戊辰落日 下 (文春文庫 つ 2-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167157036

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  • 奥羽越同盟は破れ、孤立を深める会津の本拠・鶴ヶ城に
    錦旗が迫る。将軍家の藩屏たらんとする藩祖以来の峻烈
    な立藩精神を貫くべく、老・幼・女に至るまで全藩あげ
    て凄絶悲惨な籠城戦に身を投じた会津の強兵たち。膨大
    な資料と緻密な考証でその全容を再構成した本書からは、
    会津藩士の怨念が伝わってくる。
    (単行本1978年、文庫本1984年刊)

    負けいくさは読んでいて辛い。本書では官軍がいよいよ
    鶴ヶ城に迫る。
    当時、会津藩の精鋭部隊は国境に張り付いており、城を
    守るのは老人と子供ばかりであったという。会津藩の誤
    算は官軍の侵攻が予想をはるかに上回っていたため、日
    橋川にかけられた十六橋を落とすことが出来なかった事
    である。また、城外に備蓄してあった兵糧を城内に運び
    入れてなかったことから、籠城に際し苦しむこととなる。
    (城内へ運ぶことを建議する者もいたが、不吉であると
    左遷されたという。この最悪の事を想定しないという点
    は後の日本軍や震災前の電力会社を彷彿とさせる。)

    古来、籠城には「片籠」と「諸籠」があったと言う。片
    籠は、荘年の男、戦闘員だけが籠城しその家族は前もっ
    て戦場外に避難させる方法であり、諸籠は老用婦女子も
    城主と運命を共にする方法である。
    かねてより会津藩は、敵の来襲において早鐘をならし、
    藩士の家族は城へ入り、一般市民は戦場外へ避難するよ
    う布告していたというが、その日の朝、藩士の家族は足
    手まといにならないようにと自刃して果てるものが多か
    ったという。西郷頼母一族の話は有名であるが本書でも
    多くの逸話を紹介しており凄惨としか言いようがない。

    色々な制約があったものの会津藩は一か月余りの籠城戦
    を戦い意地を見せる。
    本書を読み終えた時、えも言われぬ解放感があった。戦
    争が終わったというのはこういう気持ちなのかも知れない。

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