朝が来る

著者 :
  • 文藝春秋
3.90
  • (437)
  • (860)
  • (491)
  • (57)
  • (5)
本棚登録 : 5067
感想 : 781
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902739

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 皆さん、高評価の作品のようです。なかなかに、ヘビーな、内容、みたいですが、ラスト近くで、「朝が来る」ようなので、読んでみたいです。

     2020.9.19
     何度か、読み返した。
    結婚、妊娠、子育て。すべてに経験の無い私だが、登場人物の人生の重み、心情などがリアルに感じられた。 第一章で、佐都子が、息子「朝斗」が幼稚園で起こした事件に対してキッパリ我が子を信じる母としての対応を、尊敬した。
    不妊治療、養子縁組をへて、栗原夫妻は、特別養子縁組として朝斗と名付けた赤ちゃんを、授かる。それまでの、佐都子の、そして夫の清和の心の葛藤。
     そして、朝斗の実の母親である、片倉ひかり。
    まだ中学生のうちに、彼氏の巧との赤ちゃんを出産。養子縁組を仲介する団体「ベビーバトン」によって、栗原夫妻に引きわたされるまでの、自分の赤ちゃんに対する思い。美しい空を見上げて、逃げることも、育てることもできない代わりに、おなかの中の子と、すごくきれいな空を見たことを覚えていよう、と涙したひかりに、心がつまされる。その後のひかりの、つらいつらい人生。
    ラストに、そのひかりが、生きていても仕方ない、雷に、打たれてしまいたい。と思った時、ひかりの事情を理解した佐都子がひかりを抱きしめるシーンに、感動した。佐都子が、「一緒に行こう」と声をかける。  どうか、この先、ひかりが幸せになれますように。皆が希望を持って生きていけますように、と思った。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      大丈夫!明日は状況変わって良くなりますヨ!!
      りまのさん
      大丈夫!明日は状況変わって良くなりますヨ!!
      2020/11/01
    • kuma0504さん
      映画観ました。
      役者とリアル人とのコラボが自然で、
      凄い作品だと思いました。
      そうか、最後はひかりはそこまで思っていたんだ。
      映画観ました。
      役者とリアル人とのコラボが自然で、
      凄い作品だと思いました。
      そうか、最後はひかりはそこまで思っていたんだ。
      2020/11/27
    • りまのさん
      kuma0504さん
      私はまだ映画観ていないのですが、 凄い作品だったのですね。 コメントありがとうございます!
      kuma0504さん
      私はまだ映画観ていないのですが、 凄い作品だったのですね。 コメントありがとうございます!
      2020/11/27
  • 幼いながら子を産み、迷い、葛藤しながら生き抜いているひかり。特別養子縁組というかたちで子を託した。その家庭では大事に大事に「広島のお母ちゃん」が存在していた。ずっと親に反発葛藤し生きずらかったけど、「広島のおかあちゃん」は紛れもなく自分だと自信を持ち、自分の足で歩きだした。そこに心打たれました。
    最後、佐都子がひかりを見つけて、なんか唐突だなあと思ったけど、朝斗くんは心ある両親と出会え明るい未来でよかった。ひかりにも明るい未来は来る。

    終始、辛かった。最初の不妊治療のところも。ある場面で、男性側の精子を採取するために、個室が用意されているというところ(よくドラマで見る)。ショックを受ける夫に佐都子は、そのような環境は当然で、具体的な想像力の欠如が、不妊治療における男女の意識の差、といっているが。
    男性にとって婦人科(産婦人科)自体、踏み込みにくい領域だろうから無理もないのに。ともおもった。私が古いのか。
    そして、男性側に原因があったとわかり、その母親が土下座するところ。なにもそこまで…。と思うが(もし女性側に原因あったら責められるのかという感じ)。そこが、結婚イコール子供という意識が強い、少し前の時代背景を映しているように感じた。

    ひかりと巧の場面は、ある部分生々しくて、みてられない感があった。知識ないままに子をはらみ、その先ひかりは苦難の道。広島まで行って。
    見知らぬ土地で短期間過ごすというのは、風景、考え方が変わって、そしてもの寂しくてなんとも言えない哀愁をともなう。世間を知らないひかりが次々と人に痛い目にあって落ちてゆく。今の世でこういうことがあるのかと思った(そう言ってる私は世間知らずなのか)。

    小6の時だったと思う。学校で女子だけ違う教室に呼ばれ、養護の先生から、男女の体の仕組みの違いの話を聞いた。そろそろ生理がという年頃だから。
    ほんの一時間。学校で性の関わる教育を受けたのはそれきりだったように思う。その時間、言葉にはしないが、女子はざわついた。子によって差もあった。きてる子、知っている子(家庭環境の差)の差があったからだ。
    そういう知識は、少女向けの雑誌や友達との会話で情報を得ていた気がする。少しだけだが。
    親とは一切合切そういう話はしたことがない。そういうことは避けて、触れるべきでないという親だったから。時代が時代だったし(そう昔でもないが)。もっと話しやすい環境だったら、もっと気楽だったのになあ。
    この小説をリアル中学生が読んで何を感じるか。
    こちらに登録し、ずっとこの表紙が気になっていた。図書館で目が合い、その翌日、映画化を知り、永作博美さんが番組に出ていた。よい時期に読んで良かった。

  • 辻村深月っていろんな作品をかけるんだなと、まず彼女の才能に脱帽。前回読んだのがアニメがテーマだっただけに振り幅がすごい。

    特別養子縁組に焦点を当てて、母性とは何なのか、血縁とは親子とは何なのかを考えさせられる作品だった。
    養子制度が盛んなアメリカなどとは違って、日本では非常に事例が少ないのだろうと思う。

    でもこの本を読むと育てられない親が育てられる親に子を託すことをもっと柔軟に温かい目でみてあげてもいいんじゃないのだろうかと思わせられる。

    小説の結末はドラマティックすぎて、いやもちろんホロリとしちゃうんだけど、どこかで冷めちゃったかな。とはいえ、やっぱり明るく終わって良かったのかな、タイトル通り。
    一人でも多くの子供が救われますように。
    「朝が来る」、良いタイトル!

    • だいさん
      日本の養子縁組では法律のハードルがめちゃくちゃ高いのではないですか?
      日本の養子縁組では法律のハードルがめちゃくちゃ高いのではないですか?
      2015/09/25
    • vilureefさん
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます(*^_^*)

      そうかもしれませんね、法律のしばりもあるのかもしれません。
      で...
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます(*^_^*)

      そうかもしれませんね、法律のしばりもあるのかもしれません。
      でもこの制度をもっと認知させられれば条件をクリアする人が増えるだろうにとも思います。
      あまり知られていないというのが正直な感想です。
      2015/09/29
  • 望まれない子供を持つ親と、子供を持つ事が、出来ない夫婦が、特別養子縁組と言う制度で、養子縁組する。両者共、悪い人はいない。ただ、望まれない子供を産んだのが、中学生で、世間も、何も知らず、周りの人達に、騙され、落ちて行く。最後に、頼るのは、息子を、養子に出した先だけ。
    だけど、頼る方法も分からず、脅迫めいた方法しか、取れなかった。
    彼女の実の母親でさえ、「失敗した」と、彼女を、見放したけど、子供の、養親である、夫婦は、子供に、「広島のお母ちゃん」と、教え、自分たちは「私たちのお母さん」と呼び、その存在を大切にしていた。
    最終章で、漸く、心のざわつきが取れた感じ。

  • 帯に書かれている『子どもを、返してほしいんです」
    この言葉がかなり強烈で、頭の中で勝手に想像してしまっていた。
    「子どもを返してほしい」生みの親と「自分たちの子どもだ」と言い張る育ての親。
    いつの間にやらそんな想定が勝手に出来上がっていたのだが…
    当たり前だけど、そんな単純なストーリーではなかったのです。

    子どもを望んでも望んでも恵まれない夫婦。
    望まぬ妊娠をしてしまう女性。
    手放さなければ生きていけぬ事情を持つ女性。
    様々な立場の中で、もがき苦しむことは想像できる。
    欧米とは違って、「血」や「家」を重視する風潮がまだまだ強い日本。
    養子を迎えるという選択はものすごくハードルが高い。
    特別養子縁組。
    言葉は聞いたことはあるし、TV番組を見た記憶もある。
    しかし、ここまで深く考えたことはなかった。
    養子縁組は誰のためのものか?
    子どもが欲しくて欲しくてたまらないのに子どもに恵まれない夫婦のためのもの?
    育てられない女性のためのもの?
    否!
    そうではない!
    当たり前のことなのに…
    子どものための制度なのに…
    その考えが希薄になっている自分に愕然としたり…


    辛い不妊治療に耐えても子どもに恵まれなかった栗原夫妻。
    子どもを手放してしまった片倉ひかり。
    6年の歳月を経て、息子を巡って再びかかわりを持つことになった、夫婦とひかり。

    夫婦とひかりが出会うまでの道のり。
    生みの親、育ての親として再会するまでの夫婦とひかりの歩んだ人生。
    栗原夫妻の決意、覚悟。
    とても胸に響いた。

  • 冒頭を読んでママ友とかタワーマンション内格差とかそういうドロドロはちょっとなぁ...と思ったのですが、お話は全く別の方向へ。
    そういうお話だったんですね。

    不妊治療の末、養子を決意する夫婦と中学生で妊娠し我が子を手放さざるを得ない少女。
    双方の葛藤や決意が切なかったりやさしかったり。

    特別養子縁組については、まあ偏見とかいろいろきれいごとで済まされない問題もきっとあるだろうし、「普通」の子を「普通」の家庭で育てている私が是非を判断できる問題ではないけど、不妊治療に苦しむ夫婦が少しでも減って、望まない妊娠をする女性が少しでも減って、子どもを欲しい夫婦が子どもを持てる環境が少しでも整って、生まれてくるどんな命も救われる社会になって欲しいと思います。

    養子をもらった夫婦がとても毅然としていてもはや理想的な家庭を築いているのに対して、実母の少女は家にも居場所がなくなりもがいてもうまくいかない。
    中高生での妊娠なんて人生狂わすだけでロクなことがないってのが真理に近いと思うの。
    こういうことを美化だけは絶対にするべきではないから。

    国が「女性は22歳でいちばん妊娠やすくてそこから徐々に低下して30超えると可能性はぐんと下がる」的なことを少子化対策の一環として高校生に知識として与えるというようなニュースがありましたが、ほんとオジサンの考えることは...
    事実だけどさ、だから?ってなるよね。
    実際22歳で子供産んで生活していくのすごく大変なのに分かってるのだろうか。

    ちょっと話がそれたな。
    うん、結末もこれでいい気がした。
    これは物語だから皆ハッピーエンドなのがいちばんだから。
    私は基本的にハッピーエンド至上主義なので都合良過ぎでも現実ではこうはいかなくてもハッピーな方がいい。

    辻村さんがこういうお話を書くことがすごく自然になった。
    次も楽しみ。

  • 三人の穏やかな日常の幸せを噛みしめる様に暮らす栗原家。
    無言電話が掛かり始めたのは、ここ一ケ月の事だ。
    悩むと言う程の頻度ではないが、気持ちが良いものではない。
    ある朝、電話が鳴った。佐都子はまた…と、思ってた。
    しかし、幽霊の様に生気のない声がした。
    その女は「子供を返してほしいんです」と告げたーー。


    不妊治療との長く辛い闘いの末に、栗原夫婦が悩み苦しんだ末に
    選んだ道は、特別養子縁組だった。
    不妊治療の苦しみや葛藤、朝斗を迎える迄の複雑な心理描写が、
    丁寧に描かれていて、引き込まれました。
    また、物語の序盤佐都子が朝斗を信じる場面がとても印象的でした。
    そして、実母を名乗る若い女と対面での夫婦の姿に、
    人となりがとても良く表れていました。
    朝斗を産んでくれた小さなお母さんは、自分達と朝斗両方にとって
    大事な〝お母さん〟その大事なお母さんを軽んじたり
    貶めることは誰にも許されない…。
    そう思ってる二人が、素晴らしいって感動しました。

    中学生で妊娠し、産まざるをえなくなったひかり。
    すっごく特別な子かと思ったが、違ってた。
    家族への反発心や嫌悪感をもっている。
    でも、思春期には大きさは違っても心の内に抱く子沢山いると思う。
    やはり、辻村さんは思春期の女の子の内面の描き方がとっても上手。
    普通の子が少しずつ、そこからはみ出してしまう様子が
    息苦しい位、とっても丁寧に描かれていました。
    子供を手放した後、元の生活に戻るんだけど、
    彼女はある意味凄く正直で、真っ直ぐなんだって思った。
    だから、元の生活に戻れなかった…。
    彼女の母親や叔父の言動の無神経さ・浅はかさに本当に腹が立った。
    ありのままの姿のひかりと、しっかり向き合って欲しかった。
    幼くて、考えが浅くて危うくて…。
    彼女が転落の人生を歩んでゆく姿が何とも切なかった。悲しかった。

    終わりに光が見えてホッとしました。
    朝が来て良かったです。


  • ひとりの少女と、少女が産んだ子どもを養子に迎えた40代の夫婦の物語。
    冒頭から引き込まれ、一日で読み終えた。

    様々な家族を通して、血のつながりってなんだろう?と思った。

    養子縁組という制度に違和感を感じる主人公夫婦の親世代。
    「我々夫婦ももとは他人同士」と腹を括り、育てる決意をする、養子を迎えるある夫婦。
    正しく生きることが普通であると考え、そこから頑なにはみ出せない少女の親。
    そして、自分にはお母さんと産んでくれたお母ちゃんがいる、育ててくれている両親を信頼し、心のどこかでお母ちゃんのことも忘れない6歳の子。

    心が荒んだり洗われたり、忙しい小説だったな。

  • 読み終えて一晩明けて、まだ余韻が残る。
    むしろ、時間が経つほどに込み上げてくるものがある。
    特別養子縁組をして迎えた子の物語だ、と読む前にどこかで聞いていた。構成の巧みさに思わず引き込まれたし、日本ではまだ馴染みの薄いであろう「特別養子縁組」についてとてもリアルに感じられた。
    何よりも心を動かされたのは、子どもが、かけがえのない子どもこそが暗い世界を照らす希望であり、尊いものだという祈りのような、願いのような、なんと言葉にしていいかわからないけれど深い感謝や愛情の念に溢れていたことでした。

    未読の方には構成の巧みさも味わってほしい、と思うと、あまり内容を記載してしまうのもよくないかもしれない。なので詳細を書くことは控えるけれど、私にとっては身近で、気になるキーワードが盛沢山でした。

    「特別養子縁組」というと、別の世界の物語のようにも思うけれど、登場するのは実は、自分たちと大きく違う人たちではない。
    一歩違えば、私もそうなりえた。
    それは、いいとか悪いとかではなく、一歩違った先には違う人生があった、という当たり前のことに過ぎない。
    歩みを進める先には、偶発的な様々な出来事が待ち受けている。その一歩が後々の人生を大きく崩すこともあれば、輝かせることもある。その積み重ねが、私たちの日々なのだと思う。

    「特別養子縁組」というものについて大事なことを1つ書くとすれば、それは子どもがほしい親が子どもを探すためのものでなく、子どもが親を探すためのもの。つまりは子どもの福祉のため、という点です。
    私は仕事柄、特別養子縁組で子を迎え入れた人も、子を託した人も、またそこを繋ぐ機関である民間、行政の人たちも知っている。民間など特にお金が介在すると知った人から「人身売買じゃないか」なんて言われてぎょっとしたりもしたけれど、特別養子縁組を通して救われた人がたくさんいることは揺るぎない事実なのです。

    望んでも子ができない、予定していないのに妊娠してしまった、自分たちではどうにもならない、と思える局面に遭遇したときに、一人で抱えて辛い日々を過ごすのではなく、相談しながら前向きな未来に向けて歩んでいける日々があるといいと思う。
    暗いトンネルのような日々の先にも光がある、ということがどれだけ救いになるか。すべての子どもたちが幸せであるといい、という祈りにも似た想いで胸がいっぱいです。

    • ほくほくあーちゃんさん
      とてもキレイな感想で思わずコメントさせていただきました。
      まさしく、「子どもが親を探すため」の制度が特別養子縁組ですね。
      私は不妊治療の中で...
      とてもキレイな感想で思わずコメントさせていただきました。
      まさしく、「子どもが親を探すため」の制度が特別養子縁組ですね。
      私は不妊治療の中で何度もダメで、特別養子縁組も考えました。
      今思えば、子どものことよりも自分のことしか考えてなかったなぁーと思ってます。
      結果、子どもは授かることができましたが、今でも特別養子縁組のことは頭の中にこびりついてます。
      少しでも、子どもたちが幸せに暮らせたら本当にいいですよね!!
      文章になっておらず、すみません( ;´・ω・`)
      2021/08/18
    • yocoさん
      素敵なコメントありがとうございます!
      本書にも書かれていたような里親さんたちが特別養子縁組をした経緯や近況など話された「里親講座」なるもの...
      素敵なコメントありがとうございます!
      本書にも書かれていたような里親さんたちが特別養子縁組をした経緯や近況など話された「里親講座」なるものに参加したことがあるのですが、参加者も里親さんも含めて子どもがほしいけどなかなか授からない…という方が多かったです。
      入口は何にせよ、特別養子縁組をするまでには行政でも民間でもそれがどういうものなのか知る機会はありますし、実際幸せになっている子がたくさんいることを思うと、大事な制度だなぁと思います。
      子どもの家庭体験等のために、週末だけお子さんを預かる週末里親、なんてものもあったりして、私も不妊治療を経て妊娠中でしばらく余裕もなさそうですが、いつか自分にできる何かができたらいいなぁ、なんて思ったりもします。
      私もうまくまとまっておらずですが、フォローを含めてどうもありがとうございました。今後もよろしくお願いします(・w・。
      2021/08/18
  • ひかりさんの人生は読んでいてホント辛かった。
    最後に見つけてくれた時は涙が出た。
    ありのままの、1人の人として受け入れてもらえるということが、どれほど有難くて、貴重なことか、と思う。
    血の繋がりとか関係なく、分かり合える人は分かり合えるし、家族でも、自分の考えを押し付けるだけしか出来ないままの人もいる。
    こうのとりのゆりかごの本を数ヶ月前に読んだので、リアルに読めました。

  • 子どもの頃は生まれたらそこに家族があった。
    大人になった今は自分で結婚、出産、不妊治療、住居、仕事、、、生き方を、自分で選んで、自分で決めていく。
    決断をする人たちの物語だと思った。

  • 苦しい苦しい話だった…

    ママ友トラブルから始まったと思いきや、息子の朝斗は養子で、夫婦の元へ産みの親が脅迫してきたところで朝斗を迎えるに至るまでの話になった。
    35歳になっても子供がいない夫婦のことを女親は無自覚に土足で踏み込み、心配している、あなたのためという印籠を見せて傷つける…
    読んでて苦しかった。
    次は、14歳で朝斗を産み、特別養子縁組に出したひかりの話。
    幼いなりに色々なことを考え、感じているのに、養子縁組の団体以外誰も寄り添わず、傷つける大人たち。子供を所有物のように、思いと逸れると失敗作のような対応をする母親。
    ひかりを心配しているのではなく、世間体を心配している…。そのことを責めて、ぶつかり合えばいいのに…ともどかしく思う。
    家出して、必死に働き、誰も頼れないのに、騙されて勝手に保証人にされ、相談する人がいないから逃げることしかできない…。

    でも、救われたのは朝斗を育てる夫婦がとんでもなく良い夫婦だったこと。朝斗の母は朝斗を信じておおらかに包んでいる。朝斗の父も朝斗を大事に思って、決して妻任せにしない。向き合い、寄り添い合う家族だったこた。
    そして、ひかりがそんな家族に脅迫しに行ったことが良かった。

    途中、あまりに苦しくて読むのやめようかと思ったけど、読み切ってよかった。最後の数ページで救われた。

  • 映画公開前の予習です。里親も特別養子縁組も諸外国から遅れをとる日本。そんな世間に押しつぶされることなくまっすぐに生きる栗原親子。中学生で出産することになったひかりのその後は...。河瀨直美監督がこの作品をどう仕上げたのか、10月23日が待ち遠しい...。

  • 4.3
    泣けました。
    自分の子供は娘ですが、もう一人欲しかったけど一人娘です。なので、
    ついつい重ねて読んでしまいました。
    守りたい親心と理想を求めたくなる親心も両方分かり、逃げたくなるひかりの気持ちも分かり、
    面白かったか?と問われれば微妙ですが、インパクトがありしばらく忘れられない一冊になりそうです。
    衝撃的ではありましたが、感想が上手く言葉にできません。
    一読の価値は大いにあると思います。
    ラストが好きです。

  • ハラハラしながら読んだ。10代には重すぎる現実を抱えて、必死に生きてきたひかりを思うと、涙が出た。彼女の心境はとってもリアルで心が痛かった…
    救いのあるラストのように思えたけど、どうなんだろう。これから先彼女が幸せに生きていけたらいいなと願わずにはいられない。

  • 立場の違う2人の女性の人生の葛藤の中にそれぞれ不妊治療から養子縁組、若年齢妊娠・出産という大きなテーマが盛り込まれており、大作な気がします。また、辻村深月さんの新しい一面を知ることが出来ました


  • 2つの家族の間の特別養子縁組の話。

    子を望む夫婦の子を授かれない苦悩は辛かったけど人としても親としてもできた夫婦
    幼稚園のトラブルは胸がキューっとなってしまった。我が子を信じる。信じるっていうのは正しいか正しくないかだけではなくて、もしかして正しくないかもしれない。でもそれごと受け止めて子や世間と向き合う覚悟。
    もう一つの家族、ひかりが望んでいたものが全てそこにあるんだなと感じた。

    ひかりパートでは、10代では色々なことに反発して大人びた行動していたにもかかわらず、終盤20代になったひかりの幼さ、惨めさに私がショックを受けてしまった。

    どちらの通ってきた道も辛く、そしてお互い別の方向から朝を迎えた。そのまま暗いトンネルに戻らず抜けて行って欲しい。リアルも間違った方向に進むことがあっても、人と人、助け合いながら暗いトンネルから抜けられる希望ある世の中であってほしい。

  • 穏やかに暮らす夫婦と子供一人の家族。日々ささやかな問題は起ころうとも平和といえる日常。そのさなかに掛かってきた一本の電話が、さざ波を立てる…

    という出だしで始まりますが、その電話によってもたらされる動揺や困惑が綴られる物語ではありません。電話を始点として、かかわる二人の女性の過去がそのまま綴られていきます。二人の生き様を丁寧につづった、物語でした。

    「現在」は幸せな家庭を営んでいる妻は、かつて結婚して不自由なく暮らしていたはずが、いつのまにか子供を持たなければいけない、という強迫観念に近いものにおびやかされる日々へと変わっていっていた。そのなかで出会った「特別養子縁組」によって、妻は、夫婦は救われていくことになる、という養子を迎えたほうの女性の物語。
    そしてもう一つが、電話を掛けざるを得なくなる、子供を産んだ実母の物語。中学生の身で身ごもった彼女にいったい何が起こったのか。彼女の視点から描かれるのは、あまりにも幼い自覚と、思春期ならではの周囲への反発、初めて覚えてはまってしまった恋愛の沼。愚かだと一言でいえるかもしれない彼女の行動はけれど、ではどこで引き返せば良かったのか、と問われると、どれもが繋がりあっていて、立ち止まるにはとても難しい大きな流れに彼女はいつしか、乗ってしまっていた。

    そのやるせなさがつらく哀しく、希望がはらはらと剥がれ落ちていくばかりな人生は、あまりにもむごい、と思わされました。

    そうして二人の人生が交錯して迎えた物語の終盤には、かすかな救いがもたらされます。といっても、それはほんとうに淡いものです。けれど、いつしかきっと、彼女にも「朝が来る」ことを祈ってやみません。

    そういう「祈り」を読むほうへもたらせてくれる、美しいラストシーンでした。

  • 子供を産んだけど育てられない母親と、特別養子縁組でようやく子供を授かった母親。両者のサイドから物語はつづられていく。文章は淡々と語られており、分かりやすく、この作者さんは学園物のイメージが強いだけに意外だった。
    ただ、「子供を返してください」のキーワードに自分が勝手に振り回されて、ミリテリーだと思っていたので、終わり方はちょっと微妙・・・

  • 子供を育てられない側と、里親になる側の双方の心情が描かれていました。
    仲介する団体も維持が大変なことなど、学びが多かったことに加え、
    子供を想う人達の様子や、辛い状況に追い込まれていくひかりちゃんの境遇に、胸を打たれました。


  • 映画化されて知った本。産休中なのでテーマにとても興味を持ち手に取りました。

    育ての親の佐都子、生みの親のひかりのパートが半分づつくらいに分かれて綴られています。
    ひかりの人生の方が重たくて、読後は思っていた話とは違ったな??という印象でしたが、全体としてとてもよい作品だと感じました。

    佐都子の現在のパートでは、我が子を信じるという強い意志を持ってトラブルに立ち向かう姿に圧倒されました。
    「お母さん、朝斗を信じる。朝斗は大空くんを押してない」という言葉はなかなか言えるものではないと思いました。
    一方で、そうは思いながらも同じタワーマンションに住む仲良しのいわゆるママ友には完全に朝斗が黒だと思われている状況。自分だったらどうするだろうか、と悩んでしまいました。最終的には大空くんが嘘をついていた、という結果だったため信念を貫いたことが良い結果となりました。が、現実世界でこれほどうまく立ち回れるかと言われると疑問で、子育てと人間関係は難しいとつくづく感じました。
    そして大空くんの嘘が発覚し、大空くんママが謝罪の電話をしてくるシーンも、自分の子がそんなことしたらどうしたら・・と考えてしまうものでした。

    佐都子の過去、不妊治療から朝斗引取までのシーンは読んでいるのが本当に辛かったです。私自身、知人から不妊治療をしているという話をちらほら聞くようになっているので自分のことのように感情移入しながら読んでしまいました。
    夫婦だけでなく、その両親から子どもを期待されているという状況。夫に原因があって、夫の母が凄い勢いで謝罪に来たが、妻に原因があったらどうしただろう・・と考えてしまう場面。
    自分たちの気持ちだけではどうにもうまくいかない部分があるのだなともどかしかったです。

    ひかりパートは、自分の子供には性教育をどのようにするのがいいのだろうと常に考えながら読んでしまいました。

    「最初の生理が来る前でも妊娠してしまうことがある」
    というのは正直言って自分でも知らなかったことでした。
    妊娠が分かってから、親たちが勝手にことを進めてしまい、当事者たちがお互いの気持ちを共有する場を持てなかったことが、残念で仕方なかったです。

    広島の寮でのひかりのきもち、「ここにいる子どもは全部、これから、誕生日を祝ってもらえる家に行けたらいい、と思った。」という部分には痛切な思いを感じました。

    ひかりパートが思ったよりもずっしりした内容でしたが、ラストシーンのおかげで救われた気持ちになりました。ひかりがどうなっていくのか分かりませんが、再び素敵な人生を歩んでいけることを願って止みません。

  • 前半は、タワーマンションに暮らす平穏なママ友とのトラブルから、不妊治療で出口の見えない
    夫婦が特別養子縁組を選択する。「子どもを返してほしいんです…。」という言葉にドキッとした。どんな話につながるのか、ひかりの母が求める子供とは異なるひかりで、妊娠して余計に関係が悪くなる。良くできた姉とも対比していく。安定した普通の子で暮らしていく事がいかに幸せか、また違う環境でもがきながら懸命に生きている人もいることを改めて気付かせてくれる。ここまで、ひかりが転落した人生を送り、朝斗と再会した広島の母ちゃんはどんな風に映っていたのか…最後は救われたと信じたい。

  • 何度も泣いた。感動ではなくて辛くて、泣いた。


    特別養子縁組をとった夫婦。
    引き取られた子ども。
    産んだ母。

    それぞれの人生。

    重い。

  • SL 2022.10.25-2022.10.27
    望んでも子どもが授からない夫婦と、
    望まない妊娠をした女の子。

    幼くて、無知で、世間知らずで、考えなしなひかり。一方栗原夫妻は、養子であることを本人を含め誰にも隠すことなく堂々と子育てし、産みの親への敬意も忘れない完璧とも言える養父母。

    制度があってそれはキチンと機能したのに、だからといって全てが解決され救われるわけではないんだ。ひかりが追い詰められていく過程は、読むのが辛い。こういうことが、現実にあり得ると思うと苦しい。ひかりには手助けすべき大人が周りに必要だったのだと思う。

  • 最後の最後に救われた。
    あの一瞬で涙が・・・。

    「広島の、お母さん」は若さゆえか馬鹿な方、馬鹿な方へ進んでしまい一体どうなるかハラハラした。
    赤ちゃんを引き取った日から、周囲にも本人にも何も隠さず話してきた栗原夫婦の強さと優しさ。
    普通・・・出来ない気がする。

    八方塞がりで何もかも、どうしていいか分からない彼女を探してくれて見つけてくれて、抱きしめてくれて
    手を引いてくれて「ありがとう」って本に向かって言ってしまった。

    「養子」という前提の元で、決して隠さず誤魔化さず家族を築き上げてる栗原夫婦と朝斗。
    そして卑怯な手段で現れた産みの母親を消す事なく、「大事」だと語り続けてくれている夫婦の強さ。

    ネグレクト事件が多く報道されて溜め息ばかりの中、
    とても良い終わり方の一冊に少し救われました。

  • - 物語的には最初のジャブのような位置づけだったけど、子供同士の喧嘩で大人たちが揉めるシーンがじわじわと考えさせられた。自分の息子は「やってない」相手の子供は「やられた」と主張し、向こうの親も強硬姿勢。最終的には自分の子が正しくてほっとなるんだけど、途中の「自分がやったと言ってくれたらどれほど楽だろう」という母の本音や「僕が謝ったほうがいい?」という朝斗から思わず漏れてしまう言葉がリアルなんだろうな、と。自分が親になった時にそれができるんだろうか、後から振り返るとスケールが小さい話なんだろうけど、当人達には一歩ここでの振る舞い間違えると親子の信頼関係変えちゃうような、大きな話でもあるんだろなと思った。
    - こんな幸せな家庭に脅迫してきたこの女が、朝斗の母親なわけない。「もう周りには養子であることは伝えている」「広島のおかあちゃんはこんなことする人じゃない」「あなたは誰なんですか」と理路整然としてる栗原夫妻に安心しながら読むんだけど。いつのまにかその点と点を結んでいくストーリーに引き込まれている。
    - ひかりの思考回路がとても幼稚で、嫉妬とか見栄とかが多い小さな子供のままなんだけど、まさかここまで転落していっちゃうのか、と。予想外の展開で読んでくの辛くなった。最初は読みながらひかりにむかついてしかないんだけど、それでも最終的には感情移入しちゃってるから不思議ですごい。
    - 泣かせてくるシーンが散りばめられてるけど、一番目の前に浮かんだのは、夫婦で不妊治療をしてる時に「もうやめよう。美味しいもの食べて映画でも見て帰ろう」という栗原夫妻の描写と、夏の日に清々しくお腹の子に話しかけながら母として一人で外を歩くひかりの描写。

  • 新年一発目、「朝が来る」読みました。
    NHK朝ドラの「朝が来た」じゃないですよ(^_^;)

    考えさせられる話でした。
    辛いことが多いけどみんなの優しさにあふれた小説だと思います。
    最後、良かった~

  • 夫が無精子症で子供に恵まれない佐都子と、中学生で好きな彼氏の子を出産したひかり。特別養子縁組を通じて知り合う事となる2人の女性の物語。
    子供が出来ない事に対する親世代との認識のギャップ、不妊治療やら顕微受精の精神的ストレス等の中でも、しっかりとした自分の核を持っている佐都子。
    共に教師でどちらかというと固く世間体を気にする両親に反抗心を抱きつつ、妊娠、出産をきっかけに普通の中学生からどんどん堕ちて行ってしまいながらも根っこに持つ健全性から風俗一歩手前ギリギリ踏み止まるひかり。
    いわれのない借金を払う為に、佐都子夫婦から金を取るべく養子である事を世間にバラすと言って脅すというひかりの追い詰められた浅薄さが哀れで、どうなるかと思いきや、救いのある結末で良かった。

  • 辛かった。
    やめたいって言えなくてごめん、というところがすごく、ぐわっときた。
    ひかりの話は、なんて浅はかで幼稚なんだ、、と思いつつも、こうなる可能性って全然、誰にでもあるなって思って怖くなった。
    教育とか、相談できることの大切さを感じた。

  • 母が2人、これには理由がある。みんな幸せになれるといい。

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×