性と欲望の中国 (文春新書 1217)

著者 :
  • 文藝春秋
3.17
  • (4)
  • (16)
  • (20)
  • (11)
  • (2)
本棚登録 : 231
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166612178

作品紹介・あらすじ

驚きの現地ルポ!爆買いから「爆セックス」へ14億人民の爛熟(らんじゅく)と頽廃(たいはい) かつて中華人民共和国は「セックス不毛地帯」であった。共産党は売春を撲滅。性愛そのものが「ブルジョア的」とされ、恋愛小説さえ発禁だった。ところが今、改革開放政策による高度経済成長も限界に達し、セックス文化が爛熟を迎えつつある。 微信(WeChat)などSNSを利用した売春や不倫が横行し、エロ系オタク文化やAV発のサブカルチャーも大流行。AIやロボット開発に携わる若き理工系の頭脳が、精巧なラブドール(ダッチワイフ)開発にしのぎを削る。日本に押し寄せる中国人観光客向けに、ソープランド巡りなどを目的とした「日本買春ツアー」さえ売り出されている。 百花繚乱の中国の性事情には、「いびつな人口動態」「拝金主義」、そして「権力闘争」が影を落としている。一人っ子政策によって男女比が均衡せず、「結婚できない男性」が3000万人を超える。そのため、一部の性産業にとって中国市場は「ブルーオーシャン」なのだ。また、工業地帯の周辺には、性産業で手っ取り早くカネを稼ごうと若い女性達が大量に流入し、風俗産業が乱立する「性都」がいくつも生まれた。 一方で、いきなり当局の手入れが入って壊滅したり、有力者の不貞行為が突然暴露されて失脚することも多い。これらの背景には中国共産党内部の権力闘争が密接に絡んでいる。 LGBTへの迫害や生きづらさ、共産党による監視の不気味さなど、深いテーマにも鋭く斬り込む。 まさに「性事」から「政治」を読み解いた作品である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ●中国と言えば安田さん!大学が同じだから何故か親近感を感じてる!
    ●さすが14億の民、そりゃ色々ありますわね。煮えたぎる性の欲望か…ずっと締め付けなイメージがあるけど、習近平台頭までは緩みっぱなしだったなんて意外だね〜
    ●ラブドールの回がやたら細かくて苦笑
    ●未婚で終わる男子が3000万とかやばいやろ…少子高齢化はアジアでどこもだよね〜、そりゃ他に楽しいこと知ったり、あれだけ教育コストかかったら産まんわな
    ●多種多様なエロの形が溢れ出てきてすごい本でした…

  • 中国という大国を“性”という視点から紐解いた本書。
    切った張ったをしている外交のイメージとは別の側面を見られて興味深かった。とても刺激的な一冊。

  • 子作りの法的制限、果てはウイグルに対する強制不妊治療。性に対して国家が介入するのは中国だけではなく、日本でも、肉体の一部を映像上はボカしたり、管理売春は禁じられている。禁じなければ、元来、獣として備える本能的な部分、人間は更にそこに発達した頭脳による複雑な性表現が絡み、秩序が保たれなくなるからだ。法の抜け穴から、複雑な性が放たれる。金のため、欲望のため。

    中国とは、案外、素直な国だ。権力や金には、平伏し、欲望はきちんと商品化される。経済的に均質化された国は、道徳観も均質化されるため、生きるために性を商品化したり、淫猥な権力にコントロールされる事に、嫌悪感をもつ人が多い。しかし、経済的に均質化されていない場合、生きるために、そうした手段を選ぶ事が正当化される。気持ち悪い成金も、その醜い欲望に身体を預ける商売婦も、許容されたリアリティだ。それが中国の価値観だろうか。この点では、日本のもつ道徳こそファンタジーなのかも知れない。

    中国の性に関する、最新事情。安田峰俊の取材はいつもながら、面白い。

  • とっくの昔に読み終わっていたが本棚登録を忘れていたやつ。とても面白い。

  • 経済成長著しい中国、それをエロという視点から見ようとするのは面白い。人間の欲望は抑えられないからだ。しかし、思ったよりも中国は禁欲的であった。というより、エロを抑え込もうとする習近平政権の徹底ぶりは恐るべきものだった。中国では、エロもまた利権を絡めた政権闘争なのだ。果たしてこれからどうなるのか、興味は尽きない。

  • 読破。
    先に読んだ富坂氏の欲望大国と比べると”性”に特化し、過去から現在にかけて中国でどのように同”トピック”が変遷を経てきたかがわかる。その手の”おもちゃ”が、一人っ子政策の傍ら黙認されてきたという背景も興味深い。確かに北京の街を普通に自転車等で走っていると専門店を時々見かけた気がする。個人が特定されることが明白にも関わらず、うっかりチャット等で履歴を残して暴露されてしまうのも中国人らしい・・・。同性愛者の行為が明朝・清朝において法律で禁止されていた一方で、15−17世紀にキリスト教布教活動をしていたポルトガル人が日常的にそのような行為が行われていたであろうことを忌み嫌うべきものとして残しているというのも何だか興味深い。そして文革後は刑罰そのものは軽くなったものの、病気として認識され、2015年までその治療院が存在していたらしい。人々と話す限りでは何となく寛容な感じがするので何だか不思議な感じがする。結局、同性愛者の幸福度は金次第・・となるのはとても中国らしい。。

    P.157
    中国の場合、欧米圏や中東の保守派のように同性愛を宗教的にタブー視する価値観は存在しないが、いっぽうで欧米先進国と比較してポリティカル・コレクトネスに配慮する考えが根付いていない(そもそも人権概念それ自体が弱い)。そのため、同性愛者差別の他にも黒人差別や少数民族(とくにウイグル人)差別など、さまざまな差別発言に対してかなり無自覚な傾向があるのだ。

    P.173
    伝統的な中国の思想では、人間は男親から「骨」を、女親から「肉」を継承し、人間を活かす霊的なエネルギーである「気」は「骨」のみを通じて先祖から伝わってくるとされている。すなわち、男性は子(とくに男児)を残さないと、何千年も昔から伝えられる「気}のバトンを後世に渡すことができず、祖先への「忠}を欠くことになるのである。漢民族には、自分たちを神話時代の帝王である炎帝・黄帝の子孫(炎黄子孫)、もしくは龍の子孫(龍的伝人)であると考える自己認識がある。「気」はこういう祖先たちから延々と続いているとみなされるのだ。

  • 冒頭にあるように、人口が多ければそれだけ欲望も大きなる。極端なところの切り出しではあるだろうけれど、スケールが違う。そのパワーは、AIとの融合やラブドール仙人みたいにプラスの方向に作用することもある。

  • <目次>
    はじめに 真の中国は性から見える
    第1章拝金の性都・東ガンの興亡
    第2章人民解放軍に翻弄された世界最大の売春島
    第3章AIとエロの奇妙な融合
    第4章貴州ラブドール仙人
    第5章LGBTの葛藤と受難
    第6章日本人AV女優ブームの光と影
    おわりに 根源的な営みさえも共産党が支配するのか

    題名ほど刺激的な内容ではない。
    目次通り。

    ただ、中国に出入りしている自分にとっての肌感では、もっと
    違う表現をする。
    この30年で中国人の性に対する考え方、行動は大きく変わっ
    と思う。
    例えば、性交渉は結婚前提であった、または結婚後に行わるものであったが、いまはかなり自由な自己責任のもとにある。
    勿論、誰とでもするわけではなく、各自の倫理観のもとである。
    また、中国人の女性から求めるパターンも多いと思いう。
    以下、実際に会った知人たちの話である。
    中国人女性①
     キスをしたら彼氏、チューならば友人
    中国人女性②
     一緒に泊ったら、エッチなくとも彼氏
    中国人女性③
     彼女いなかったら、したくなったら困るでしょう。
     (するための彼氏、彼女の契約のようなもの)
    中国人女性④
     若い男の子としたいから、bfは何人かいる

  • ふーん。
    という感じだった。

  • 習さんの締め付けですっかり下火と思っていた中国の性産業。前半はすっかり廃れたかつての性産業の記憶。そして、後半は今の性。一人っ子政策の影響でアダルトグッズが社会で認められていると思っていたけど、解放された今でもしっかりニーズがあるんですね。そりゃ、それなりの道路の路面に店が出ているはずだわ。
    昔話の小ネタ程度にと手にした本でしたが、しっかり勉強させていただきました。澳門首家線上賭場上線啦が何のことか分かったし。
    安田さんって名前聞いたことあるなと思ったら、色んな雑誌にいろいろ寄稿しているんですね。それでだ。

全20件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ルポライター

「2023年 『2ちゃん化する世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安田峰俊の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×