人に話したくなる世界史 (文春新書 1165)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611652

作品紹介・あらすじ

ちょっと気になる面白エピソードから、世界史を理解する入口がみつかる!メソポタミア-インダスの貿易ルートがなければ、アレクサンドロス大王の大帝国はなかった?ペルシア戦争は“元寇”だった?コロンブスよりはるか前に“新大陸”に渡っていたのは?大航海時代の始まりはアフリカの金が目当てだった?ヨーロッパ商業がグローバル・スタンダードのなったのはグーテンベルグのおかげ?“航海王子”は船酔いに弱かった?『母をたずねて三千里』のマルコはなぜイタリアからアルゼンチンへ渡ったのか?経済歴史学、情報、ソフトウェアの重視など先端の歴史研究の成果を生かした、教科書には載っていない世界史のツボ。明日、誰かに話したくなること必至!

感想・レビュー・書評

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  • 物流から見た近世ヨーロッパ史。教科書で習ったのとは、かなり違う。目から鱗とはこのことかしらん。物流が歴史を進ませる本流なのかと思わされる。軽い題の印象より内容は深いと思う。

  • 高校の時の世界史を学んだ時には、現在の国が過去にどんな歴史を辿ってきたのか、という視点に縛られてしまい、地域や民族という観点から俯瞰的に歴史を考えることが出来ずに苦戦したのを覚えています。

    本書では、アレスサンドロス大王から母を訪ねて三千里まで、様々なトピックを切り口に、当時の情勢を明快に解説してくれています。

    特に興味深かったのは、確率論のきっかけとなったフェルマーとパスカルの往復書簡についてです。二人はサイコロによるギャンブルをする場合の賞金の分け方について手紙で数学的議論を交わします。

    現在の生命保険や損害保険は、確率・統計学なくして成立しえませんが、その端緒が17世紀の二人のフランス人の手紙のやり取りにある、という事実に大変感銘を受けました。いつの時代も、未来を切り開くのは個人の発想と他人とのアウトプットなのでしょう。

  • 世界史の小ネタを集めた本。世界史というか、大航海時代以降のヨーロッパ中心。
    1つの賞は短めだが概要が良くまとめられており、参考文献も載っているので、これを入口に深めるにはいいかも。
    ヨーロッパからアジアにまたがる、インド洋の商業ネットワークの存在、それを支えていたイスラム商人などは新鮮な情報だった。後のスペイン、ポルトガル、オランダ、そしてイギリスがアジアを支配していったのも、実はそうした下地があってこそ可能だったことが理解出来る。
    イギリスがヘゲモニー(覇権)国家となれた理由なども語られ、非常に興味深かった。

  • 経済や民族の動きから世界史を紐解くと面白い。
    時代順や場所に沿って年表とかをつけながらこの視点で読み解く世界史の本を出してほしい!
    そうすれば世界の歴史をもっと簡単に楽しく紐解けるはず。
    各章の後に載っている参考文献もめちゃくちゃためになりそう。
    入門編としてとても良い本だと思う。

  • 歴史というと、年号を覚えて、普段使わないような難しいことをひたすら覚えて、同じような名前が何度も出て来るのを覚えて......。
    そんな、恐ろしく退屈な暗記科目、と思ってはいないだろうか。
    あるいは、そんなの誰も知らねえよ!と叫びたくなるようなマニアックな問題にさらされ、しかしマニアックな人々はそれを常識とでも言わんばかりに平気で解いて、テストでの屈辱を覚えたりしてはいないだろうか。

    しかし本来歴史とはそういった学問ではないはずだ。
    人の営みというものは面白く学びを得られるもののはず。
    本書はそこに焦点を当てて、少し変わった角度から現代との関わりを感じさせる構成になっている。
    例えば、ヴァイキングとイスラーム商人、織田信長とイエズス会、数学者が作った保険など、ブックガイドもついており、好奇心を刺激する。

    フェルマーが作った保険の基礎、「確率論」。
    それぞれ数学者、保険、確率論と区切ると全然面白くないし、覚えられない。
    でも、自分に引き寄せて「未来を予測する方法」を知ると、その偉大さと、世界と歴史がどうつながっているかわかり、興味がわく。

    本書は高校世界史の知識があれば、さほど難しいものではない。
    ちょっと優秀な中学生であれば、知っていることもあるかもしれない。
    でもそうでない、普通の読者は、教科書や教師を離れて別の視点を得ることで、今までバラバラになっていた知識が統合する面白さを感じられるし、何より歴史、つまり「未来」に向けて学問が目指すものを理解し、定着させることができる。
    学ぶことの面白さを感じさせる良い本だ。

  • 新書ながら世界史のエピソード・うんちくが満載 私としては大いに刺激を受けた
    より深く極めたいテーマは、それぞれの参考図書にあたれば良いと思う
    歴史を生き生きと学ぶことのできる貴重な一冊でした

    1.交易の価値
    侵略・征服というほうが華々しいが、現実には双方がWin-Winとなる交易の意義が大きい
    ただし「アヘンと奴隷の貿易」のように、交易とは言えない場合もある
    ちなみに、奴隷は綿花と、
    1-2.「輸送」を握る者が交易を支配する
    大航海時代のポルトガル・スペイン
    大英帝国
    現在の国家をベースに盛衰を見ると誤る スペイン国王の領地
    イエズス会も布教と交易特に軍事商品鉄砲・大砲 

    2.イスラム・インド・中国の存在感も
    世界史の中で、欧米が主導したのは産業革命以降のここ3百年
    それまでは、他の地域が高い文明・産業を誇っていた
    現代の世界史はそこへ触れることが少ない

    3.グーテンベルグの印刷革命
    聖書を大衆に 宗教改革
    文字を大衆化
    ビジネス文書を標準化
    当時より、欧米は「標準化」と手数料ビジネスモデル作りが巧い

  • 一味違った歴史観でした。

  • 網羅的では全くないけど、エピソードの積み重なって世界史全体になっていくと思うので、面白いとこだけつまみ食い的な本書は面白い取り組みだと思う。

    はじめのほうのエピソードは面白かったかな

  • 日本以外を取り扱っているのが世界史ですが、古代から現代まで、主要国のみに絞っても範囲が広すぎます。どこから手を着けようかと思って、何年も月日が流れていたのが現状です。

    そんな私にとって、玉木氏によるこの本は、自分が面白いと思うから、人に話したくなるというコンセプトで書かれた本であり、この本の編集者によれば居酒屋で気分が良くなった時に話したくなる、というのが設定の様です。

    酔っぱらっている時でも覚えていられるというのは、よほど印象強く残ったものに限られると思います。玉木氏により選ばれた13のテーマは全て、掘り下げたくなるようなものばかりでした。今後の私に良い目標ができたような気分にさせてくれた素晴らしい本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・前9世紀に鉄製戦車と騎兵隊を導入したアッシリアは、前8世紀の終わり頃には、シリア・フェニキア・バビロンを併合、イスラエル王国を滅ぼし、前663年にはエジプトを征服し、史上初めて、メソポタミアからエジプトにかけてのオリエントの世界を統一的に支配した(p26)

    ・前323年、アレキサンドリア大王は早世し、プトレマイオス朝エジプト・セレウコス朝シリア・アンティゴノス朝マケドニアの三国に分裂した(p31)

    ・歴史上、掠奪行為と商行為を明確に区別することは難しい、買い手の方が強い立場にあり、売り手が想定するより低い価格で、半ば強引に買い取ったという場合は、掠奪行為とも商行為ともいえる(p35)

    ・西ローマ帝国が滅んだ後も、古代地中海世界という統一体は続いていて、それを打ち破ったのは、7世紀、、ムハンマドにより誕生したイスラム世界である(p40)

    ・アッバース朝は、イスラム世界に革命的転換をもたらした、それまではアラブ人のための宗教であったが、イスラム教徒であれば平等に扱われた(p44)

    ・ヴァイキングが切り開いた、北海・バルト海の商業ネットワークは、その後、ハンザ同盟に引き継がれる、その後継者がオランダ商人である(p48)

    ・ポルトガル人は初めからアジアを見つけたのではなく、アフリカに行こうとして大航海を始めたと考えるのが妥当である(p53)

    ・ガーナ王国は、金鉱自体ではなく、金を掘る部族との交渉を独占し、金の流通拠点として栄えた、商業力を高めるために中央集権化していった(p55)

    ・第二次ポエニ戦争(前218-201)頃のカルタゴは、砂漠化がまだ進んでおらず、カルタゴ周辺にもアフリカ象が生息できる環境があった(p56)

    ・ポルトガルは1444年に大航海をはじめ、翌年にはヴェルデ岬に到達、直接西アフリカの金交易に参加できた。その結果1452年に、ポルトガル初の金貨が鋳造された(p60)

    ・香辛料の輸送量で、喜望峰ルートが地中海ルートを上回るのは、バスコダガマの時代から100年以上経て、17世紀になってから。この転換は、イタリア経済に大打撃を与えた。インドや東南アジアとつながる異文化交易圏からイタリアが切り離された(p65)

    ・信長の段階で日本は欧州型火器の国産化に成功、硝石を除けば鉄砲生産に必要な物質は自国生産可能であった。江戸時代には硝石も自給自足可能であった。武器商人としてイエズス会の重要性は低下していた(p81)

    ・文字を読み書きできるのは聖職者のみであった、写本のおおくは修道院で作成され、ごく限られた人のなかでしか流通しなかった(p84)

    ・市場が発展するには、多くの商人が比較的容易に参加できるように、広く商業情報が共有されていなくてはならない(p89)

    ・12世紀のハンザ商人は文字が書けず、聖職者が代行していたが、14世紀にはラテン語や低地ドイツ語で文書を書くようになった。イタリアでも俗語であるイタリア語が通用してきた、グーテンベルクの発明した活版印刷技術により、聖職者から商人が力をつけてきた(p91、92)

    ・商売の手引きは、カトリック・プロテスタント・ユダヤ教といった宗教・宗派と関係なく広がっていった、商業においてはマニュアル化の力は宗教を超えた(p95)

    ・教皇子午線を設定したが、これによると大西洋の西側は全てスペインのものになるので、ポルトガルは反対して、1494年この境界線を西側に1500キロほどずらした線で分割することにした、これがトルデシリャス条約、1522年マゼラン一行が世界一周すると一本の線で分割できないことがわかり、サラゴサ条約が結ばれた。モルッカ諸島の東を通過する子午線を境界として、西をポルトガルとした。これによると日本はポルトガル領となる(p103)

    ・イギリス東インド会社がアジアで貿易するとき、現地交渉はポルトガル商人に頼らざるを得なかった、19世紀初頭までペルシア湾からマカオまでの商人の共通語はポルトガル語であった、商業ネットワークを切り開いたスペイン・ポルトガルであり、それを、オランダ・イギリス・フランスが活用した(p107)

    ・カール5世は、神聖ローマ皇帝であるとともに、スペイン王であり、さらにネーデルランドとイタリアを支配していた。フェリペ2世は1556年に父のカール5世が退位したとき、オーストリアを除く全領土を引き継いだ。つまり彼にとっては、スペインは支配地の一つであり、大事なのは帝国繁栄であった、すると銀の流出でスペイン経済が衰退、かわってネーデルランドが反映したというのはおかしい(p109)

    ・中国へのアヘン貿易は、イギリスが運んできたベンガルアヘン(インド北東部産)よりも、ポルトガル人によるマルワアヘン(インド北西部)が多かった(p113)

    ・イギリスは間接税(消費税)を中心にしていた、長期国債を新規発行するたびに、その利子を支払うために関税、消費税、スタンプ税といった間接税を増やしていった、このような税制がイギリスに幸いした(p142)

    ・政府、議会、中央銀行(予算案の対立無し、国債償還は議会が保証)が結びついた資金調達システムこそ、増大する借金にもかかわらず、イギリスが戦争資金の調達に成功し、財政を維持できた秘密であった、これがイギリスを欧州最大の国家に押し上げた(p147、150)

    ・インドの手織り綿生産と異なり、イギリスでは工場制度が発展した、1770-90年に10倍、それから12年間でその10倍になったが、1820年になってもインドの生産量を下回っていた(p161)

    ・イギリスのみが綿生産システムを成功させられたのは、アフリカから新大陸に奴隷を運び、新大陸で綿花を積み、本国で製品化、アジアで販売するまで、自国の船・支配下にある港で輸送し、海上保険まで自国で賄えたこと(p163)

    ・欧州では絶え間なく戦争を繰り広げながら、同時に海外からの大量物産を輸入し続けて経済成長ができた。これが可能だった秘密は、中立国・中立都市にあった。中立国の船を使えば、イギリスの商品をフランスに英仏が戦争をしていても運ぶことが可能であった(p169)

    ・戦争の世紀において、中立都市ハンブルクは一種の安全弁として機能し、商業都市となっていった。アメリカ合衆国も同様(p172、177)

    ・アメリカ合衆国の奴隷解放宣言とは、あくまで奴隷を国内では使用しないことであって、国外で奴隷が生産した商品を輸入しないことではなかった。キューバでは奴隷制は1886年まで続く(p180)

    ・欧州が経済成長し、アジアが停滞した理由の一つとして、欧州諸国は中立都市・国を利用して貿易を継続し、戦争の影響を最小限に食い止めらたことにある。宗教戦争により商人の大移動があり、欧州商人のネットワークは拡大した(p181)

    ・イギリスは工業製品の輸出で利益をあまり出していない、19世紀後半以降、海運業・保険・貿易による利益、サービスからの収入の大きな伸びが顕著である(p202)

    ・イギリスが敷設した電信は、近世の多種多様な国際貿易商人によって利用されたルートをほぼそのまま使った、ここに近世と近代の大きな連続性がある(p211)

    ・資本主義社会では、自分が働くのではなく、働かなくても自動的にお金が入る仕組みを作ったものが豊かになれる、これが国家になったものが、ヘゲモニー国家である。大事なのは他国の足を引っ張って競争に勝つことで儲けるのではなく、他の国も含む世界全体の経済が拡大することが自動的に自分の儲けを増やすことになるというシステムを創ること(p225,226)

    2018年9月9日作成

  • 2018066

    主にヨーロッパの大航海時代のお話、バイキング、保険の発展、イギリスやアメリカのヘゲモニー国家のあり方など。

    母を訪ねて三千里の時代は、ヨーロッパが発展して成熟していくなかで貧困国に投資する方が儲かる時代。だからマルコの母はブエノスアイレスに出稼ぎに行ったというもの。

    ひとの流れとお金の流れはいつの時代も一致していると思いました。

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著者プロフィール

玉木俊明(たまき・としあき)
1964年生まれ。京都産業大学経済学部教授。著書に『近代ヨーロッパの誕生』『海洋帝国興隆史』(講談社選書メチエ)、『金融課の世界史』『ヨーロッパ覇権史』(ちくま新書)などが、訳書にパトリック・オブライエン『帝国主義と工業化 1414~1974』(共訳、ミネルヴァ書房)などがある。

「2022年 『世界をつくった貿易商人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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