少年譜 (文春文庫 い 26-16)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167546168

作品紹介・あらすじ

貴方が生きている限り、避けることのできない苦しみがある。どんなにうまく人生を遣り繰りしてきたつもりでも、身の処し方に迷うことがある。そんな時、拠り所になる信条を持っていますか?遠く懐かしい記憶を、今でも大切にしていますか?かつて幼かった貴方の姿を、瑞々しい筆致で描いた掌編小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 伊集院さんは先日読んだ『お父やんとオジさん』を書くために作家になった
    とおっしゃっているらしいので
    それでは別の作品もと『少年譜』という短編集も読んだ

    こちらは初々しいさに富んだ少年の成長物語を
    文学的な、あまりにも文学的な表現であった

    初期の作品かなと思ったら今世紀に入ってからのもの
    手練れなのかなあ

    えっ?女性にも?
    ゴルフもうまいらしいよ

    へへへ
    こちらの『少年譜』もわたしは好きだ

  • 伊集院静さんが亡くなった。

    伊集院さんの著作との出会いはエッセイの「大人の流儀」だった。
    記憶が定かではないが、東日本大震災が発生し、世の中が騒然となり、今までの普通が普通でなくなった時、地に足をつけて生きていくことができなくなった(それまでも地に足がついていたかどうかは疑わしい。ただ、自分は自分の力で生きている、という根拠ない自信みたいなものがあった)。仕事も厳しいプロジェクトの真っ只中で疲弊しきっていた。
    そこで手を取ったのが「大人の流儀」だった。
    それまで伊集院静の本は読んだことがなかった。
    夏目雅子の旦那で、今の奥さんは篠ひろ子ぐらいの知識しかなかった。
    なぜ、「大人の流儀」を手に取ったのだろう。。
    全く思い出せない。

    大人はつらいのである。人生は厳しいのである。でも歯を食いしばって前を向き、周りの人に優しくしてあげなければいけないのである。

    というメッセージを、低音でゆっくりと語りかけてくるような言葉で自分の胸の中にすうっと染み込んできた。

    悲しみを受け入れ、人の痛みは分かち合えないけど、気持ちを通わせる努力をし、ほんの少し明日に向かって微笑む。

    一歩ずつまた前を向くことができるようになった感じがした。

    恥ずかしながら、今までエッセイしか読んだことがなく、小説は今回が初めてだった。
    作家の、伊集院静の人生を思わせる、厳しい中にも一筋の優しさが光る短編集だった。
    みんな一生懸命生きている。
    間違いも失敗もするが、それを糧にしてみんな生きている。
    人生とはこういうものなんだよ、とわかったようでわからないと考えている作家が、それでも人生は捨てたものではない、とエッセイのときにも感じた低音でゆっくりと語りかけてくるような小説だった。

  • 懸命に一つのことに取り組み励む男の子による7篇の短編集。
    男の子だったら誰もが経験したり感じたりしたことがある懐かしさがある。
    たまに読みかえしたくなる小説。

  • 短編で泣かされるのは良い小説の証拠と思っている。導入部分はどれも古臭い感じで入りにくいが気付いた時には没入している。小さなことを積み上げてそれが力となってい行く、とにかく励め!そんなメッセージを頂いた気がした。今の自分にぴったりの本だった。
    石田衣良の伊集院静のお礼の方法(スーツを作るかご飯を食べるか)そしてクラブでの振る舞い(女性に好かれるにはまずは弱点を見せる)はさすが伊集院静先生(私が住む現実とは乖離が激しく、こんな世界があるのか。。。ワラ)といった感じ。

  • 昭和の終戦前後の少年たちを主人公にした短編集。貧しいながらも、これからの成長へ向けて皆ががんばっていた時代。厳しい境遇に流されず生きた少年たちを描く。
    ああ、昭和だ。

  • うまく言えないが時間をゆっくり進ませる力がある作品たちだった。
    心を休めるにはいい作品。

  • 2016年、22冊目です。

    少年時の出来事を綴った7つの短篇で構成された小説です。
    物語の綴られている場所が、中国地方の街々や中国山地であり、
    とても親近感を持ちました。著者の伊集院氏は、山口県防府で高校時代までを
    過ごされており、描かれている土地の感覚は著者自身の肌感覚だと思う。
    大人になった男の誰にでも、刻まれている少年時代の自らの譜がある。
    少年譜、それは形を変えることなく自分の中にあり続け、時に深く沈み今の自分と、
    何の繋がりも無いように感じられる。
    しかし、「自分」という人生の物語のエピローグがそこにはあり、
    人生の主人公である自分自身が形づくられる時間がそこにある。
    美しいというより、強い光ではないが、心の中で特別の色を放っている。
    最初の「少年譜 笛の音」を読み終えた時、涙がでてきました。
    その理由は、自分では分かっていますが、人には説明できない。
    前後して読んでいた「涙腺崩壊」と帯に書かれていた推理小説が安っぽい
    物語に思えてしまいました。
    この短篇集の最後に収められている「親方と神様」は、以前に読んだ記憶があるのですが、この短編集以外には収録されていないようで、不思議な感じです。
    中国地方の”たたら製鉄”が物語に組み込まれており、郷愁ともに描かれているこの作品は、絶品な少年譜だと思います。
    あの強面の伊集院静の筆からこんな精緻な抒情的な物語が紡がれるのだから文学は凄い(恐ろしい?)いくつかの物語の根底に共通していることは、一途に屈折することなく、精励する者に訪れるのが、幸せだということです。

    おわり

  • P217
    少年時代に苦労した美学

  • 自分たちの根本や物事の本質を見つめなおそうと思わせる少年小説です。五十歳を過ぎると人は身体に穴があく。そこから物事がひとつ、ふたつ抜けるものだ(P73)、神様を大切にする、それは人の力でできることなどたいしたことではないからのう(P204)の一節が印象に残りました。

  • 苦難に負けず、ひたむきに努力する殊勝な少年達の姿を描いた短編集。
    遠い日、少年の頃に抱いていた大切な想いが甦る。

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著者プロフィール

1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞、’14年『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞する。’16年紫綬褒章を受章。著書に『三年坂』『白秋』『海峡』『春雷』『岬へ』『駅までの道をおしえて』『ぼくのボールが君に届けば』『いねむり先生』、『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』『いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯』、エッセイ集『大人のカタチを語ろう』「大人の流儀」シリーズなどがある。

「2023年 『ミチクサ先生(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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