実力も運のうち 能力主義は正義か?

制作 : 本田 由紀 
  • 早川書房
3.84
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100160

感想・レビュー・書評

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  •  何もかもが自分の努力じゃなく運だった。書いてあることには納得がいくがそれを認めていくのはなかなか難しい。状況が改善するには何世代もかかりそうだけれど、常に意識していくことが出来ればと思う。

  • 運の寄与を忘れたが為に,なろう系に出てくるテンプレ悪徳領主みたいなのが沢山生まれたので,わかりやすく運要素強くして驕りをつぶそーぜ.

    宮台真司氏の加速主義に浅くかぶれたので,個人的には日本の場合,私立大学と奨学金増やして大学の価値の濃度下げたほうが現実味あるんじゃね,と思ってみたり


    正確には能力主義ではなく功績主義とのこと.
    本書では主に学歴,稼ぎについてと,それによる身分の二極化について
    以下,能力→功績
    序章:
     導入
    第1章:
     勝者,敗者の現状,歴史的変遷,技術家主義
    第2章:
     功績主義が台頭した理由.キリスト教との関り,
     ”正しい”→利益を得て当然→功績を得るべき
     ”誤り”→苦しんでも仕方ない
    第3章:
     出世する=功績を得る=正しい
     功績を得られる=自分の才能と努力の恩恵
     →自分の才能と努力の尺度=学歴
     →学歴偏重
    第4章:
     学歴という偏見
    第5章:
     学歴偏重という継承される貴族階級
     救済の基準
     稼ぎと社会貢献のずれ
    第6章:
     学歴という選別装置の否定,歪み,破壊法
     運を明示
    第7章:
     能力,功績は運→ならば自分の利益を周りにも富の分配をするはず?
     能力,功績は運→ならば稼ぎが少ない人を見下さないはず
     社会に関わる人を肯定すべし,その装置としての労働
    結論:
     結論他

  • トランプ大統領誕の本質をグローバリズム、能力主義的価値観から起結する労働の承認、リスペクトの問題と説き起こすところから始まっている。
    清掃員が衛生の観点から医療従事者と同様の社会的役割を担っているにもかかわらす、市場的なスキルの価値体系の中で賃金がきまり、それが必ずしも社会的な公正的な重要性とリンクしてないこと。
    セーフティネットや再配分は取り残される人を敗者と位置付ける意味では決して労働の尊厳、承認の回復にはなりえない、寧ろ能力主義的な価値観を補完するものと見ている感じ。市場の能力査定はあくまで需要と供給できまり、それは社会的公正の根拠とはなり得ないというのがサンデルさんの立場。能力を磨くことはもちろん否定してない。が、その由来や報酬を個人の頑張りやに過剰に還元したり、再配分を敗者への施しとして捉えたり、需要と供が労働の価値、承認を左右すること、賃金は個人の能力への市場価値的な報酬、と当たり前のように捉えている方は一度読むべき本。
    大袈裟に言えば、歴史や先祖の歴史の中で自分がたまたま生かされている、その巡り合わせの偶然性に畏怖と敬意を払い、たまたま今ここで求められる才覚に恵まれたものは、その幸運を自覚して精一杯花を咲かせて貢献するべしと、考え方としてはかつての貴族制のノブリスオブリージュをといているようにおもえた。失われた神の恩寵を、科学的な歴史や生物学的な偶然性に代替すること、つまりは、センスオブワンダーの感覚を自分の能力に持つこと。

  • 宿命は変えられないけれど運命は変えられる

    大きなことを考えずできることをしていく

  • アメリカでは、過度な能力主義で勝者と見られるエリートの中にも心を病む人が多くいることを知って驚いた。
    著者のいうように、働くことはお金を稼ぐ手段であるとともに人としての名誉や尊厳の源でもあると思う。
    社会で共に生きる仲間として、人と協調して暮らすことの出来る社会を願う。

  • アメリカにおけるメリトクラシーによる分断の構造がわかりやすく、事実の積み重ねとても丁寧に書かれている。なぜトランプ政権が生まれたのかについて非常にわかりやすく書かれている。負け組として虐げられた人々の心を掴んだのが億万長者のトランプってところがすごい皮肉だ。それを愚かな選択と見下しているうちは分断は解消されない。成功は実力出なく環境下も含めた運のおかげでけんきょになるべきというのは賛同できるが精神論なのでなかなか一般にはなかなか受け入れられないと思う。
    日本でも分断という言葉が流行っているがアメリカと日本では程度がぜんぜん異なっていて、日本分断が進んだ時は、極左、あるいは極右政党が躍進すると思う。

  • 能力主義は本当に能力だけか?
    能力を発揮できる環境は運ではないのか?

    今のアメリカが半分に割れている理由付けの一つとして、トランプさんが当選することになったアメリカの根深い学歴社会の闇の部分。

    努力してきたという自負のある人ほど陥りやすいある意味で傲慢な罠からどうやって抜け出すのか。
    平等とはどうすれば良いのか?など、多岐にわたりつつ、本当に能力主義で良いのかを語る本。
    考え続けるのが大事。

  • 謙虚さと相互理解が大事っていう本。

    マイケル・サンデルの本はおそらく初めて読んだけど、読みやすく面白かった。

    能力主義や機会の均等が真に平等で理想的な社会を作る訳ではない、と。

    あと、労働の承認の場としての尊厳の重要性。




    p. 40 能力主義的なおごりは勝者の次のような傾向を反映している。すなわち、彼らは自らの成功の空気を深く吸い込みすぎ、成功へと至る途中で助けとなってくれた幸運を忘れてしまうのだ。頂点に立つ人びとは、自分は自分の手にしている境遇にふさわしい人間であり、底辺にいる人々もまたその境遇にふさわしいと言う独りよがりの信念を持ちやすい。




    p. 265 コナントが始動させた選別装置を解体したければ、能力による支配体制は、同時に二つの方向で専制をふるうと言う点に留意すべきだ。頂点に登りつめる人の場合、不安をかき立て、疲れ切ってしまうほどの完璧主義に導き、もろい自己評価を能力主義的なおごりによってどうにかごまかすよう仕向ける。置き去りにされた人には、自信を失わせ屈辱さえ感じさせるほどの敗北感を植えつける。
    これら二つの専制には、共通の道徳的根源がある——我々は自分の運命に個人として全責任を負うと言う不変の能力主義的信念だ。成功すれば自分自身の手柄であり、失敗しても自分以外の誰も責められない。
    自己責任というこの厳しい考え方は、やる気を奮い立たせるように思えるものの、連帯と相互義務感覚を芽生えにくくもする。こうした感覚を身に付けていれば、現代の不平等の拡大に立ち向かえるはずなのだ。



    p. 311 課税は、たんに歳入を増やす方法というだけではない。共通善への価値ある貢献として何を重んじるかという社会の判断を表現する方法でもある。

  • 邦題から、およそ内容が推察できるのかな、なんて思っていたが、さすがサンデル教授は違った。
    「全ての人が平等な機会を持ち、才能と能力の許す限り出世できる」。そう言われたら、思わず賛同してしまうが、多大な問題があるのだと。才能が今の社会に合致した偶然ではないのか、努力だけでは如何ともしがたいことがあるのではないか。結果の不平等をどのように考えるのか。考えさせられることが続く。
    また労働は経済だけの問題ではない。承認、評価そして尊厳の対象なのだという指摘にも思わずハッとさせられる。
    本書はアメリカが舞台なだけにアメリカ特有の話が多いが、東大合格者の両親の年収が圧倒的に高いなど、日本でも事情は同じなのだ。

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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