中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163759302

感想・レビュー・書評

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  • 『知識ゼロからの キリスト教絵画入門』(幻冬舎 池上英洋著)と同時に2冊を並行して読んだ。
    図書館で次に借りたい方がおらず、年末年始を挟んで1ヶ月間借りることができたので、隅から隅まで熟読した。

    コロナ禍でどこにも出かけられなくなったこの2年間、趣味で西ヨーロッパの歴史(自分の興味のわく地域と年代のみ)を独学しているが、必然的に地理・教会・絵画・世界遺産などについても学ぶことになる。
    すると更には、どうしてもキリスト教や聖書のイロハがわからないとどうにもならなくなってくる。
    この2冊は、そんな私にぴったりの書籍だった。
    (プロテスタントの学校に通っていて毎日礼拝が有り、週1で聖書の授業も有ったが道徳の授業のようなもんで、キリスト教や聖書のイロハなど一切教わったことが無い)

    新型コロナなどという世界中がこんな状況になる以前に、いくつか既に旅行で観てきてしまっていた。
    それと同時に、時間と知識の無さとで、いくつか見逃してきてしまっているとも思われる。
    歴史もキリスト教も全く勉強せずに、知識ゼロの状態で、とてももったいないことをした。
    今となってはそれが本当に悔やまれる。

    コロナ禍でイタリア語の独学もだいぶ頑張ったので、歴史の勉強もしっかり継続していつかまた行けたらいいのだけれど、現実問題なかなか難しいものがある。

  • もはや中野京子さんのおっかけ状態で読んでいる。あらためて記録を見直すとすでに8冊…。しかも、どれも本当に面白い。
    前作『ギリシャ神話』に続いて、待ってました!の旧・新約聖書版。「宗教画を読み解く」本は好きで、数冊読んでいるがやはり読みやすさは中野さんが一番。異教徒の日本人としては「え、なんで?」とひっかかる聖書の矛盾をユーモラスにつっこんでくれる。
    中野さんの比喩のすごさ。ブリューゲルの『バベルの塔』のまがまがしさを人面痘に例えた文章を読んだときはのけぞった。

  • いきなり、「おまえ、ヘソねぇじゃねぇか!」
    ミケランジェロのシステーィナ礼拝堂の「アダムの創造」で、「アダムが土くれから造られたなら臍(ヘソ)はないのではないか」
    これを厳密に実践すれば、どのヌード画―ボッティチェリーのビーナスでもゴヤのマハでも・・・・「おまえ、ヘソねぇじゃねぇか!」とヘソのないカエルの腹のようになってしまう。

    こんな風に冒頭から「えッ!」と驚くような、また「ぷッ」と吹き出してしまいそうな内容が各所に散りばめられてあり、かつまた、我々異邦人に其々の絵の背景にあるキリスト教の教えを解かり易く、かつ面白く解説してくれます。

    ミケランジェロから始まり、レオナルド・ダ・ビンチ、カラバッジョ、ルーベンス、レンブラント、ティツィアーノ・・・等々と続き、最後にまた、ミケランジェロの「最後の審判」で終わる。(ラファエロは何故か取り上げていない?)

    私は「最後の審判」での筋骨隆々なマッチョな力強いキリストが、長い間謎でした。
    これまで聞いてきた説明では、ミケランジェロは肉体崇拝者だから・・・マッチョなどと・・・???
    著者の説明によると、カール5世の「ローマ略奪」や「ルターの宗教改革」の後、カトリック側の危機感は相当なものがあり、その危機感の裏返しとして「異端は許さぬ」という強い決意があったそうです。
    その要請を受けて、これまでの「最後の審判」とは全く違う、怒りのエネルギーに満ち溢れたキリストが誕生したわけで、つまり「ローマカトリック以外を信仰すると、地獄に落ちてひどい目に会うぞ!」という見せしめでもあり、絵の中の誰も彼も只ならぬ表情で、「最後の審判」の恐ろしさがこれでもかと強調されています。

    この本を読んで、これまで疑問であった「力強く審判を行うマッチョなキリスト」がすんなり理解できた次第です。

    また後日談があり、「最後の審判」は、ミケランジェロのオリジナルは、全員が全裸でした。最後の審判の時には、死者は神の前で何も隠せない、つまり全裸であるというミケランジェロの考え方で描かれましたが、彼の死後、全裸の可否で侃侃諤諤の論争が起こり、三度にわたって腰布や衣装が描き加えられたそうです。

    という具合に、異教徒の我々でも、旧・新約聖書を基にした絵画の観賞がより深く、楽しく出来るようになることが請け合いの本です。

  • キリスト教の知識がほぼ無い状態で読み始めましたが、とてもわかりやすく、勉強になりました。砕けた文章で、面白くあっという間に読み終わりました。

  • 日本人には馴染みがあまりなく、時に難解な聖書の宗教画。それらに描かれている場面についてや、絵画に秘められたバックグラウンドなどを、異教徒の私たちにも分かりやすいようにユーモアのある文体で解説されています。難しすぎない平易な文章なので、すっと頭に入ってきます。個人的にはユーディトの話やユダの接吻、イエスの磔刑の話がおすすめです。

  •  キリスト教はやっぱり敷居が高いというか、“おわりに”にあるように「キリスト教を、というよりキリスト教を信じる人を、貶めてはならないとの意識がある」ので(キリスト教に限らず、全ての宗教に対してそういう意識がある)、「いいのか、この人こんな事書いちゃって、敬虔な信者に恐ろしい目にあわされないか、世が世なら処刑されるんじゃないか、これをニヤニヤしながら読んでる私も大丈夫なのか」とか、若干ビクビクしながら読んでしまったけど、それも含めてとても面白かった!(笑)

     中野氏の著作は、語り口がとても私に合っていて読みやすく、今までは絵柄が好みでなくてさっぱり興味を持てなかった絵画についても、俄然面白く見られるようになってきたので、毎度とても有難く読んでいる。

  • ギリシャ神話編に続いて、ここまで笑える美術本は中野さんにしか書けないよね。面白かったー。

著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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