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- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166416905
感想・レビュー・書評
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やっぱり向田邦子は文句なし。
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向田さんの作品を初めて読んだ。
本当にまっとうな美しい日本語を使う人で、それから群像劇を描くのがうまい。
なによりも人を自然に物語に引き込んで離さないところはさすがテレビドラマの脚本家。なんてことない日常描写に油断してると突然、涙腺が刺激されたりするから電車では読んではいけない。 -
日本人でよかった、と思う瞬間がある。
それは海外からの帰り久しぶりに食べる日本食であったり、
こたつにはいってぬくぬくとみかんの皮を剝いているときであったり、
実に人様々だ。
だが、わたしの場合は向田邦子の作品を読んだときに思うのだ。
日本人でよかった、と。
日本人でなければこの良さを、この作品を根底まで理解することは
できなかっただろうとつくづく思うから。
言わないという美徳。美徳というのがおこがましければ
決して表に出さない奥ゆかしさ。
何も言わずに向かい合って茶の間で酒を酌み交わし、
縁側で並んで煙草を呑む。
それだけで伝わるものがわれわれの間にはあるのだ。
だからこそ、これ以上語るのは野暮かもしれない。
今はここで筆をおこう。この余韻を楽しむためにも。