空中庭園

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163214504

感想・レビュー・書評

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  • 人の感情表現がうまい、面白かった
    世の中の半数以上の人が、日常演出しているのではないでしょうか?
    DVDも借りてきた、まだ見てないけど
    内の感情がどう表現されているのか、楽しみ

  • わが家では今、妻と娘たちが角田光代の小説に、はまっている。
    きっかけは妻と次女とのちょっとした雑談から、始まった。
    詳しい経緯は省くが、そこから話が発展して、角田光代の話題になり、妻が娘に「対岸の彼女」を読むことを勧めたのである。
    そして図書館から角田光代の小説をつぎつぎと借りてきては読むということが始まった。
    そのなかの一冊、「空中庭園」を読んだ妻から、「これはぜひ読んでみて」という強いオススメがあったので、読むことにした。

    この小説を映画化した「空中庭園」は、一昨年に観ているが、残念ながらあまり印象には残っていない。
    その原作ということなので、あまり期待はせずに読んでみたが、そのおもしろさに一気に読んでしまった。
    いや、おもしろいというのとは、ちょっと違うかもしれない。
    暗く重いものを心に刻まれて、それでも生きているっていいことだと思わせるような感覚、人間ってなんと愚かなものだろう、しかしまたなんと愛すべきものだろう、といった気持ちにさせられる小説であった。

    物語は郊外の「ダンチ」で暮らすある家族の話。
    「何ごともつつみかくさず」をモットーにしている、一見平和で幸せそうに見える家族。
    だが、それぞれの心のなかには、当然のごとく悩みと秘密をもっている。
    それが、家族それぞれの独白の形で語られていくなかで、次第に心の闇が見えてくるというもの。
    まず娘の視点である「ラブリー・ホーム」、父親の視点「チョロQ」、母親の視点「空中庭園」、母方の祖母の視点「キルト」、そして弟の家庭教師として侵入してくる、父親の愛人の視点である「鍵つきドア」、最後が弟の視点「光の、闇の」という章立てになって物語は展開していく。

    いくら家族といえども「何ごともつつみかくさず」なんてことはありえない。
    そもそもそうした約束事自体が、異様で現実離れしているのだが、それは母親の少女時代の拭い難い記憶が、そんな馬鹿げたモットーを作り出したのである。
    それが理想の家族の形だと母親は信じて疑わない。
    かたくなにそれを守ることで崩れかけた家族を支えようとするが、そうすればするほど形はいびつに歪んでいってしまう。
    そんな「幸せ家族の幻想」を必死に追い求める姿が滑稽でもあり、哀しくもある。
    母親がベランダ庭園にいろんな草花を植えるが、どれもうまく育たない。
    それがこの家族の姿を象徴しているようにも思える。
    理想の庭園を思い描いているが、現実はけっして理想どおりには運ばない。
    当たり前のことなのだが、そうした思い込みにとらわれていると、本当のことが見えてこない。
    ますます空回りするばかりである。
    そんなジレンマのなかで、いったいこの家族はどこへ行くのか。
    大きな不安を抱えつつも、まだ完全には壊れていない、かすかな希望のようなものを残して物語は終わる。
    暗く重い内容ではあるが、けっして暗く重いだけの気持ちにさせないのは、そのせいだろう。

    「対岸の彼女」でも思ったことだが、角田光代の人間を描くうまさには、唸ってしまう。
    そんな角田ワールドの魅力を十二分に味わえる一冊であった。

  • 家族に秘密はなし。
    娘をラブホテルで仕込んだなんて話が食卓の話題になるような家族。
    どんな家族?と思ったけど、やっぱりそんなのウソ。ありえない。
    みんなが秘密を持っている…しかも結構スゴイ。

    人は誰にでも秘密はあると思う。
    家族だからこそ、見せないことでうまくいくなら見せない方がいい。

  • 2009/11/24 読了

    人が考えていることなんて家族にだって分からないもんだ。

  • 映画化もされたみたいだけど、私としてはいまいち。

  • 面白かったー!
    穏やかな家族を演じる、一人一人の物語。
    「チョロQ」が特にお気に入り。

  • 読み終わった後に、少しだけ虚しさを感じた。
    隠し事はしないということを言い続けてきた家族が、それぞれの胸に秘めているちょっとしたこと。
    自分の家が基準になっているからかもしれないけど、隠し事をしないなんて基本的には無理なことだと思う。
    家族とはいえ、他人なんだから。
    家族ってなんだろう。

  • 2009/07/01読了

  • ものすごい不幸な家族の話じゃあない。けれど、なんだかとても複雑な気持ちにさせられました。この人たちは、このまま日常を繰り返してゆくのだろうな、と思うと後味悪い。映画もあるらしいので、今度観てみようかな。

  • 危うい家族たちの物語。でも、この人の小説には必ず愛があるから安心できて好き。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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