琥珀の夏

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784163913803

感想・レビュー・書評

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  • 昔、「ミライの学校」と言われていた 建物のあった土地から、子供の白骨化遺体が見つかった。

    主人公の法子は、三十年程前に三年間
    夏合宿に参加していた。
    「ミライの学校」には、合宿参加ではなく
    親と離れ、そこで生活している生徒も
    いた。 ・・・・親と離しての生活、特殊な思想を持つ学校だった。
    そんな学校に子供を預けるなんて、私は反対だ。確かに、事情があってという方々は別だ。

    法子は白骨化遺体が見つかったと知り、
    それが自分の知る子では、ないようにと
    願う。

    弁護士の法子の元にある夫婦がやって来た。遺体が娘ではないだろうか、調べてほしいと言う。それをきっかけに、昔懐かしい、あの合宿で仲良くなったミカに再会する。

    少女時代の想い出が、少しずつ蘇る。
    友達に恵まれている子と、いつも休み時間にひとりでいる子。
    好きな子同士で斑を作って、と先生に言われて、余ってしまう子。
    子供なのに、無神経な言葉を発する。
    子供だからこそ、無神経な言葉だということに気付かない。
    残念ながら、いつの時代にもなくならない。

    秋になって、琥珀に封じ込められた想い出、琥珀の夏を読んだ。


    2021、11、14 読了

    • アールグレイさん
      ポプラさん
      この本は、何でこんなところへ行ったんだ、と思いながら親子の関係を考えた本でした。最後は、白辻村と思って、いい?
      ポプラさん
      この本は、何でこんなところへ行ったんだ、と思いながら親子の関係を考えた本でした。最後は、白辻村と思って、いい?
      2023/05/06
    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん、
      途中までは真っ黒でしたが、最後は白でしたね。
      でも今後、真っ白になるには、美夏自身が親としてどう振舞うか?にかかって...
      アールグレイさん、
      途中までは真っ黒でしたが、最後は白でしたね。
      でも今後、真っ白になるには、美夏自身が親としてどう振舞うか?にかかっていますね。自分は真っ白と信じています(^^♪
      2023/05/06
    • アールグレイさん
      真っ白でいてあげて下さいね。
      運動会など、旅行も。
      女の子は育てた経験がありませんが。
      真っ白でいてあげて下さいね。
      運動会など、旅行も。
      女の子は育てた経験がありませんが。
      2023/05/06
  • 会社の方に頂いた本。
    どちらかと言うと、私は辻村先生の本はあまり得意ではない(笑)

    物語が、淡々としたただのお話なのではなく、心を抉ってくるからなのかもしれない??
    人物の描写がとても鋭く、そこに描かれている嫌な人物像が、ひょっとすると客観的に見た自分自身なのではないかと錯覚するからなのか?(笑)
    兎も角あまり得意ではない。

    この話も読むのに時間がかかってしまった。
    私が苦手というだけで、毎回感心しているが、学校の中での序列や、口に出しては言えない微妙な感情、子供の気持ちを描かせたら右に出るものは居ないのではないかなぁ?


    幼少期から親元から離され、子供達が暮らしていたカルトと批判されたことのある〈ミライの学校〉から白骨死体が見つかる。
    この学校では、子供達の共同生活と、問答と言われる対話の教育を掲げていた。
    30年前、ミライの学校で何が起こったのか。
    見つかった白骨死体は誰のものなのか?
    過去、夏合宿に参加したことのある法子が立ち上がる。

    • bmakiさん
      ポプラ並木さん

      そうなんですね!?
      五匹の子豚、確かに凄く評価が高い本だったので、ポチりました(笑)

      まだ半分読んでいないので...
      ポプラ並木さん

      そうなんですね!?
      五匹の子豚、確かに凄く評価が高い本だったので、ポチりました(笑)

      まだ半分読んでいないのですが、今のところ私の想像では、親友兄弟のどちらかが犯人かなぁ??と思っています(笑)

      船を使ったのかなぁ??
      でもこれはミスリードかな??
      まんまとミスリードにハマっているのかもしれません(笑)

      こういうことを考えている時がひたすら楽しいです(^^)
      今週は仕事が忙しく、読み切れるかわかりませんが、楽しみたいと思います!(*^^*)

      私も読書を始めた頃、赤川次郎さんとか、宮部みゆきさんから入った気がします。宮部みゆきさんはレベル7だったかなぁ??

      宮部みゆきさんを一通り読んだ後、東野圭吾さんや村上春樹さんを読んでいたような。。。

      確かに最初にレベルの高い本を読んでしまうと、ハードル上がってしまいますよね(^_^;)
      2023/05/08
    • ポプラ並木さん
      bmakiさん、
      アガサクリスティー・ポアロシリーズの感想会では事前予想のログを残しています。5匹の子豚も残していました。
      自分は外れた...
      bmakiさん、
      アガサクリスティー・ポアロシリーズの感想会では事前予想のログを残しています。5匹の子豚も残していました。
      自分は外れたのですが、予想当たるといいですね。
      宮部みゆき・レベル7、これも好きな作品です!火車、クロスファイア、蒲生邸事件がお気に入りですよ!
      2023/05/09
    • bmakiさん
      ポプラ並木さん

      事前予想のログとは、楽しそうですね(笑)
      一人で読んでいると、最初はこの人かな?
      しばらく読み進めると、次はやっぱ...
      ポプラ並木さん

      事前予想のログとは、楽しそうですね(笑)
      一人で読んでいると、最初はこの人かな?
      しばらく読み進めると、次はやっぱりこっちかな?を繰り返して、最後に犯人が分かると、やっぱりこの人か!と自分に都合の良いように解釈してしまったりします(笑)
      しかし事前予想では言い訳できませんね(笑)

      蒲生邸も面白かった記憶あります。
      私のお気に入りは、魔術はささやくと、クロスファイアだったはずです!
      でもほとんど内容を失念しています(-。-;

      あんなに面白い!!!この作家さん天才!!!って思ったのに(笑)
      2023/05/09
  • 以前カルト集団と批判された「ミライの学校」の敷地から、子供の白骨死体が発見された。現在弁護士となった法子だが、小学4年生から6年生の夏休みにこの施設を訪れ1週間合宿をした経験がある…その頃友達となかなか上手くつきあえなかった法子は、この夏合宿でミカとシゲルと出会えたこともあって、合宿期間中はのびのびと過ごすことができていた…もしこの白骨死体が彼女なら…法子が弁護士として真実を暴くストーリー。

    結構な文書量ではあったけけれど、全く気にならないくらいに没頭して読みました!登場人物の心理描写は圧巻です。終盤、ミカの置かれていた状況や、気持ちを思うとせつなくやるせない気持ちになりました…。子供のことを思わない親はいない…その気持ちを巧みに利用した「ミライの学校」だけれど、結果としては子供達のミライは守れなかった…そこには、大人の保身とか建前とか…そんなものにミライを潰されちゃったんでしょうね…。

    大人になって再会できた法子と美夏が友情を取り戻せますように…。そして、子供達がみんなが夢を見続けられる社会であってほしい…そう感じました。

  • やはり辻村さんは人の心を言語化するのがとてもうまいと思いました。これまで読んだ辻村さんの作品の中で本書は衝撃の真実というものがありませんでした。本書の物語が動くきっかけである発見された白骨死体について最後に語られるシーンがありますが、そこで語られるのは衝撃の真実ではなく、ただの真実です。

     本書を読んで私が感じたのは、大人は子供が思っている以上に子供で、子供は大人が思っている以上に大人なんだということです。

     子供ながらに大人の考えをくみ取り頑張って生きてるミカと、大人になった今でも子供の気持ちを捨てきれない美夏は大人になった自分を投影してるようでした。

    以下ネタバレあります。

     私が本書の中で最も胸が熱くなったシーンはいい子であるミカがヒサちゃんに対し感情を100%出した怒りのシーンです。

     子どもの怒りとはこうも純粋なものだと痛感しました。本書は絶対的な悪もなければ絶対的な正義もないでも、全員が自分にとっての正義であり、誰かにとっての悪を持っていると思いました。

     心拍数が上昇したり、涙があふれ出たり、鳥肌が立ったりはしなかったですが、とても考えさせられる1冊になったなと思いました。

  • かがみの孤城を読んだときにも思ったけれど、辻村深月さんは子ども心を巧みに描く。

    繊細なこころ。そして、真面目でおとなしいノリコ。
    私もそちら側の子どもだったので気持ちがすごくわかる。
    人気者の子に仲良くされるうれしさ。
    人の言動に裏があると変に考えて、勝手に落ち込んでしまうところ。
    「なぜだかわからないけれど」、仲良くしてもらえない悲しさ。

    子ども心が描かれている辻村作品は、児童文学に入れてもいいと言っても過言ではない。


    不思議なことに、子どもは同級生の家についてめちゃくちゃ詳しい。
    あの子の親は離婚したとか再婚だとか。転校、進学するときに苗字が変わっただとか。どこぞの議員の娘さん、どこぞの社長や医者の息子さんだとか。教師の家系だとか。親はどこの国出身であの子はハーフだとかクォーターだとか。無職だとか障害者だとか。
    子ども本人は何も言っていないのに一体どうやってああいう噂は広まるんだろう。

    私自身子ども時代、一般的か特殊かでいえば特殊なほうの家庭の子どもだったので、ノリコにもミカにも、ユイの立場にも共感した。
    地方の小学校だったから同級生はみんな私の家に関する情報を「当然のように」知っていた。

    閉鎖的で世間が狭すぎる地方の田舎は、本当に嫌だと思っていた。
    大人にとっては「育てやすい理想の環境」なのかもしれないけれど、子どもにとってはときに地獄のような環境になりうる。生きにくくて、鍛えざるをえない環境。

    都会の小学校はそんなことないんだろうか。あの世間の狭さはどこも同じだろうか。
    「琥珀の夏」はそんな題材がメインの話ではないんだけれど
    子ども時代のあの感情を久しぶりに思い起こさせる作品だった。
    ずっと閉じ込めていた、私にとっての「琥珀」。


    大人たちはかつてみんな子どもだった。
    それは考えてみれば至極当たり前のことだけれど、はっとさせられる。
    目の前で冷静に話す「大人」は、子どもの頃はそんなんでなく、「子ども」のように親や先生を慕い、友達とたわいないことをして遊んでいた記憶があるのだ。
    誰だってそうだ。

    子どもの頃の記憶は子どもの時のままだ。あの頃以来会っていない子はいつまでも子どもの姿のまま頭の中にいる。あの頃好きだった子は好きな子のままだし、苦手だった子は苦手な子のままだ。
    でも現実はそうではない。あの頃の「子どもたち」は確実に大人になっていく。性格や言動も変わっていく。あの時のままではない。
    子どもの姿のままの記憶を、「琥珀」に見立てているのは、確かにと納得した。

    「その子」もまた、ずっと「琥珀」の中に閉じ込められていたんだろう。


    大人になった法子たちの章は、全体的に特に驚くような描写もなく、正直(本が分厚い割には)中身があんまりないように感じてしまった。
    心が持っていかれなかった。

    最終章。「あの子」に対して、「私もあなたと一緒に大人になりたかった」(p533)という気持ちには正直なところ共感できなかった。
    当時子どもだったとはいえ、元々よく思っていなかった子でしょう。「あの子」が死んだ後だからこそそう思えるんだとしか。偽善だとしか。
    …そう思ってしまう私は、もしかしたらまだまだ子どものままなのかもしれない。

  • 集団生活を実施する学校の撤退した跡地から見つかった白骨死体。弁護士の法子は、孫かと気にする夫婦の依頼を受け学校の事務局に向かう。自分も休み期間に何度は生活したその学校に。

    陰で笑われるようなヒリヒリ感が、ずっとするような感じなのに、どんどん読み進めていけるのは、やはりさすが。子供たちの気持ちの動きも、まさにありそうな感じなのがよい。

    学校の集団生活や白骨死体となった子の身元を探す行動などから、透けて見えてくるは、親子の関係で、それは保育園がとれないかもという状態の法子の家族関係にもつながる。集団生活という状況ではなく、普通の生活でも、親とこの関係、向き合う間柄の問題は変わらないと感じさせ、親の立場としては、その面でも考えさせられる。

    その中で、最終章は、親子だけでなく、人と人とが向き合うということの大切さを感じさせてくれる。それは大変なことだけど、やはり痛みを感じても向き合うことで、見えてくるものがあるかと思わせてくれた。

  • カルト集団の思想に魅せられてどっぷりハマってしまう人、それを外から軽蔑の目で見ている人。どちらもすごく丁寧に描かれていて、どちらの気持ちにも共感してしまった。
    『子どもの教育に熱心になるには、三つのものがないといけないんです。金があること、暇があること、熱意があること』
    なるほど、と思った。
    子どものために最良の方法をと思っているだけなのに、気づいた時にはどっぷりと思想にハマり、感覚が麻痺してしまう。信仰心とは行き過ぎると本当に恐ろしい。

  • カルト集団という設定に気味の悪さを覚えた。こんな施設で、こんな大人の中で成長したなんて……。でも子どもはそこで生きることしか知らない、そこがすべて。
    また主人公は友達に誘われるがまま外部生としてその集団の夏合宿に参加。友達と一緒ならばと、どのような団体のイベントなのか知らずに送り出した親も何だかなぁ。日常すぐそこら辺に潜む怪しさ危うさの存在を感じた。

    幼い頃にこのカルト施設で出会った二人のその後を見守ることができたのは良かった。
    事件発覚も絡めて、その過程の描写が見事であった。

    (その他)
    この本をきっかけに、高田かやさんの「カルト村で生まれました。」を読むことに繋がった。このような社会や子どもの存在に、多少理解できたつもりだ。
    また角田光代さんの「ひそやかな花園」も思い出す。設定は違うが、幼い日の曖昧な記憶を、時を経て鮮明にしていく感じ。

    • ポプラ並木さん
      なおなおさん、共読ですね。
      宗教が前面に出てしまうことでの人生の危うさを実感しました。
      親の責任、親の愛情、この両者の関係性が、子どもに影響...
      なおなおさん、共読ですね。
      宗教が前面に出てしまうことでの人生の危うさを実感しました。
      親の責任、親の愛情、この両者の関係性が、子どもに影響を与えるんだろうと思います。
      ラストは光明が見える終わり方でホッとしています。
      2023/05/06
    • なおなおさん
      ポプラ並木さん、こんばんは。共読ですね!
      このような集団の怖さ、子どもへの影響を感じました。
      ポプラ並木さん、こんばんは。共読ですね!
      このような集団の怖さ、子どもへの影響を感じました。
      2023/05/06
  • 〈ミライの学校〉という、幼児から高校生までが所属する団体の施設の跡地から白骨死体が発見される。
    白骨死体の身元が判明し、当時の関係者2人の視点で物語は過去と現在を行き来し、話は進んでいきます。

    かがみの孤城の時も思いましたが、辻村先生は「いじめ」のような人の暗い部分の描写がとても丁寧に深く書かれているなと思います。誰しも物語の登場人物と同じような場面を当事者、または局外者として経験したことがあるのではないでしょうか。

    物語を読み終えた時、タイトルの「琥珀の夏」が、凄く沁みました。

  • 読まされた一冊。

    かつての学び舎から発見された白骨死体を機にあの夏の記憶の扉が開かれていく。

    親、子供、愛情を軸にじっくりと心なるものを読まされた。
    子供のため、あなたのため。大人たちが都合良く、愛情の呪文としてこの言葉を使う裏側で子供たちが抱える、そうじゃない、ただそれを受け入れるしかない苦しみ。

    そんな大人と子供の心のズレが痛いほど突き刺さる。


    終盤の心情描写は圧巻。
    大人となった法子があの時の大人、親の気持ちに自分の気持ちを重ね合わせるところはグッと惹きこまれた。
    とにかく心を揺さぶられたな。

    美しい夏のあの子の記憶の扉、二人の心の扉が重なり友情が溶け合うさまを思う。

    懐かしさと眩しさに包まれた友情は永遠の輝き。

    • まことさん
      くるたんさん♪こんばんは!

      -懐かしさと眩しさに包まれた友情は永遠の輝き
      凄い、しびれました。
      色々な方向から、レビューを書かれている方が...
      くるたんさん♪こんばんは!

      -懐かしさと眩しさに包まれた友情は永遠の輝き
      凄い、しびれました。
      色々な方向から、レビューを書かれている方がいますが、最後のくるたんさんの一文は、私の言いたかったことを、最高の表現で、言ってくれていると思います!
      私は、カルト云々と言うことより、友情の物語として感動しました。
      2021/08/09
    • くるたんさん
      まことさん♪こんばんは♪

      ありがとうございます♡
      あのラストシーン、よかったですよね〜♫手を振る姿に涙と輝きを感じました♫

      私もカルト云...
      まことさん♪こんばんは♪

      ありがとうございます♡
      あのラストシーン、よかったですよね〜♫手を振る姿に涙と輝きを感じました♫

      私もカルト云々、洗脳云々よりもかけがえのない二人の夏、友情に一番グッときました¨̮♡

      2021/08/09
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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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