ペリリュー玉砕 南洋のサムライ・中川州男の戦い (文春新書 1222)
- 文藝春秋 (2019年6月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166612222
作品紹介・あらすじ
戦死者10022名。最後に残ったのは34名。玉砕から75年、いま明かされるペリリュー戦の全貌。フィリピンの東、小笠原諸島の南西に浮かぶ島国パラオ共和国。戦後70年の節目となる2015年4月8日、天皇皇后両陛下(現在の上皇上皇后両陛下)は、この国の南部に位置するペリリュー島を訪問され、日米それぞれの慰霊碑に献花された。宿泊されたのは巡視船内、移動は大型ヘリという強行軍であった。そうまでして両陛下が慰霊のために訪問されたのはなぜか。この島こそ、太平洋戦争でも有数の激戦地でありながら、人々の記憶から消えようとしているからではなかったか。ペリリュー島にあった大型空港の確保を狙う米軍の総兵力は約4万2000人。主力は米軍最強ともうたわれた第一海兵師団であった。いっぽう日本の守備隊は約1万人。寡黙な九州男児である中川州男大佐に率いられた「陸軍最強の精鋭部隊」との声もある水戸の歩兵第二連隊が中心である。自滅覚悟の「バンザイ突撃」を禁止し、太平洋の防波堤たらんと、守備隊は島じゅうに張りめぐらせた地下壕を駆使して、74日間にもおよぶ徹底抗戦を試みる。昭和天皇から発せられた「お褒めのお言葉」(御嘉尚)は異例の11回。米第一海兵師団は史上最悪ともいわれる損害をこうむった。中川大佐の人生、満洲から転戦した歩兵第二連隊の記録を追いつつ、ペリリューでの壮絶な戦闘を、帰還兵の貴重な証言や現地取材などを通じて描き出すノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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h10-図書館2019.12.3 期限12 /17 読了12/12 返却12/13
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アッツ島、サイパン島、硫黄島、ガダルカナル島の玉砕、インパール作戦の悲劇など日本軍の無謀な戦いについて、一応の知識はあったが、正直本書に触れる迄ペリリュー玉砕については、殆ど知識がなかった。
しかも、このペリリュー島の戦闘で、それまで日本軍の定番の戦い方であったバンザイ突撃をやめて塹壕持久戦を採り、その後の硫黄島、沖縄の戦いのモデルになったことに興味をひかれた。
しかも、ペリリュー島守備隊指揮官の中川州男大佐の指揮官としての人物像にも興味があった。どの時代でも、軍隊だけではなく組織のリーダーの人格、生き様は胸を打つものがある。中川大佐(中将)は硫黄島の指揮官、栗林忠道中将につながる人物像を見た思いがする。
私は、今日の保守派や右派の連中が、太平洋戦争の悲劇をどれだけ、その後に生きる我々自身の問題として認識しているのか疑問視せざるを得ない。その意味では、本書は太平洋戦争を美化すること無く、戦争の悲惨な事実を追体験出来る好著と言える。 -
2021/6/5(土)夜読了。いつでも書店の電子書籍にて。
中川さんに焦点をあてたノンフィクションであるが、後半は戦局、戦場の最前線の生々しい戦況が叙述され、中川さんであってもどうしようもない戦力差が切なく迫ってきた。
一方、戦争は強大な戦力を保持して勝てばいいということではなく、
戦争に巻き込まれた全ての人が不幸になることもしっかりと書かれていて、
やはり、どう考えても、そうだなあ、と改めて思いを強くした。
戦争の最前線での悲劇的な状況も、戦死も、戦死した人の遺族も、戦争関連死も、戦争によるあらゆる被害も、どれもこれも、たった一人の死でさえ戦争が起こした事となれば理不尽なのに、数えきれないほどの悲しみ。
なんとしても戦争を回避する意思を貫いていきたい。
多くの人の心にも、同じように刻まれていますように。
著者の早坂さんが、私自身とあまり年齢が変わらないことに気づき、私ももっと頑張らないとな、と痛感した。 -
ペリリュー島の戦いを日本軍から見たもの。
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東2法経図・6F開架:210.75A/H47p//K
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【天皇・皇后が慰霊に訪れた南洋の島の激戦史】硫黄島と並ぶ激戦の地ペリリュー島。中川州男大佐の指揮下、米軍を散々苦しめて玉砕した日本軍の戦いを現地取材や経験者の声で再現。