タイムズ&ゴールドマン・サック
    ス選による「ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2010」の候補作と
    なった、注目の翻訳書。

    ベストセラー『やわらかな遺伝子』の著者であり、リチャード・ド
    ーキンスらと並ぶ科学啓蒙家として有名なマット・リドレーが、10
    万年にわたる人類の歴史を俯瞰し、そこから経済成長のヒントを読
    み説いた、注目の一冊です。

    ※参考:『やわらかな遺伝子』
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314009616/businessbookm-22/ref=nosim

    経済成長が頭打ちになると、決まって「昔は良かった」という主張
    がはびこるものですが、著者は、これらの主張を、さまざまなデー
    タを用いて否定。

    これによると、世界は確実に改善され、豊かになっているのであり、
    それを導いてきたのが、「交換」と「分業」です。

    著者の主張が正しいとしたら、現在の若者の自給自足への動きや閉
    鎖性は、日本のタスマニア化を促進するものであり、社会の成長に
    とって、極めて危険な状態です。

    本書で示された、イノベーションを生み出すためのアイデアは、こ
    れから知的生産で飯を食っていく我々にとって、極めて有用です。

    人類がなぜ発展・成長してきたのか、その理由を俯瞰することで、
    明日への成長のヒントが得られる、そんな知的な一冊。

    知的刺激にあふれる上巻に比べ、下巻はややトーンダウンした感が
    ありますが、この手の冗長さは、翻訳書のお約束。

    <上巻>
    もし文化が、他者から慣習を学習することだけで成り立っていたら、
    たちまち成長が止まってしまう。文化が累積的になるには、アイデ
    アが出会ってつがう必要があった

    人間は交換によって「分業」を発見した。努力と才能を専門家させ、
    互いに利益を得るしくみだ

    若い世代が上の世代の生活を支えられるのは、イノベーションのお
    かげで豊かになっているからだ。誰かがどこかで三〇年返済のロー
    ンを組んでビジネスに投資し、そのビジネスが生み出した機械で購
    入者が時間を節約できれば、未来からもたらされたその資金は、借
    りた本人と購入者の両方を豊かにするので、ローンは子孫に返済で
    きる。これが成長だ

    自分の必要とするサービスを買えるだけの値段で自分の時間を売れ
    なければ貧しく、必要とするサービスだけでなく望むサービスまで
    手に入れる余裕があれば豊かだと言える

    専門家によって知識がしだいに積み重ねられ、そのおかげで私たち
    一人ひとりが生産するものの種類をしだいに減らしながら、しだい
    に多くの種類のものを消費できるようになる。これが人間の歴史の
    中心を成す物語だと、私は言いたい。イノベーションは世界を変え
    るが、それは、イノベーションが労働の分割を進めるのを助け、時
    間の分割を促すからにほかならない

    結びついている人口が多いほど、手本となる人物の技能は高く、生
    産的なまちがいが起きる確率も高まる。逆に、結びついている人口
    が少ないほど、技能は継承されるうちに着実に衰えていく

    個々のタスマニア島民の脳には、どこにも悪いところはなかった。
    問題は、彼らの集団的頭脳にあったのだ。孤立(自給自足)が彼ら
    のテクノロジーの縮小を引き起こした

    <下巻>
    人間には交換と専門化の習慣があるため、古き良き時代のマルサス
    的人口抑制がじつは人間には当てはまらないことを示唆している。
    つまり、食糧供給量に対して人数が多すぎるとき、人間は飢餓と疫
    病で死ぬのではなく、専門化を強めることによって利用できる資源
    で生存できる人の数を増やすことができる

    人口を減らす政策として抜群に良いのは、女性教育の奨励だろう

    ハイエクが論じたように、知識は社会に分散されており、それは各
    人にそれぞれの視点というものがあるからなのだ。知識はけっして
    一つの場所に集中させることはできない。それは集団的であり、個
    別には存在できないからだ

    企業が成長していく上でもっとも危険な瞬間は成功を収めたときだ、
    なぜならそのときイノベーションを忘れてしまうからだ

    二一世紀にはカタラクシー──交換と専門化によって自発的に起き
    る秩序を指すハイエクの造語──が拡大し続けると予測する。知性
    はより集団的となり、イノベーションと秩序はよりボトムアップに
    なり、仕事はより専門化し、余暇がより多様化する

    <上巻>
    プロローグ アイデアが生殖(セックス)するとき
    つがう心
    第1章 より良い今日──前例なき現在
    第2章 集団的頭脳──二〇万年前以降の交換と専門化
    第3章 徳の形成──五万年前以降の物々交換と信頼と規則
    第4章 九〇億人を養う──一万年前からの農耕
    第5章 都市の勝利──五〇〇〇年前からの交易
    <下巻>
    第5章 都市の勝利──五〇〇〇年前からの交易(承前)
    第6章 マルサスの罠を逃れる──一二〇〇年以降の人口
    第7章 奴隷の解放──一七〇〇年以降のエネルギー
    第8章 発明の発明──一八〇〇年以降の収穫逓増
    第9章 転換期──一九〇〇年以降の悲観主義
    第10章 現代の二大悲観主義──二〇一〇年以降のアフリカと気候
    第11章 カタラクシー──二一〇〇年に関する合理的な楽観主義
    謝 辞
    訳者あとがき
    原 注

    ハイエク『法・立法・自由』第10章「市場秩序またはカタラクシー」の要約である。

    但し要約にしては長い。

    ちなみに「カタラクシー」とは、

    市場秩序が諸目的の共通のハイアラーキーをもたないことを強調するために、

    市場秩序を構成する諸経済を叙述する語としてハイエクが採用した語である

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著者プロフィール

世界的に著名な科学・経済啓蒙家。英国貴族院議員(子爵)。元ノーザンロック銀行チェアマン。
事実と論理にもとづいてポジティブな未来を構想する「合理的楽観主義(Rational Optimism)」を提唱し、ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック創業者)らビジネスリーダーの世界観に影響を与えたビジョナリーとして知られる。合理的楽観主義をはじめて提示した著書『繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史』(早川書房)はゲイツ、ザッカーバーグが推薦図書にあげている。グーグルには3度招かれ講演を行なった。
1958年、英国ノーザンバーランド生まれ。オックスフォード大学で動物学の博士号を取得。「エコノミスト」誌の科学記者を経て、英国国際生命センター所長、コールド・スプリング・ハーバー研究所客員教授を歴任。オックスフォード大学モードリン・カレッジ名誉フェロー。
他の著作に『やわらかな遺伝子』『赤の女王』『進化は万能である』などがあり、著作は31カ国語に翻訳。最新刊である本書『人類とイノベーション』は発売直後から米英でベストセラーを記録している。

「2021年 『人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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