- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166611409
感想・レビュー・書評
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塩野七生の「日本人へ」の第4段
トランプ登場による、世界の混乱と、彼女自身もこたえようがない難問である「難民」を問う。
国家のリストラである難民については、リストラしない国が成功することを、最終的にのべている。
そして、なぜこうも簡単なことを、学会もマスコミもと指摘しないのだろう。と疑問をあげて、筆をおく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ第4弾。なんだか、一番面白く読んだ気がする。
消費が冷え込むことの恐ろしさ、一神教と多神教、EUについて、レンツィについて、ギリシャ問題、難民問題、消費税について等々。
イギリスのEU離脱や難民問題があって自分の中でも多少EUや政治について興味が湧いているのかもしれない。政教分離はいつの間にか常識と考えていたけど改めてルーツを確認した。確かにイスラム世界は政教分離していない。消費税の在り方なんかはとても良さそう。
「保育園落ちた日本死ね」を知って、も良かった。少し前に全文を読んで、正直読んでみると案外的を射てるんじゃない?と思ってたんだけど塩野さんは日本の衰退の始まりになるかもしれないとしていてハッとした。たしかに言葉ひとつで気分がプラスになることもあるしマイナスになることもある。そして確かに「保育園落ちた日本死ね」は確かにリズムが良い。これはプラスに生かさなければ。
さらに、人間社会の人々を三種類に分ける話もなるほどと思った。一番目は「機会さえ与えれば生産性を発揮できる人たち(一割)」、二番目は「安定を保証されることで生産性を発揮する人々(八割)」、三番目は「経済効率だけを考えればリストラ要員になってしまう人びと(一割)」で、塩野さんは自身が政治家や経済人なら三番目の人たちを養うことに徹すると。それは人権尊重だけではなく、「安定」層の八割に情況の変化によっては背後の崖から急落下かもという不安を感じさせないためであると。確かに一割がリストラされてしまえば「安定」層の人がリストラ候補ということになってしまい生産性が下がってしまう。一割をカットしてさらに八割の人の生産性が下がっては全体としてはとてつもない影響だ。
イギリスが国民投票をやった時に、バカなことをやったなとは思っていたけど、塩野さんも正面から批判していてちょっと仲間意識。
民主政と衆愚政について考えさせられた。政治家には国を舵を任されているということをより認識して国をリードしてもらいたい。胆力が必要。国民も監視する意識が重要だろう。
横浜の学校で起きたという、福島からの避難児童へのいじめについてはずっと日本に住んでいるのに知らなかった。放射線を扱う仕事をしている身として、福島の風評被害については思うところがあるのだけど、本当にこういう話を知ると日本が残念になる。放射線について正しい知識を広めていない専門家の努力不足もあるけど、塩野さんの言うように、みんな自分のことだけじゃなくて想像力を持とうよ。
負けないための「知恵」も考えさせられた。政治が安定していること、失業率が低いこと、今のところにしろ難民問題に悩まないですんでいることが日本は他の先進国に比べてそろっており、負けないで長続きするために重要であると。
また、「自らの持てる力の活用」や「強圧的で弾圧的で警察国家的な恐怖政治は短命で終わる」などは政治のみならず自分の仕事についても当てはめて考えることができた。自由と秩序。負けずに成長していくために参考にしていきたい。
紹介されていた『「ニッポン社会」入門』を読んでみたくなった。今年の夏はそれで乗り越えるかな。
塩野さんの作品(このシリーズ以外)を読みたくなった。たくさんあるけどどれがいいかな。 -
国内の情報にどっぷり浸かって狭まった視野を広げてくれる一冊。
2017年までの時事問題を扱っているが、古さは感じない。やはり賢者は歴史から学ぶのだと痛感!
ぜひ多くの人に読んでほしい。 -
半世紀にわたる西洋史を巡る著作をものにしてきた著者ならではの透徹した視点がいいですね。