ソウル・コレクター

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163286600

作品紹介・あらすじ

科学捜査の天才リンカーン・ライムのいとこアーサーが殺人の罪で逮捕された。自分はやっていない、とアーサーは主張するも、証拠は十分、有罪は確定的に見えた。しかしライムは不審に思う-証拠がそろいすぎている。アーサーは罠にかかったのではないか?そうにらんだライムは、刑事アメリア・サックスらとともに独自の捜査を開始、同様の事件がいくつも発生していることを知る。そう、姿の見えぬ何者かが、証拠を捏造し、己の罪を他人になすりつけ、殺人を繰り返しているのだ。犠牲者を監視し、あやつり、その人生のすべてを奪い、収集する、史上もっとも卑劣な犯罪者。神のごとき強大な力を持つ相手に、ライムと仲間たちはかつてない苦戦を強いられる…。

感想・レビュー・書評

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  • ジェフリーディーヴァーのリンカーンライムシリーズを順番に読んでいる。
    私的には、評価の高い「ウォッチメーカー」より面白かったけどな。
    プライバシーの危機、実際にありそうな話で、ゾッとする。

  • 2009年10月発行のリンカーン・ライムのシリーズ8作目の新作。
    国際的な殺し屋の足跡を追うリンカーンのもとへ、従兄弟が殺人罪で逮捕されたという知らせが。
    同い年のアーサーは、子供の頃は親しかったのがいつしか疎遠になっていた関係。
    こまかい物的証拠が妙に揃いすぎていて、匿名の通報があり、他に確かな証拠はない。
    陥れられたのではと疑うライムが動き出す。
    類似の事件がないかとすばやい推理を働かせ、データを駆使する犯人と追いつ追われつの展開が面白い。
    膨大なデータを集めている会社SSDの存在が現代的。
    窓から撮影されることも畏れて、小さな窓しかないビルの中、厳重な管理下にあるはずだったのだが…?
    すべての情報が誰かに知られている、そしてそれを知りうる専門家がデータを改ざんする側に回ったら…?という恐怖。
    捜査の過程で、情報操作で人生を破壊されて異常に疑心暗鬼になっている元整形外科医も登場。
    常習犯罪者と一緒に収監されているエリート白人というアーサーの立場も怖い。
    前の作品にも出ていた少女パムも高校生になって恋をしているので、どんな相手かとアメリアを心配させます。
    学生時代の恋人とのいきさつや叔父や従兄弟との関係など、これまでほとんどわからなかったライムの育ちもかいま見え、アメリアとの仲もちょっと進展、とファンには楽しめる展開。
    何度も犯人と接近遭遇しかけるアメリアはもう少し用心したらと言いたくなるが、これでないと読むスリルがない?
    お約束のどんでん返しに大立ち回りも適度に。
    あ~面白かった!

  • 初めて読んだ。ジェフリー・デーヴァー。プライバシーが、勝手に書き換えられてしまい、人生が変わってしまう恐怖。2013/6/14にはアメリカで、CIAによる個人情報監視事件があっただけに、怖い!
    緻密な書き込みで、久しぶりに読み応えのある作品だった。

  • ◆アナタの個人情報は全て丸裸なのだとしたら・・・

    例えば、私が

    ・何気に、「安倍総理の日常」などをGoogleで検索して、

    ・爆弾の作り方のwebサイトを偶然に閲覧して、

    ・ドラッグストアで爆弾の原料になるアルコールなどをカードで買って、

    ・消費者金融から多額の借金の返済に困っていたりして、

    ・車での会社と自宅の往復に高速を利用していたりする。

    というような、「日常」があったとしよう。検索エンジンでの検索履歴、閲覧したwebサイト、クレジットカードの利用履歴、金融機関での金銭の出し入れ履歴、借入金、資産額、クルマのナンバー、利用する高速の区間・・・などなど・・。

    私たちの「日常」は常に第三者に「把握されている」と思った方がいいだろう。

    特にアメリカでは、この「個人の行為/日常」などの情報は、常に監視/把握され、犯罪捜査、テロ防止という名の下に、第三者に全て知られていると思った方がいい。


    たとえば、安倍総理を狙った爆弾テロ事件があった場合、上記の「日常の記録」から、何と、私が簡単に割り出され、その「容疑者」にされてしまう。

    それだけはなく、何者かに、あなたの口座が操作され、知らないうちに不動産を購入したことにされ、膨大な借金をさせられる・・・のみならず、怖ろしい事件の首謀者にされてしまう・・・

    特定された個人に属するデジタルデータは、それを特権的に扱える立場の人間からすると、簡単に操作でき、まるで、「神の見えざる手」に導かれるように、翻弄され得る・・・



    この本は、そんな「デジタル時代の個人情報を握られることの底抜けの恐ろしさ」を実感させられる。



    私の、あなたの、「生きてる履歴」は、たぶん、第三者に把握され、記録されている。

    (余談だが、マイナンバー制度は、それを加速することを法が認めるというものでもある。なので、私は絶対に反対の立場ではある。)



    怖いけど、面白い。

    また、ウォッチメイカーの姉妹作でもあり、連作の面白さもある。

    ジェフリーデイーバ・・・・ミステリ好きにはおすすめです!

  • 昨今「ビッグデータ」がIT業界での大きな話題になっているが、2009年の作品にして、その恐ろしさの面を描いている。リンカーン・ライム・シリーズの中でも同時代性という意味では面白い作品。

  •  本シリーズを書くのに当たり作者は作者なりに毎作毎に毛色を変えようと努力している。その気配はわかる。でも毎作、毎作、楽しく読みはするものの、ディズニーランドで一日を楽しく過ごしたといった種類の喜びは覚えるものの、心に響き割ったり、いつまでも残ったりする満足感のようなものは、残念ながらこのシリーズからは得られることがなく、ここのところ食傷しており、惰性で読むことはやめようと思っている、というような感想に終始していた。

     それを読んでか、もしくは『このミス』の投票者のすべてに対してなのか、文春海外小説の担当者が、この本をプレゼントしてくれた。『このミス』の編集経由で住所の問い合わせが来たから、多分後者なのだろう。ぼくがこれほど酷評していることを知らずに送って頂いたのだ。

     プレゼントされたから言うのではないが、この本はこれまでのシリーズの中では随分ましなものだったと思う。ネタがいいのだ。これまでのシリアル・キラーではないのだ。データを書き換えて捜査陣を窮地に陥れたりするIT系犯罪者である。情報が盗まれるとどんな恐怖に叩き込まれるかというシミュレーションをしてくれる小説として面白い、と言ってしまえばシンプルでいいかもしれない。

     そう言えば『イーグル・アイ』といういスピルバーグの映画で、すべてを監視されてコントロールされようとする世界がアクションのネタとして使われていて、それはタイトルの通り鷲の視点、イコール神の視点のようなものなのだが、この作品で登場する犯罪はまさにそいつに近い。万能感に酔い痴れる犯罪者の姿が憎憎しく思えるくらいだが、それ以上に情報がこれほどアウトプットされている人類の今を思うと、身の回りのリスクには限りがないということを改めて思い知らされる。

     作者はジョージ・オーウェルの何もかもが監視されコントロールされた世界を予告するように描いた『1984年』の悪夢を恐怖し嫌悪するゆえにこの小説を書いた、というようなイメージをあとがきなどから持つが、このプレッシャー感は、他のシリアル・キラーなどよりもよほど身近で、リアルで、興味深いものだった。それゆえに、本書はことのほか楽しく読めたのである。

     なお、いつもホワイトボードで繰り返し読まされるリンカーン・ライムの部屋の捜査進捗であるが、実際作者が、小説を書く上で何枚ものホワイトボードに同様の記述をしているという訳者の種明かしが巻末にされていた。これほど凝った小説を書くには、プロットというよりもそうした大スペースを使ってのディテール構成が必要ということであろうか。

     なるほど、ぼくが小説に求める感動などの要素については、ホワイトボードに書いて保存することができないということか。ふうむ。

     もうひとつ。ソウルコレクターとは原題からは離れたものであるのに、日本向けに訳者が相談したところ、作者はこのタイトルを考えたのだそうだ。作家なら原題はオリジナルを使え、くらい拘って欲しいと考えるのは、ぼくだけなのだろうか? 何だか、作品を商品と言い換えられているような気がして、心穏やかではない話だ。

  • ジェフリー・ディーヴァー/リンカーンライムシリーズの8作目とのこと。リンカーンライムシリーズは全部読んでいますが、この作品は他作品と比較してあまりどんでん返しがない作品でした。物語があちこちにいかず本筋が通っていたので読みやすかったです。でも、最後の最後で夜中にデジカメで情報を映して保存→それを手書きで起こすというのはいかがなものかと。もっとかっちょいい方法があるんじゃないですか?と思いました。思い浮かびませんが。。。逆に新鮮味があるのでしょうか。

  • リンカーンライムシリーズ8作目。
    時々無性に読みたくなるシリーズ。
    途中で登場人物の名前がごちゃごちゃになるのは毎度のこと。
    今回のようなことがあったら怖いと思うけど、もしかしたらあるのかも。

  • なんてストーリー
    どれだけ細かいの
    それでいてやめられない
    お見事です

  • すべてを知る男。あらゆる個人の情報を知り、使い、操作し、作り上げ、人を殺し無辜の他人を犯人に仕立て上げる男。対するライム達は、果たしてその犯罪を突き止めることができるのか。そして、この物語はプラスキーの成長譚と言う側面も持つ。
    情報社会の闇、情報の持つ恐ろしさを読者に突きつけるディーヴァーの、緻密で正確無比な筆致に一気読み必至である。

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著者プロフィール

1950年、シカゴ生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。科学捜査の天才リンカーン・ライムのシリーズ(『ボーン・コレクター』他)や“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスのシリーズ(『スリーピング・ドール』他)は全世界でベストセラーになっている。ノンシリーズ長編小説、短編小説など人気作品も多数刊行
『ブラック・スクリーム 下 文春文庫』より

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