ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?

制作 : 友野典男(解説) 
  • 早川書房
4.18
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093387

感想・レビュー・書評

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  • ノーベル経済学賞を受賞した認知心理学、行動経済学の権威の著書です。
    彼の業績をもとに、人の意思決定に関して、まとめられています。人の避けられない、認知的特性、どうしても生じるバイアスを開設しています。彼曰く、そのシステムは、システム1とシステム2に分けれらるとのことです。ヒューリスティックなどは、関連する本を読んでいない人は知らないかもしれません。
    アンカーの部分では、国連加盟国に占めるアフリカ諸国の比率を、ルーレットで決めた(実際は事前に10か65でとまるように設定)数字より大きいかを聞き、その後実際の比率を言ってもらうと、質問と全く無関係の事前の数字10、65の影響を受ける、10を見せれらると平均25%、65を見せられると平均45%と答えるというもので、人間の意思決定の思考がいかにいい加減かを示しています。
    下巻も楽しみに読みたいと思います。

  • 良書。豊富な実例に基づき各種バイアスへの説明があるのはもちろんの事、タレブの著書(ブラック・スワン)を引き合いに出し不確実性などへも言及している。
     他にも様々な著書(例えばルイスのマネーボールなど)に触れながら話をすすめているので、興味が湧いた本があったら読んでみるのも良いかも。(巻末に参考文献が載ってないのが惜しい?)



    以下に興味深かった記述を抜き書き

    第9章 より簡単な質問に答える

    ◆原注にカーネマンとギーゲレンツアーの意見の違いについて記載あり

     ギーゲレンツアーが強調するように、彼の扱うヒューリスティクスと、エイモスと私か研究してきたヒューリスティクスとは異なる。またギーゲレンツァーは、ヒューリスティクスが不可避的に伴うバイアスよりも、ヒューリスティクスの正確さに注目している。

     迅速・簡素ヒューリスティクスの正確性を裏付けるために行われた調査の多くは、統計的なシミュレーションを使ってそれらが現実の生活の場面で通用することを示しているが、そうしたヒューリスティクスの心理学的現実性を示すデータは乏しく、議論の余地がある。

     彼らのアプローチで最も注目すべき発見は、再認ヒューリスティックである。再認ヒューリスティックは、有名な実験で説明されている。
     被験者は2つの都市のうちどちらが大きいかを質問される。すると、片方の都市だけを知っていた被験者は、知っているのだからこちらのほうが大きいだろうと推論する。この再認ヒューリスティックは、被験者が自分の知っている都市は大きいとわかっている場合には、きわめてうまく働く。逆に、自分の知っている都市が小さいとわかっている場合には、当然ながら、知らないほうの都市を大きいと答えることになる。すなわち被験者は理論に反して、再認以外の手がかりも活用することになる。以下を参照されたい。 DanielM. Oppenheimer, “Not So Fast! (and Not So Frugal!):Rethinking the Recognition Heuristic," Cognition 90 (2003):B1-B9.

     彼らの理論の弱点は、私たちが脳について知っていることから判断する限り、ヒューリスティクスが簡素である必要はまったくないことである。

     脳は大量の情報を並行処理できるので、情報を切り捨てなくとも正確で速い判断を下すことは可能である。さらに、チェスの名手に関する初期の研究から判明したように、スキルとは、少ない情報を活用する術を学習していることではない。むしろ逆である。スキルとは、大量の情報を素早く効率的に処理する能力であることが多い。



    第10章 少数の法則

    ◆アメリカの3141の郡で腎臓がんの出現率を調べた所、顕著なパターンが発見された。
    ?出現率が低い郡の大半は、中西部、南部、西武の農村部にあり、人口密度が低い。
     →ガンを余り見かけないのは田舎のキレイな環境のおかげ?
      (大気汚染はなく、水もキレイで、添加物の入っていない新鮮な食品が手に入るなど)
    ?出現率が高い群を調べた所、大半は中西部、南部、西武の農村部にあり、人口密度が低い。
     →ガンを多く見かけるのは、田舎の貧しい環境のせい?
      (質の高い医療を受け難く、高脂肪の食事、酒の飲み過ぎ、タバコの吸いすぎが良くないなど)
    ※鍵となる原因は、田舎のライフスタイルではなく、「単に人口が少ない」こと。
     →人口の少ない群でのガンの出現率は、実際には高くも低くもない。ただある年の標本抽出の偶然により、そう見えるだけ。
     (小さい標本のときには極端なケースが観察されやすい)


    ◆ペンシルバニア州の1662の学校を調べた所、成績上位50校のうち6校が小さかった。(通常の4倍の出現率)
     →小さな学校のほうが、大きな学校に比べて生徒一人ひとりに注意が行き届き、勉学意欲を高められるなど、よい教育を提供でき、従って優秀な生徒を輩出できる?
    ※小さい学校の成績は平均を上回るわけではない、単に「バラつきが大きい」だけ。(成績の最も悪い学校の特徴も、やはり小さい学校)
    →上記の話からの類推として、アジャイル開発が成功している様にみえるのも、小チームだから単に優劣のバラつきが大きく、その上振れしている上澄み(成功しているチーム)だけが目に入るからなのだろうか?



    第19章 わかったつもり

    ◆後知恵バイアス
     後知恵バイアスは、意思決定者の評価に致命的な影響を与える。評価をする側は、決定にいたるまでのプロセスが適切だったかどうかではなく、結果がよかったか悪かったかで決定の質を判断することになるからだ。

     たとえば、リスクの低い外科手術の最中に予想外の事故が起き、患者が死亡したとしよう。すると陪審員は、事後になってから、手術はじつはリスクが高かったのであり、執刀医はそのことを十分知っていたはずだと考えやすい。このような「結果バイアス」が入り込むと、意思決定を適切に評価すること、すなわち決定を下した時点でそれは妥当だったのか、という視点から評価することはほとんど不可能になってしまう。

     後知恵は、医者、ファイナンシャルアドバイザー、三塁コーチ、CEO、ソーシャルワーカー、外交官、政治家など、他人の代わりに決定を下す人々に、とりわけ残酷に作用する。

     私たちは、決定自体はよかったのに実行がまずかった場合でも、意思決定者を非難しがちである。また、すぐれた決定が後から見れば当たり前のように見える場合には、意思決定者をほとんど賞賛しない。ここには明らかに、結果バイアスが存在する。結果が悪いと、ちゃんと前兆があったのになぜ気づかなかったのか、とお客は彼らを責める。その前兆なるものは、事後になって初めて見える代物であることを忘れているのだ。


    ◆後知恵バイアスの悪影響
     標準的な業務手続きに従ってさえいれば後からとやかく言われる心配はない、というわけで、自分の決定が後知恵で詮索されやすいと承知している意思決定者は、お役所的なやり方に走りがちになり、リスクをとることをひどくいやがるようになる。

     医療過誤訴訟がひんぱんに行われるようになるにつれ、医師は多くの面で手続きを変え、検査の回数を増やし、患者を専門医へ回すようになり、さほど役に立ちそうもなくても慣例通りの治療を施すようになった。

     これらは患者に恩恵をもたらすと言う よりは、医師の立場を守るものであって、利益相反の可能性は否めない。こうしたわけだから、説明 責任を増やすことはよい面ばかりとは言い切れない。

  • 人の意思決定の仕組みについて述べられている。人は物事を決断する時2つのシステムを利用する。無意識に直感で即判断するシステム1と複雑なため頭で考える必要があるシステム2である。本書は上巻で、各システムの特徴・統計に従うのは難しい・人間の思考は過去のイメージに左右されがちである。の3点について主に述べられる。本書を読み進めると専門家の人間味あふれる判断に比べ、計算式の絶対的な判断のほうが優れていることがわかると共に、いかに人がハロー効果に従って物事を判断しているのかがわかる。人生は選択・判断の連続である。ゆえに、本書で学んだ判断価値を活かし、生活していきたいと感じた。

  • 了。

  •  

  • ノーベル経済学賞をとった心理学者カーネマンの本。人間の思考を、直観や経験に頼る「システム1」と、熟考や統計的処理を行う「システム2」という2分類法を使って説明し、人々は日常的にシステム1を使って思考をしていることが多く、その際に、ヒューリスティックやバイアスによって誤った解答を見いだすことを説明した。具体的なヒューリスティック、バイアスの例を紹介してくれており、わかりやすい。本の最後では、「ヒューリスティックとバイアス」を回避する方法は残念ながらほぼないと言っており悲観的。

  • 読んでいる途中だが面白い! 心理学に興味が出てきた。人ってそういうものなんだ。

    ノーベル賞受賞のダニエル・カーネマンの本。

  • 意志の強い人にとっても弱い人にとって気になるのは、意志はどうやって決まるのか。その遺志について「システム1」、と「システム2」に分けて著者は迫っていく。1は、著館的、感情的な速い思考」、2は「意識的、論理的な遅い思考」のことを意味する。

     思考とはさみは使いようと言えるが、思考を勘違いして悪い方向に使う人もいればよい方向に使う人もいる。著者も述べているが、企業の経営者や起業家に自信過剰な人が多いそうだ。俺様(私)が一番という大いなる勘違いがあるからこそ新しい事業を始めたり、企業買収を行うための原動力になる。勘違いも使いようによってはよい方向に働くから捨てたものではない。まあ、そういう経営者のもとで働く社員はたまったものではない。オフィス中で、胃薬が手放せないという人であふれかえっていることだろう。

     システム2は著者によると「怠け者のコントローラー」で、考える作業が伴う分スロースターターでエンジンがかかるのが遅い。自分の本能の赴くまま行動したがる古い脳に対抗するには、深呼吸したり、ちょっとアイディアを寝かしてから判断した方がよいということか。

     気を付けた方がいいと思ったのが、「自分の見た者がすべてだ」と思うことだ。それを避けるには、アンテナを高く張り巡らして、いろいろな角度がラ物事を考えて、様々な立場の意見を取り入れる必要があり、エネルギーが必要になる。そうなるとやはり、健康的な生活を営むことの重要性に改めて気づかされる。健全な肉体に健全な思考が宿るというからなあ。

  • 2/17読了。これは良い!

  • 行動経済学の本。こちらは、上下で圧倒されます。システム1(早い思考)とシステム2(遅い思考)で人間は動く。で、しばしば専門家が間違えるのは、システム1だ。バイアスにやられる例がこんなに出てくる本は見たことがない。『ずる』を読んだあとに読むのが正解。

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著者プロフィール

心理学者。プリンストン大学名誉教授。2002年ノーベル経済学賞受賞(心理学的研究から得られた洞察を経済学に統合した功績による)。
1934年、テル・アビブ(現イスラエル)に生まれへ移住。ヘブライ大学で学ぶ。専攻は心理学、副専攻は数学。イスラエルでの兵役を務めたのち、米国へ留学。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(心理学)取得。その後、人間が不確実な状況下で下す判断・意思決定に関する研究を行い、その研究が行動経済学の誕生とノーベル賞受賞につながる。近年は、人間の満足度(幸福度)を測定しその向上をはかるための研究を行なっている。著作多数。より詳しくは本文第2章「自伝」および年譜を参照。

「2011年 『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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