- Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167483210
感想・レビュー・書評
-
【歴史とは、一筋の流である。戦争史の決定版】日露戦争が変えたものから、特攻隊、戦艦大和、原子爆弾などあの戦争を通して見据える、日本人の本質とは。「昭和史」に続く決定版!
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「戦いに敗けた以上はキッパリと潔く軍をして有終の美をなさしめて、軍備を撤廃した上、今度は世界の輿論に吾こそ平和の先進国である位の誇りを以て対したい。(中略)世界は、猫額大の島国が剛健優雅な民族精神を以て、世界の平和に寄与することになったら、どんなにか驚くであろう。こんな美しい偉大な仕事はあるまい」
さて、問題です。
この発言の主は誰でしょうか?
今なら観念的平和主義などと揶揄される左翼思想の持ち主だと勘違いされるかもしれませんね。
正解は、何とあの満州事変の首謀者、石原莞爾元陸軍中将。
その石原が戦後、述べた決意です。
なんて私も偉そうに紹介していますが、本書を読んで初めて知りました。
なんとも胸がすくような言葉ではありませんか。
戦後の右翼なんて恐らく束になっても敵わない石原が、あのこっぴどい敗戦を経験して掲げた平和への決意。
それに比べて今の為政者が口にする「平和」の言葉のなんと軽いことよ。
この石原の言葉を知ることができただけでも、本書を読んだ甲斐があったというものです。
本書はベストセラー「昭和史」を著した半藤一利さんの「語りおろし『戦争史』」。
博覧強記の半藤さんが「あの戦争」について縦横に語り尽くして「え? そうなの?」「知らなかったぁ」などと感嘆に次ぐ感嘆で興奮のうちに読了しました。
私は本を読んで心を動かされる個所に出くわすと、そのページの下の隅っこを折る習慣があるのですが、ほとんどのページを折ってしまいました(笑)。
本当はすべてを紹介してこの興奮を少しでも分かち合いたいですが、私もこれで忙しい身なのでそうもいきません。
ただひとつだけ、どうしても紹介したい個所があります。
それは日本が太平洋戦争(大東亜戦争)への道を急ぎだす昭和15年9月の日独伊三国同盟の締結に際し、近衛文麿が昭和天皇に奏上した内容です。
「この三国同盟の目的はやがて日独伊ソの四国協定にまで拡大していき、結果的には日米戦争の防止になること、かつ同盟を締結しなければ日米戦争の危険はかえって大となること等々」
どうでしょうか?
最近、これに似た言葉を聞いた記憶はないでしょうか。
私は安倍首相が集団的自衛権の行使容認を閣議決定した時の記者会見で、「日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなっていく」と発言したことがすぐに想起されたのです。
集団的自衛権が米国との同盟を強化することに主眼が置かれていることは論を俟ちません。
いつの時代も政治家は、「同盟の強化で戦争の可能性は小さくなる」と強弁するものらしいです。
敷衍すれば、「軍事力を高めることが平和を維持することにつながる」と言うこともできるでしょう(実際、こういう発言をしょっちゅう耳にしますね)。
そんなことは決してありません。
軍事力を高めれば、戦争をしたくなるのです。
これも本書を読んで知りましたが、米国は当初から確実に使用することを意図して原爆を作ったのではありません、原爆が完成したから使ったのです。
私は、このたびの閣議決定で集団的自衛権の行使が可能になったから、ただちに戦争になるとは思いません。
ただ、「ノー・リターン・ポイント」に立ち至ったというのが、不案内な私の認識です。 -
今、あの戦争について知っている人、知りたいと思っている人がどれほどいるだろうか?
日露戦争をはじめるときと太平洋戦争をはじめるときの違いがよくわかった -
やはり面白い。そして分かりやすい。もっと歴史を知りたくなる一冊でした。
-
やわらか歴史おじさんの語り本。戦争に密接な軍部と国民。司馬の「統帥権=魔法の杖」と比較しつつその起源を人を通して語る。なにより統帥権を巡る戦争という視点では説明しきれない何かを捉えていく。その先には「あの戦争と日本人」という標題に同じテーマがあった。というのが感想とするのは恥ずかしいけども。楽に真摯に受け止めたくなる本。
-
日本の一番長い日と平行して読む。色々な間違いが積み重なって悲劇が起こる。やはり民族としての経験不足もあるのか、極東の島国が気質を生むのか。日露戦争で少し負けておいた方が第二次大戦の悲劇はなかったかも。アジアを欧米の植民地から開放する、という大義はよいが、ミイラ取りがミイラになってはいかん。
-
3日で読了。読み易いが、聞き書きなので少々、内容がだぶりがちな印象。
石原莞爾と宮沢賢治が日蓮宗の拡大主義の産物だと言い切った所が秀逸だった。阿南と米内の確執も説得力があった。 -
7、8月に必ず読む終戦もの。半藤さんのバランス感覚と資料に裏付けられた発言は、目から鱗のことがままある。今回もそんな一冊でした。