人魚ノ肉

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902852

作品紹介・あらすじ

デビュー作でいきなり直木賞候補、その才能は本物だった!幕末京都を舞台にした奇想の時代小説が書き下ろしで登場 デビュー作『宇喜多の捨て嫁』でいきなり直木賞候補に挙がり、東野圭吾さんが「もっとも面白かった」と高く評価。その後、高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を射止め、いまもっとも注目される時代小説界の麒麟児の第2作目の舞台は幕末の京都。坂本竜馬、芹沢鴨、近藤勇、土方歳三、沖田総司、斉藤一、岡田以蔵……歴史ファンに馴染み深い豪華な顔ぶれが続々と登場するが、しかしその内容は誰も想像だにしない野心作だ。 序章、坂本竜馬と中岡慎太郎は、近江屋の隠れ家で語り始める。かつて少年時代、岡田以蔵と人魚の肉を食べた日のこと。以来、人格の変わった以蔵は人魚の肉と血を秘かにずっと隠し持っていたが、京都で浪士組(新撰組)に追われた際にそれを相手に渡してしまったのだ、と。土佐の須崎に伝わる八百比丘尼の伝説によれば、人魚を食べると不老不死になるという。しかし、実際に人魚ノ肉を食べた者たちは妖(あやかし)に憑かれ、信じられない最期を迎えることに――。血の香りにむせかえるような濃密な書下ろし8編!

感想・レビュー・書評

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  • こんな幕末小説初めて!
    あの竜馬が!近藤局長が!芹沢鴨が!沖田総司が!そして人斬り以蔵が!!彼らがこんな風に狂っていたとは!幕末の日本を動かしていたのは土佐の浜に打ち上げられた人魚の血と肉だったとは。
    人魚の肉=不老不死、というわけじゃなく、妖を友とする呪いに囚われる。そうか。だからあの頃の京の都は魑魅魍魎が跋扈していたわけか。いや、ちがう。人魚の肉によって狂わされたのは、魑魅魍魎という名の人間たちだったのかも。
    トンデモ歴史ファンタジのようでいて実は歴史的裏付けがきっちりとなされているってこともいいね。

  • 歴史上のさまざまな人物が人魚の肉を口にしてしまったら…。

  • 明治維新時に土佐で人魚の肉を食べると不老不死になるとに噂が立ちその肉を食べた土佐人人斬り以蔵、沖田総士をはじめとした新選組メンバーらの運命を結び付けた内容。

  • 時は幕末。妖の世界へ誘われた男達の連作短編集。
    短編に共通して出てくるのは勿論「人魚の肉」。
    人魚の血と肉に魅入られ妖に取り憑かれてしまった男達は、怪異に襲われ自らも妖に変じ異界へと誘われていく…。

    初めはあまりにも血生臭い話に背筋がヒヤリとなったけれど、物語が進むにつれ男同士の絆や生きざまに魅せられた。
    舞台は古都・京都。
    それも新撰組の面々ともなれば、こんな妖しい出来事が次々に起こっても不思議ではない。

    この世とあの世の境界に立つ男達。
    共に戦った仲間達が彼方で待ってくれている。
    喧嘩がしたりねえあいつらも直に此方へ来るはずだ…。
    なんかしんみりとなってしまうのは木下さんだからかも。
    木下さんは戦う男達の生きざまを泥臭く生々しく描くのがとても巧い!

  • 妖しく仄暗い感じで私好みの内容。
    血なまぐさい内容が幕末にピッタリ!!
    怪異ものだけど歴史小説。
    短編8話が人魚の肉を介してリンクしてる。
    子供の頃、坂本竜馬と中岡慎太郎、岡田以蔵は
    浜に打ち上げられた人魚を発見!!
    金色の長い髪でまるで南蛮絵のような人魚。
    死んでるのを確認した以蔵は…!!!Σ(ll||д゚ノ)ノ。
    人魚の肉を食べると不老不死…禁断の肉を食べたら――。
    新撰組の話がやはり面白かったなぁ
    想像以上に血なまぐさい話だったけど新撰組ならなぁ、と思ってしまった。
    怪異が上手い具合に史実にマッチしてる。

  • 幕末志士の人気がある人たちに人魚の肉を食わせたらこんなことになりました。

    坂本龍馬、岡田以蔵、近藤勇、沖田総司、斎藤一、佐野しめのすけなど。
    肉を食べた人により症状は異なるが、あやかしになってしまうという。





    沖田総司の労咳を吸血に置き換えたのはその発想はなかったと思えたし、斎藤一の分裂?分身?もその発想はほんとなかったと思えた。

  • 人魚の肉を食うと、不死となるという伝説。
    そして、幕末の動乱期の登場人物が、その肉を食っていたとしたら.....

    真実は違っていた。
    不死の力を持つのは、人魚の肉ではなく、人魚の血。
    人魚の肉を食うと、人は「妖(あやかし)」となる。
    幕末の土佐、一体の人魚が浜に打ち上げられる。
    それを見つけたのは、3人の子供。
    そして、3人はその人魚の身体から....

    土佐を脱藩し、京に向かったその人は...
    そして、人魚の肉、血もまた京に持ち込まれ、新選組に持ち込まれる。

    幕末新選組の戦いの中に、人魚伝説を織り込み、また、吸血鬼はじめ、様々な怪異伝承と結びつける。
    しかも、決して幕末歴史小説の王道から道を踏み外すことは無い。
    グロである。そもそも、肉を切り取り、血を飲む。
    そして、容赦なく血しぶきが飛び散り、四肢が切り落とされる。
    時には生臭い血の匂いすらする描写もあるが、時には死に向き合う武士の潔さが描かれる。
    そんな、あれもこれも、取り入れた作品なのにもかかわらず、全体を通して歴史小説として読ませる作家の力量は大したものなのだと思う。

  • 何ともドロドロした話であった。「人魚」という、ある意味パターン (= 不死) の決まったキーワードに「幕末」をくっ付けて、それでなお人間の生きざまみたいなものを緻密に描いていて、とても面白かった。
    たくさんの人の因果をキチンと回収する律儀さは、前作同様であった。次回作も読んでみたい。
    たまたまテレビで見た映画「るろうに剣心」と同じ時代であった。この時代に関する自身の知識の無さを痛感するとともに、もし背景を知っていれば違う楽しみ方ができたかもしれないと思うと、ちょっと悔しい。

  • 久しぶりの新選組物で楽しめました。静かな筆致で読み進めやすい。好きなテイスト。

  • 時代ものホラーファンタジー。

    『人魚の肉』を食べたことで、妖に憑りつかれてしまった新選組隊士ら幕末の人物たちの話。

    幕末というある意味、日本全体が狂気の熱に翻弄された時代背景もあり、妖に憑りつかれた狂人の様がリアリティに迫っていて、怖かった、、、。ホラー苦手な私にはちょっと辛い読み物だったかも。
    しかしながら、妖に憑りつかれるのが、坂本龍馬、沖田総司に斎藤一など、錚々たるメンバー。怪奇現象とそれぞれの人物の史実を上手くマッチさせているところは凄いし、興味深く読めた。

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著者プロフィール

1974年奈良県生まれ。2015年デビュー作『宇喜多の捨て嫁』で高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞、19年『天下一の軽口男』で大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で野村胡堂文学賞、20年『まむし三代記』で日本歴史時代作家協会賞作品賞、中山義秀文学賞、’22年『孤剣の涯て』で本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。近著に『応仁悪童伝』がある。

「2023年 『風雲 戦国アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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