- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167502034
作品紹介・あらすじ
古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極などへ行こうとしたのか…。次々に繰り広げられる不思議な世界。楽しく、そして底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録。
感想・レビュー・書評
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7編からなる短編集。
現実世界のようでありつつ、そこから一歩ズレたような、幻想的な雰囲気をはらんでいると感じました。
どの話も決してスッキリしないというか、モヤモヤ感が残るんですが、それでも読後感は良かった。
全体的に暗い雰囲気が漂ってますが、それが意外と、読んでて心地良かったです。
話は逸れますが、自分はこういう文学作品を読む際も、そのまま実直に読むというか、特に作品におけるメタファーは特に考えずに読む(というか、頭悪いので、そこまで思考が及ばない)ので、他の方の感想を見るとそこんとこ上手く言語化してて凄いと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「レキシントンの幽霊」
アメリカの古い屋敷で体験した奇妙な出来事。もっと怖いことが起こるのかと思っていたが、読んでみるとそうでもなかった。
目を見張るような立派なレコードコレクション。
大量の本やレコードを見ると、それらが生き物のように感じられることがある。
そのあとの「緑色の獣」「沈黙」「氷男」の方が怖かった。
幽霊よりも、人の心の奥底に潜んでいる目に見えないものの方が、無限の怖さがあるということに気づいた。
「トニー滝谷」と「めくらやなぎと、眠る女」は、長編小説の欠片のよう。
村上春樹は短編小説にもさまざまな発見があって面白い。 -
作者の短編集読み漏らし②
ボリュームは200p弱だが、どの作品もかなりヘヴィーで読後に陰鬱なしこりが残る。
また全体的に示唆的で、作者の価値観・物の捉え方に対する提示がなされ、意外と他作にはない色合いを持つ。
コンセプチュアルとも言えるし、執筆当時の作者の心情にも思いを馳せれる、とても充実した内容だった。 -
1990〜96年発表の短編をまとめた作品集。
郷愁に駆られる作品が多かった。 -
並走する異世界、ふと交錯し失われる日常の…
表題作レキシントンの幽霊、トニー滝谷、七番目の男が良い。
表題作は高校の教科書に使われたりもしてたんですね。 -
7つの短編からなる村上春樹ワールド、不思議な物語。独特なユーモラスな描写や心の奥底の的確な表現によって、物語に引き込まれていく。
ピアノ調律士であるジェレミーが住んでいるレキシントンのアパートで不思議な出来事。決してホラーではない。後半は深みのある哀愁を感じさせられる。
緑色の獣は何を伝えたかったのだろう。人の心に潜む獣の形は実は自分自身なのかもしれないと感じてしまう。
沈黙では、本当の怖さは迎合する人の本能のようなものが上手く表現され、疑問を提起している。メッセージ性の強さを感じる。
氷男、なぜ氷男なのだろう。深掘りすると面白い。髪の毛の白さ、物理的な冷たさや歴史上の凍結の話題、時空を超えて過去も未来もない世界。
トニー滝谷、トニー谷は大昔の芸人だが、それとは別だ。おもしろトナカイでもない。孤独とは何だろう。
七番目の男、読み始めはホラーの様相であった。過去の経験から生まれた心の暗闇に向き合い、その苦しみを乗り越えていく。それは自分の心の都合に合わせているかのようだ。
めくらやなぎと、眠る女では文章の美しさが目を惹く。文字から人物や風景が瞼に映し出されるほどに。
それぞれにテーマがあり、現代社会への問題提起をしているように感じた。読み手の想いや考え方次第でさまざまな色を着色できる作品だ。 -
久しぶりな村上春樹
明瞭な文体で読みやすい
どの短編も良かったけど
「沈黙」が良かった
ブックオフにて購入 -
7つの短編どれも読みやすい。緑色の獣は少し哀しい。沈黙、レキシントンの幽霊が好きです。