他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ

  • 文藝春秋
3.63
  • (70)
  • (133)
  • (120)
  • (29)
  • (9)
本棚登録 : 2882
感想 : 189
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913926

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 話題作「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の解説のような位置付けですが、この本だけ読んでも楽しめると思います。他者の靴を履く=自分ではない人の立場を想像することがなぜ重要なのか、考えましょう。

  • エンパシーには、エモーショナルエンパシーと、コグニティブエンパシーがあり、他者と共同していくために必要なのはコグニティブエンパシーであること、先天的な性質であるエモーショナルエンパシーと違って、それは後天的に学び、学習していくことのできる技術であることが、平易な語り口で、様々な切り口から描かれています。

    アナキズム思想については私自身が人に話せるほどにはよくわかっていなかったことも、分かりやすく説明されていました。たくさん文献も紹介されていて、とても勉強になり、紹介されていた本の中から読んでみたい本のリストが増えました。

    私自身、元々エモーショナルエンパシーの方の性質を持って生まれているので、それとアナキズムがどう関係するのか興味が出て手に取った本でした。

    コグニティブエンパシーの方は、他者と関わって生きる誰もが、意識しているかしていないかに関わらず、多かれ少なかれ使っている能力だと思います。それほどまでに他者は遠く、人は一人一人異なっている。毎日小さな、時には大きな???を感じながら、永遠に完全には理解し得ない他者を理解する試みを続け、日々を営んでいく。同時に自分のことも大切しながら。時にはそれは楽しいワクワクするような作業であり、時にはできれば考えたくもないようなウンザリする作業でもあります。でもウンザリするような時にも、他者の靴を履く、ことはやる必要のあることなのだということが、この本では説明されています。

    誰もが自然とやっていることでありながらも、自分の人生を豊かにするためにも、人の集まりである社会が成熟したものになるためにも、こういった本で学び、コグニティブエンパシーの大切さを一人一人が意識化することはとても大切だと思います。ブレイディみかこさん、大切なお仕事されていますね!

  • とても興味深かった。経済の話は難しかったが、自助と自立の違い、感情の読み書き能力、利他的と利己的、エンパシーによる罪悪感(申し訳ないという気持ち?)、感情労働、エンパシーの搾取、などなど、知らなかったことや意識していなかったことがたくさん詰まっていた。

  • 自分の人生をハッピーに送りたいという利己的な欲望が人を利他的にさせる、とかアナーキーとエンパシーについてとか面白いところもある
    ぼくはイエローでホワイトてちょっとブルーが全て百点満点のとんでも本だったので期待値が上がってたのかも
    しかしイエローでホワイトでちょっとブルーはこの人のこの思索と地続きなんだなということは納得できた

  • 背ラベル:141.6-ブ

  • 正直、なかなかに読みにくい。
    エンパシーとシンパシーの違いに始まり、学術的なこと、
    またその説明もまあまあに英語が混じり、入ってこない。
    でも、ちゃんと読んだその先に、ちゃんと見えてくるものがある。
    エンパシーとは「他社の感情や経験などを理解する能力」

    辛抱して読み進め、ようやく第四章「彼女にはエンパシ―がなかった」
    あたりから、面白くなってきた。
    元英国首相、故サッチャーさんのお話から、
    何となく自分の身近なところに話が下りてきた感じ。
    難しい話に今一つ、文字面を追うだけだったのが、なるほどね、
    言いたいのはこういうことなんだろうな・・・と感じたあたり。

    さすがに外から見た日本人というのは、そう見えるのだろうなと
    思うことも多かった。
    迷惑とは負担になることを意味する。
    他者を煩わせたくないから、迷惑にはなりたくない。
    ~日本人妻の談でジャパン・タイムズの記事より。
    「迷惑をかけたくない」というのは日本独自のコンセプトであると。
    一見、他社を慮っているようで、人にも煩わされたくないという心理の
    裏返しであると。
    ・・・まったくのその通り。
    この遮断的な概念がエンパシーの機能をブロックしている。

    「共鳴・共感を意味するシンパシー」は
    感情的、情緒的な動きで、インスタントな反応として現れる。
    「短く、早く」というネットの方向性とマッチしている。
    日本語のテレビ番組に日本語の字幕が付き、
    常に時間や気温、天気予報や番組題名のロゴ、タイトルが表示されるテレビ。
    「要するに待てない!」
    望む望まないに関係なく、すべての情報にさらされている私たち。
    当たり前だと思っていたけど、日本のテレビ画面はBUSYらしい。

    待たずにすぐ何かの情報(=わかりやすい外見)
    を得ることができる、コンセプトは
    自分で考える能力、想像する能力を明らかに奪っている。

    また、マイナスのケースとして書かれていたのは、
    被害者が加害者の靴を履き続けるために取り返しのつかない
    結果になってしまうケース(DV夫に対し、この人も辛いのだから、
    こんなことをさせてしまう自分が悪いと考えたり。)
    エンパシーに長ける人は自己がなくなり、強烈な支配にも
    与しやすいこともあるかもしれない。
    まさに闇落ちしたエンパシーと言え、
    抑圧的な社会をつくるにも使われる可能性もある。
    だからこそ、エンパシーとアナーキーは繋げなくてはならない。

    最終章より、水平方向のビジネス手法は垂直のやり方で
    硬直化している業界や組織に新鮮な活力を与える。
    それぞれに部署が水平に存在し、勝手に回っていくというアナキズムの
    ビジョン=伊藤野枝がミシンに例えた。
    個々の正直な働きと連絡があちらこちらでばらばらに行われ、
    それが集まって全体の完全な働きを作り出している。
    その通りだと思う。
    日本では一人の実権を握りすぎなのかもしれない。
    個々の良い働きが活きていないのかもしれない。
    「人々が組織に対し、自由に問い、自由に取り壊し、作り変えることが
    できる」マインドセットを持ち、
    みなが緑色のブランケットの周りに集まり、話し合い
    「エンパシーという想像力」を持っていまとは違う状況を考案できる
    社会となることを作者同様、多くの人が望んでいる。
    非力ながらも、私自身、かくありたいと思う。
    引用も多く、ブレイディさんは大変な勉強家だなと実感。
    常にいまの日本人への警鐘を鳴らしてほしいと思う。

  • 意見の異なる相手を理解する知的能力「エンパシー」をめぐる思索の旅。“負債道徳”からジェンダーロールまで、現代社会の様々な思い込みを解き放つ。『文學界』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40283889

  • かなり難しい本だった。自分自身を良く生きるためにエンパシー(意見の異なる相手を理解する知的能力)とは何かを深く考えると総括してみた。それを他者の靴を履くと表現し、他者との会話において自分のアイデンティティを証明し、自分の外側(社会)で何が起きてるか知ろうとし。
    以下の最後の一文を備忘として時間をかけて理解していきたい。
    「理解できないことがあっても、どのみちそれを考慮に入れなくてはいけない、ということを受け入れること」

  • 副読本として、少し難しいが考えることが大事なこと。
    別に相手の立場に立って考えた上でそうなんかって思うこともできれば、なおさら無理ってなることもある。
    ただ、その立場(自分とは違う)ということを認識して考えることは大事。

    この方の息子さんの考え方が好きだな。

全189件中 111 - 120件を表示

著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブレイディみかこの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
劉 慈欣
瀬尾 まいこ
カズオ・イシグロ
朝井 リョウ
ソン・ウォンピョ...
辻村 深月
凪良 ゆう
ブレイディみかこ...
寺地 はるな
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×