伝書鳩: もうひとつのIT (文春新書 142)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166601424

感想・レビュー・書評

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  • おもしろかった
    大事なニュースを夕刊に間に合わせたハトが功績を讃え剥製にされててかわいそうだった

  • 鳩に特化した本なので、読後、随分鳩に詳しくなれた気がする。鳩を軸に歴史を眺めてみる。帰巣本能に優れた鳩は、その能力から人間の通信の役割を担う事になった。戦時中の伝達手段だけではなく、新聞社に使われた伝書鳩、実用的な所では、牛の精子の輸送や麻薬取引にまで。そしてドキッとするのが、戦後GHQの目を掻い潜るべく天皇陛下を守る近衛師団が秘密裡に存在し、電波傍受されぬよう伝書鳩を用いたという証言。これは何やら穏やかでは無い、興味深い話とページを捲る。

    ただ、これは結局、禁衛府という実在した組織であり、多くは語り継がれず、今や知る人も少ないが、近衛師団という程、秘密軍隊の性質は無く、天皇の警備隊という雰囲気である。少し残念だが、その後の歴史を見ても幻の軍隊は、戦闘機能を発展させぬまま消えていく。

    悲しいかな伝書鳩の歴史は幕を閉じ、今や、手品師が使うチンドン屋用の出来損ないの鳩か、役割の無い公園にいる土鳩しか見ない。しかし、人間と共に戦時に活躍した鳩たちがいた事を思うと、そんな彼らを見る目も変わるかも知れない。

  • 鳩で通信を送っていたなんて、今の若い人は想像もできないだろうなぁ。黒岩さんがこの本をまとめた頃は、実際に伝書鳩に携わった方達にお話を聞けたギリギリのタイミングだったのではないでしょうか。

  • 【目次】
    1. 忘れられた鳩通信
    2. 鳩通信の発祥
    3. 軍用鳩の活躍ー第一次世界大戦まで
    4. 軍用鳩の活躍ー第二次世界大戦から現代まで
    5. 新聞社・通信社の鳩便
    6. 様々な鳩通信
    7. 通信から鳩レースへ
    8. 鳩の特殊な能力

    【概要】
    鳩通信について、軍事技術として生まれ、民間技術、そして娯楽へと移り変わる歴史を、丹念な取材でたどりつつ述べた本。

    【感想】
    伝書鳩など無線技術が生まれるまでのローテクとばかり思っていた僕には、目新しいエピソードがたくさん。
    第二次世界大戦でも活躍したどころか、新聞のスクープ合戦の一翼を担っていたり、牛の人工授精用精液の運搬に一役買っていたり、なんと1990年代までスイスに伝書鳩部隊がいたなんて!
    どれもこれもとても面白い内容だった。

    一方で、動物愛護の観点や、野生化したドバトによる鳩害などについては少し触れるだけで、あまり説明されていない。

    動物の異能の活用や、動物愛護の実態について、少し調べてみよう。

  • サブタイトルの「もうひとつのIT」というのが引っかかって読み始めてみましたが、もちろん昨今のコンピュータ的なITではなく、生物「鳩」が主役のインフォメーション(ロー)テクノロジー。

    伝書鳩といえば、せいぜい新沼謙治ぐらいしか思いつかなかった私ですが、これを読むと相当歴史深く奥も深い。インターネットのハシリは軍事目的。伝書鳩の発展に関しても然りで、インフォメーションテクノロジーと名の付くものはやはり戦争が重要なファクターとなってんだなぁと思った。鳩といえば「平和の象徴」なんですけどね。
    しっかりと調査され事細かく伝書鳩に関して書かれている分、昔の話題が多いので時代背景やら人物の多さやら難しい単語やら何やらかんやら・・・少々私には難しかった。若干そんなところはサラサラーっと読み流しつつ。
    冒頭で「ローテク」とは言ったものの、生物であるが故にいろいろな研究・実験・訓練が成されてきた様子。ある意味生物学はまだまだ未知の世界。その意味ではハイテクノロジーなのかもしれない。

    結局読了後の感想。「鳩・・・すごいな。」この一言に尽きる。

  • 『シートン動物記』などで知識としては知っていても、なかなか現実感のない伝書鳩。意外に最近まで使われていたようで、本書の副題に「もうひとつのIT」とあるように、確かにひとつの通信手段だった歴史をもつ。最後まで利用していたのは新聞社などの報道機関だが、様々なIT技術に同じく、「民生利用」に至るまでは、戦争がこの技術発展の後押しをしてきた。今となっては「平和の象徴」であるのは皮肉すぎる。
    もっとも、現代の通信技術と決定的に異なるのは、純粋な情報を運ぶのではなく、微小とはいえ物理的なモノを運べることで、緊急時の輸血に利用されたり、冷凍技術が無かった頃には、牛や馬の精液を迅速に運ぶ手段として活躍した時期もある。
    実用的に使役させられて鳩たちは、成績優秀な個体ほど度重なる激務故に短命で、逆に成績の悪い鳩は、セレモニー等で「緩い」仕事だけが与えられたというので、示唆的な話だ。
    その運動能力と帰巣能力は、現代では鳩レースという形で受け継がれている。

  • 伝書鳩には夢がある

  • 感想未記入

  •  切り口がおもしろい。
     好きなものだけを、おいかけている。黒岩さんらしい。そして、おそろしく、ひつこい。こんなすげぇ物書きになると、正直思わなかった。
     惜しいひとを亡くした、とこころから思う。

  • うわー興味ねぇ!伝書鳩。
    あと、伝書鳩にまで使われてしまうITという言葉の脇の甘さが素晴らしい。

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著者プロフィール

1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。ノンフィクション・ライター。図書館へ通い、古書店で発掘した資料から、明治の人物、世相にあらたな光をあてつづけた。
『「食道楽」の人 村井弦斎』でサントリー学芸賞、『編集者 国木田独歩のj時代』で角川財団学芸賞、『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』で読売文学賞を受賞。
他の著書に『音のない記憶』『忘れえぬ声を聴く』『明治のお嬢さま』など。10年間で10冊の著書を刊行した。惜しまれつつ、2010年没。

「2018年 『歴史のかげに美食あり 日本饗宴外交史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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