ボローニャ紀行 (文春文庫 い 3-29)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167111281

作品紹介・あらすじ

「国という抽象的な存在ではなく、目に見える赤煉瓦の街、そしてそこに住む人たちのために働く、それがボローニャの精神」。文化による都市再生のモデルとして、世界に知られたイタリアの小都市ボローニャ。街を訪れた著者は、人々が力を合わせて理想を追う姿を見つめ、思索を深めていく。豊かな文明論的エセー。

感想・レビュー・書評

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  • 奇しくもこの本を読んでいる最中に、作者井上ひさし氏の訃報がもたらされた。若い時は、よく読んだものだ。「吉里吉里人」や「不忠臣蔵」とか最高だった。
    この「ボローニャ紀行」を読んで、社会の在り方を学んだ。
    イタリアの社会、こんな社会もあるのかと感心した。
    われわれ日本人は、欧米というとアメリカを模範にしてきたが、今はむしろヨーロッパの国々のそれぞれいいところを模範にすべきだろう。
    イタリアは一度は行ってみたい国だ。

  • テストーニの鞄を抱えた井上ひさしがボローニャへ。フィレンツェから北のアペニン山脈を越えると、人口38万人(当時)のこの街が広がる。

    ムゼオが37、映画館が51、劇場が41、図書館が73、あるそうな。それも例えば産業博物館だったら展示の企画は工業専門学校の生徒達が授業の一環でやるとかで、地域社会組織がお互いに絡んでる。これがボローニャ方式か。うーん、やるな。

    フルラもブルーノ・マリもラ・ペルラも出てきませんが、ヴェネツィアのカルパッチョやベッリーニ・カクテルで有名なハリーズ・バーは出てきます。
    ところで、ちょろっと出てくる「イタリア滞在歴の長かった妻」って、米原万里の妹の方かしらん。

  • イタリア・ボローニャの風土を讃えつつ、
    表裏一体で当時の日本社会への鋭い批評が
    透けて見える。

    グローバリゼーションやトランプ的価値観など
    世界はますます井上ひさしが愛した
    ボローニャ的なものからかけ離れて言っている。

    地域の歴史、文化に根付いた社会の
    集合体としての国家。
    今こそ考えるべきテーマだと感じた。

  • 並々ならぬ 井上ひさしのボローニャ愛。
    ボローニャやイタリアに関する本をよく読んでいる。
    ボローニャについて、すぐに大金を盗まれる。
    そこから始まる。
    この本を読んで、ボローニャに行って見たくなった。
    ボローニャソース(ミートソース)の発祥の地。
    豚肉文化、生ハムが美味しい。
    ボローニャ大学 1088年創立。
    トーマスベケット。ダンテ。ペラトルカ。ガリレオ。
    エラスムス。コペルニクス。ウンベルトエーコ。
    などが、傑出している。
    サッカー選手のトッティ。ローマの王子様の笑い話がいい。

    日本との比較が、なんとも洒脱的な皮肉。
    銀行の役割が、地域の産業を育てるために存在し、
    事業を進めるための組合をつくる。
    地域のために、何ができるかを考える。
    古いものを大切にして、リストアーして、
    新しいものは、過去の中にあるという。
    創造都市のイメージが良く湧いてくる。
    ボローニャ方式が、素晴らしい。

    「困難にぶつかったら過去を勉強しなさい。未来は過去の中にあるからです。」
    「過去と現在とは一本の糸のようにつながっている。現在を懸命に生きて未来を開くには、過去に学ぶべきだ。」

  • ボローニャを訪れる際に読んだ。
    街を歩くのが楽しみになる。

  • 毎週金曜日に行なっているパブリック・エンゲージメントに関するミーティングで参加者の方から紹介してもらった本。はじめは2013年5月15日に甲南大学図書館で単行本を借りて読み始め、21日に文庫版の古本を購入し29日に読み終わった。パブリック・エンゲージメントを考える上でたいへん参考になる。

  • 市民による協同組合、それを支援する企業や市、歴史を守りながらその中で新しい方法を見いだす、会社は拡大させず分社化してそれぞれが自立する…。ボローニャにはまちづくりのヒントが詰まっている。著者が取材した人たちの人柄やボローニャの美しい風景もすごく伝わってくる文章で、ボローニャの魅力を堪能できた。

  • ボローニャ旅行へ行く前に読みたかった。

    協同組合をつくり申請が通れば、自治区が資金援助や使われなくなった建築物を無償で提供する、地元の銀行も援助するという「ボローニャ方式」。面白い。

    1945年のナチスドイツ軍とイタリアファシスト軍を戦って自力で街を解放した時のボローニャ市民の4つの誓いは、ただただひたすら感嘆する。
    1. 復興のためには女性の力が必要である。そこで女性が安心して働くことができるような環境をつくるために、まず公共保育所を建てることにしよう。それが街づくりの第一歩である。
    2. 町の中心部の歴史的建造物と郊外の緑は、市の宝物である。この二つはあくまで保存し、維持しよう。
    3. 「投機」を目的とした土地建物の売買は、お互いに禁じ合おう。
    4. 市内の職人企業の工場については、業績がよくなっても増築しないようにしよう。どうしても増築したいときは、街の景観を守るために、熟練した職人による分社化を行おう。

    「自分がいま生きている場所だけは大事にしよう。その場所さえしっかりしていれば、人は幸せに生きていくことができる」というボローニャ精神、自分が住んでいる街が大事で大好きって正直うらやましい。そういう街で年月を重ねたい。

  • ひょっこりひょうたん島の井上ひさしさん。金融危機後の批判されまくりのイタリアとは別のイタリアを知る。面白い!

  • 紀行文よりもエッセイに近い。
    イタリアのいいところ悪いところ書いてあっていい。
    イタリアってあったかい国ですね。

  • ふむ

  • 軽い旅エッセイではなく、イタリア(ボローニャ)の都市機能を深掘りした解説本。町おこしに携わっている人とか読むと響くものがありそう。

  • イタリアに行きたくなった。ボローニャという都市はあまり知らなかったけど、共産党の雰囲気があって、イタリア政府を信用しないで、自分たちで街をつくっていく、守っていくという気持ちが強い、共同体感覚の強い街だと知った。やりたいことがあったら、組合をつくってしまうところとか、小さい店もみんなで応援するところはとてもいいなと思った。いつか行ってみたい。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729981

  • 再読中
    2019/3/25了

  • ボローニャの息吹を感じる一冊
    ひょっこりひょうたん島を手がける井上ひさしさんのボローニャ旅行記録であり、ボローニャ都市経営やボローニャ市民の考え方を知ることができるまちづくり読本でもある。
    国よりも自分たちの街のために働くボローニャの精神が今後日本でも間違いなく重要になると感じた。

  • 「紀行」とタイトルにあるので、旅行記か何かかと思って読んだが、全く違った。とても興味深かった。
    イタリアの小都市、ボローニャがどんな町なのか、住民の取り組みや、共同体のような社会システム、共有する価値観などを、歴史的背景も含めて詳しく書いてある。とても特殊な自治体だという印象で、「そんな町があったのか!」という感想だ。
    ボローニャ出身者と話したことがあるが、「一生ボローニャで暮らしたい、ボローニャ以外に住むことは考えられない」と言っていたのが強く記憶に残っていて、どんなところなんだろうと思っていた。
    この本で面白いなと思ったのが、大学が町で果たす役割だ。おそらく世界一の学生数を抱えるボローニャ大学は、世界最古に近いほど歴史がある大学である。市民は大学に何を期待しているのか。
    また、古いものをただ残そうというだけでなく、古い建造物は死守しながらも、新しい使い方を模索しているというのにも感心した。あくまでも主役はそこに住む人であり、市民参加型の行政が(本に書かれていることが正しいとすると)よくワークしているようだ。
    今度行ってみようと思う。

  • 2017年1月22日紹介されました!

  •  都市再生のモデルとしての「ボローニャ方式」は素晴らしいものであり、日本も見習うべき点が多々あるように思う。意思の強い組合に政府やお金持ちが寄付して産業を盛んにしたり、儲けの半分はきちんと公共に還元したりといった大きな規模のものから、地産地消を心がけたり、文化を大切にしたりといった市民レベルのものまであり、とても感銘を受けた。
     しかし、いくらその方式は素晴らしくても「住んでいる街がよければ国はどうなっても構わない」スタンスには少し疑問を抱いた。だからとんでもない首相を選んじゃったりするんじゃ…?

  • 短いけど、充実した内容だった。ボローニャに行ってみたくなった

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著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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