富士山頂 (文春文庫 に 1-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167112011

作品紹介・あらすじ

富士山頂に気象レーダーを建設するという大事業を軸に、それにまつわる錯綜した動きを追って現代社会のひろがりを捉え、さらに、山岳小説の興趣を深めた長篇。(尾崎秀樹)

感想・レビュー・書評

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  • 富士山レーダー建設を通しての人間ドラマ。気象庁に勤めていた頃の作者の体験を元に書かれた小説。
    NHK「プロジェクトX」の第1回目が富士山レーダーの話で、ラストに作者も紹介されてました。

    新田次郎は、文体や作品の目線や作者近影が見るからに優しそうなのに、満州からシベリアへ抑留された過酷な経験をしていたり、奥様の藤原ていによると結構子供っぽかったり怒りっぽかったりしたらしく(要するに邪気がないのかな?)、藤原さんの満州引き上げ体験記やエッセイなども興味深いです。

  • 富士山にレーダーを設置するというロマンとそれに対する役所内部のドロドロしたものや施工業者との軋轢がとても興味深く楽しめた。
    半世紀ほど前のお話なのだが新田氏のリアルな経験が切々と語られている感じ。
    それにしてもお役所という所は何十年経っても変わらないシステムなのだなぁと感心したり呆れてみたり。

  • 富士山頂気象レーダーの建設事業を題材にした実話ベースの小説。新田次郎は中学のときに読んだ「武田信玄」以来か。それにしもて新田次郎が電通大(当時は無線電信講習所)卒で、気象庁に勤めて、富士山頂気象レーダーに関わっていたとは知らなかった。
    プロジェクトXとしても官製談合の暴露話としても読め、面白かった。
    レーダーは1999年にその役割を終え、測候所も2004年に無人化されたそうな。

  • 気象庁が富士山頂に当時世界一の気象用レーダーを設置する、完成するまでの苦労話を纏めたドキュメンタリー小説。
    予算獲得、業者選定、機材の運搬、高山病対策、夏しか作業出来ない短期集中の環境、最後に省庁の壁による検査等々の苦労。
    最後の工事完了間際に襲って来た台風には宿舎が吹き飛ばされ、工事責任者も吹き飛ばされ命からがらの難工事。

  • 感動の野武士伝説

     富士山頂への気象レーダー建設物語。

     作家でもある気象庁課長が通信メーカーと一緒に一大事業を成し遂げる。名誉のため採算度外視で受注活動を繰り広げるメーカー各社。

     事業は一社でやるべきと主張する気象庁課長の主人公。ドラマがそこに生まれる。

     主人公の政治的圧力をも跳ね返す意志力。圧力でどうしてもメーカーに分割発注しないといけなくなったときの心、さらに逆転でそれを跳ね返して一社で工事をやり遂げた達成感。

     建設会社の現場監督の言葉もいい。

    工事の完成は人の数でも技術でも金の力でもなく、人の気持ちだ

     完成後のパーティーで、機械予算は取ってそこで働くことになる人のための予算が少ないことを所員から責められるのだが、黙ってそれを聞く主人公の心の動きも鮮やかに書かれている。

     富士山頂レーダー建設を背景にした主人公の心の物語であるとともに、新田次郎その人の私小説のような気がして、この作品は私にとって新田次郎作品ベスト3に入るものとなっている。

  • この時代の役人は、まだ、なにもなかったこの国の社会基盤を造り上げる、という強い熱意をもって働くことができたのでしょう。

  • 新田先生の作品の中では、今の所一番好きです。
    自分が読めてる中では、って事だけども。
    映画も、こちらの方が好きだなあ。
    まあ、これは自分ですよね〜、って感が、
    一番描かれてる作品ではあるし、
    主人公、祐次郎だよ〜、って思いはありますが、
    自分はこの作品面白かった。
    DVD出たら買うのになあ。
    「映画は映画館で観るものです」とか言った、
    祐次郎さんの言いつけで、出てないのが残念だ。

  • 時として、頭の中で「地上の星」が大音響で自動スイッチ入るような…(笑)
    もはやプロジェクトX症候群。
    それにしても、著者自身がモデルだとしたら、カッコよすぎます、葛木課長!

  • こんな小説が書けたらいいなぁ、と思っています。

  • ・10/9 読了.作者が実際に富士山レーダー建設に関わっていたなんて驚きだ.もともと公務員だったのか.ProjectX観たかったな.今は無きレーダーを見てみたい.

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著者プロフィール

新田次郎
一九一二年、長野県上諏訪生まれ。無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。五六年『強力伝』で直木賞を受賞。『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、七四年『武田信玄』等で吉川英治文学賞を受ける。八〇年、死去。その遺志により新田次郎文学賞が設けられた。

「2022年 『まぼろしの軍師 新田次郎歴史短篇選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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