四季彩のサロメまたは背徳の省察

著者 :
  • 早川書房
3.25
  • (11)
  • (25)
  • (56)
  • (10)
  • (5)
本棚登録 : 383
感想 : 45
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095374

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 帯やら冒頭数行読んだ時点で得る先入観と、読んだ後では忍の印象が180度変わった。
    読み始めた直後は何をどうしたらこんな少年に成長するんだろうと思っていたけれど、読み進めていく内に歳相応の若さが見えてきて好感度が上がり、その後は忍の決め台詞を読む度に愛おしくなってくる。
    黒猫シリーズは大人であってもじれったい二人の話だけれど、やはり「四季彩のサロメまたは背徳の省察」は青さの残る高校生の物語。

    彼女は最後に忍を混乱させ翻弄していたけれど、自分だったらあえて「何も言わない」で同じ結果に辿り着く選択をしたい。
    気づかない彼の様子にほくそ笑み独占しながら真実を闇に葬り去りたい。
    M心とS心を同時にくすぐる忍様って凄い。
    それでもどちらか選べと言われたらやっぱりカラス派だけれど…。

  • 扇央高校に通う美男子・華影忍は朗読部の部長である。
    ある日、後輩の「カラス」から「春休みに一目惚れした女子生徒を探してほしい」と頼まれるが、その女子生徒は2月に亡くなったはずの生徒だった。
    はたしてカラスが一目惚れした女子生徒の正体は?
    そしてカラスの恋心は、いつしか忍を深い闇のなかに突き落していく。

    読後感はよくない。また、官能的な描写が目立ち、キャラもぶっ飛んでるので、抵抗のある人にはオススメできない。

  • 借りたもの。
    ワイルド『サロメ』をモティーフに起こる、愛憎劇と殺人事件。
    一見、『サロメ』に準えているようでそうでなく、しかし『サロメ』になってしまう物語だった。
    複製画が飾られている朗読部の部室、紛い物の19世紀のファム・ファタールであった青春が、本物のファム・ファタールに変容する。
    官能的な芸術作品やボルヘス『バベルの図書館』などのモティーフが、投網のように物語の人物と読み手を絡みとる。
    二重人格化したヒロイン――婚約者の〈驟子〉と死んだ妹の〈春架〉、生者と死者の混合は、ワイルドの『サロメ』が、美醜、聖俗、愛憎の対比と共に物語を紡いでいる事を強く意識させる。プロローグとエピローグを除き、四季と幕間三編によって、『7つのヴェールの踊り』に仕立てる等、面白いギミックが成されている。

    ファム・ファタールに翻弄される男たち。
    それに対する女同士の愛憎劇。
    ワイルド『サロメ』で母・エロディアスは娘・サロメを疎んじる事は無かったのだろうか?いや、ワイルドのエロディアスは社会的で現実的な女性だった。

    月の満ち欠けのように変容する『サロメ』の物語は、振り出しに戻されるような曖昧なものになる。円環は満月のようで、更に叢雲がかかってしまったようだった。

    しかし……サロメは自害ではなく他殺であるべきだと思う。サロメに恋慕した者は、その視線が聖人に向いている事を知って自害し、ヘロデは小心者の酔っぱらいでしかないのだから……

    著者が幻想文学や美術史の造詣があることが伺える。
    乳房と臀部へのフェティシズムはエロスの象徴。

  • 黒猫シリーズの作家さん+黒猫シリーズの装画で読んでみたけど、あちらとはだいぶ違ってびっくり。忍先輩豪語するわりには…という感じ。ていうかカラスは彼なんですかい!素敵装丁でした。

  • 登場人物全員共感できない……。黒猫シリーズの耽美さはなくなんか変なエロ。ここまで騙すことって可能?あと登場人物の年齢設定がもう少し上に感じる

  • 03/04/2016 読了。

    図書館から。

    丹地さんの表紙はいいですね!
    カラス君かっこかわええ。

    華影先輩の女たらしぶりがひどい…。
    …とはいえ、痛い目も見てますので、
    女性のが怖いですかね。

  • やっと読了。

    んー。お耽美。

    サロメをベースにしたミステリーで愛憎劇って感じでしょうか。

    女は怖い。愛が絡むと特に。

  • 黒猫シリーズと同じ著者だと思って読んではいけない本。
    解説の時点で、人間としてどうなんだろうと思うような
    キャラクター達しかいない事はわかっていたけれど、
    後味もよくないし、ゲンナリしてしまう。
    間違ってカフェオレに添えられているシナモンスティックを
    齧ってしまった時の様な、スパイスとえぐみを感じた気分。

    口直しに黒猫シリーズを読もう、それが一番。(何)

  • サロメをモチーフとし、魔性の女と引き寄せられるように関わる人々が交錯し、事件にまで発展していく話。伏線も上手く絡み合っていて面白かった。
    しかし『サロメ』感を強調するために官能性を強く押出しているのかも知れないけれど、同じ調子で続くので、少し辟易してしまった。しかも高校生の設定で・・。若さ故の浅知恵を使って入口に立ったばかりを表現したかったとしても、他にも方法があるんじゃないかと思う。
    けれども猥雑さだけにならないのは、文章力ゆえだと思う。話自体は面白かっただけに、もっとフラットな感じで読んでみたかった。

  • 表紙見てBLだと思ってたけれど、全然違った。
    なんか、肩透かしだったなぁ……。

    胸と尻の話しかしてなかった気がする。

    とりあえず、主人公の性癖が我慢できるかどうかで読めるかどうかが決まる気がする。
    いやはや無駄に物語を引っ掻き回してくれたお方です。
    サロメ題材なんだから、ヨカナーンの役目の人はもっと潔癖でいてほしかったなぁ……。

全45件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1979年、静岡県浜松市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。日本大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了。ライターとして漫画脚本などを手掛けながら小説の執筆活動を続け、『黒猫の遊歩あるいは美学講義』で第1回アガサ・クリスティー賞を受賞(早川書房刊)。同作は続刊も刊行され、「黒猫シリーズ」として人気を博している。ほか、『名無しの蝶は、まだ酔わない』(角川書店)の「花酔いロジックシリーズ」、『ホテル・モーリス』(講談社)、『偽恋愛小説家』(朝日新聞出版)、『かぜまち美術館の謎便り』(新潮社)などがある。

「2021年 『使徒の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森晶麿の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×