深海の使者 (文春文庫 よ 1-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169015

感想・レビュー・書評

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  • 零戦は広大な中国大陸・太平洋を飛んで戦う必要があった。
    狭い欧州戦域、ドーバー海峡間を戦えばよいスピットファイア戦闘機と諸元だけ比較してみても仕方ないこと。一方で潜水艦。ドイツ海軍が伊号潜水艦の騒音に驚いたというエピソードはさもありなんとの感想。酸素魚雷は実際には敵に発見され回避されていたし、戦後アメリカ軍に接収研究された日本潜水艦群には技術的に殆どみるべきものがなかったという。伊400級にしても同じ。
    架空願望戦記から抜け出せないようでは歴史に学ぶことはできない。

  • P357

  • 第二次世界大戦中、遠く離れた日本とドイツ両国を結ぶ連絡路を確立するためには、潜水艦を派遣するしかなかった。 その日本の遣独潜水艦5隻とドイツから派遣されたUボートの苦闘を書いた記録(1976/04/25発行)。

    ドイツに派遣された日本海軍の潜水艦は、イギリス、アメリカの手中にある制海・制空権権の中、航海は困難を極め、日本とドイツの往復が成功したのは伊8号1隻のみで、他の4隻は撃沈されていてしまいます。

    一方ドイツからは、UボートのU-180がインドの独立運動家チャンドラ・ボースをインド洋上まで運び、大戦末期にはドイツの機密兵器の資料とドイツ駐日海軍武官及びドイツに赴任していた日本海軍の技術士官を運ぶため、U-234が派遣されていますが、航海の途中でドイツが無条件降伏したため、アメリカ海軍の駆逐艦「サットン」に投降し、日本人士官は自決します。

    まさに「深海の使者」であった日独潜水艦の苦闘に魅せられる本でした。

  • 究極のデスマーチ小説 http://bit.ly/QBLaYq

  • 過去の愚行を批判するのは簡単で、その批判が当を得ていないこともままあるのだが、制空・海権を制圧されている中を潜水艦で日本とドイツの間を数か月をかけて人と軍事技術を運ぼうとしたことは、成功の可能性はほとんどなく死と直結していることは明らかであり、そのことに軍も自覚的であったのだから、やはり狂気の沙汰としか言いようが無いのでは。 戦争によって本当どれほど多くの逸材が亡くなったのであろうか。また無名でしかありようのなかった、どれほど多くの市井の人々が亡くなったのであろうか。

  • ドキュメンタリーな潜水鑑誌

     久しぶりの正当派小説だ。

     「高熱隧道」の印象が極めて強いが、「プリズンの満月」もドラマティックだったと記憶している。

     今回の作品はあまり脚光を浴びなかった潜水艦のお話。

     世界大戦中何度か日本とドイツを往復した潜水艦にまつわる話である。

     最初の潜水艦は日本(正確にはペナン)からドイツまで行って最後の最後で、ちょっとしたミスで沈没してしまう。ここが強烈に印象に残った。後は、まさにドキュメンタリーだが、戦争を違った切り口から見るという感じだろうか。淡々とストーリーが進んでいく。まさに記録映画のようだ。たまにはこんな本もいいな。

  • ノンフィクションだからしょうがないと言えばしょうがないのだが、思っていた程感動もしなかった。
     どちらかと言えば、今まで興味を持ってきた内容があながち、嘘ともいえないことを裏付ける形の読書になった。
     すなわちイタリアの拿捕潜水艦のドイツ海軍へ編入、ドイツUボートの日本への回航は、「終戦のローレライ」の裏付け、A-26の日独無着陸飛行計画は「ジパング」の同事実を裏付ける形となった。また、文中にはおなじみの藤村義雄や延光東洋の名もみられた。
    サブテキスト

  • 2011.4.3(日)。¥189。
    2011.7.9(土)。

  • 連合国軍の目をかいくぐって、日本とドイツを潜水艦で行き来していたという、その事実に驚かされる。終盤のドイツ敗戦間際、ベルリンの息詰まるような緊張感がシンプルな文章からひしひしと伝わってきて非常に良かった。徹底した取材を元に書かれるので吉村さんの小説は本当に安心して読めます。

  • 歴史小説と思って買ったのだが。。。
    70ページ読んでつまらなかったので,時間の無駄と思い止めた。
    またいつか気が向いた時に再度読んでみるかな?

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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