冷たい誘惑 (文春文庫 の 7-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167652029

感想・レビュー・書評

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  • 1丁の拳銃をめぐる物語。
    短編が、かする程度に触れあって長い1本の話となります。

    とはいっても、各話に出てくる物事が完結していく訳ではないので 推理小説ではないかな。あくまで流れていくだけ。拳銃に魅入られたり、恐れたり、振り回されたり・・・

    時系列は話順とあまり関係ない?最初の主婦の話が好みでした。

  • ◆母の秘密・・・久しぶりの同窓会でハメをはずし、気付いたら泥酔して歌舞伎町の道端で居眠りしていた主婦の織江。家出少女に起こされ、なりゆきでもらった”お守り”を家であけると、それはなんと拳銃だった。
    ◆野良猫・・・家を飛び出した少女は新宿で出会った男・俊行の家に転がり込む。彼は優しかったが、トルエンの売買という危ないこともしていた。
    ◆なかないで・・・新社会人として働き始めた信人は、朝早くから騒ぎ出すカラスの鳴き声で寝不足になり、会社を遅刻してしまった。毎日のように現れてうるさく鳴くカラスに対し、いろいろ策を練るのだが・・・。
    ◆塵箒・・・警察を退職し、その後は農業で第2の人生を歩むつもりだったが失敗。妻は先に都会へ帰ってしまい、勲も一人でアパート暮らしをすることに。入居を決めたその部屋には、『少しの間、あずかってください』というメモと共に拳銃があった。
    ◆置きみやげ・・・突然の母の訃報。母の元恋人からもせっつかれ、遺品の整理をしていたら・・・今まで見たことがなかった父の写真、そしてなんと拳銃が一緒に出てきた。

    以上5編の連作短編集。全てに拳銃が登場し、最初から順番に読んでいくと、拳銃がわたってきた経路をさかのぼっていくことになる。

    5編全部が繋がっているのかと思っていたのだが・・・確かに【母の秘密】【野良猫】【なかないで】は順番に繋がり、【塵箒】【置きみやげ】は繋がっているのだが、【なかないで】と【塵箒】の繋がりは見つけられなかったなぁ。どの短編もさらっとは読めたが、あまり印象に残る話もなかった。

    ◆なかないで・・・この話は、ラストに少しだけほっこり。ただ、この信人の最後の行動によって、【野良猫】の俊行がひどい目にあってしまったことがわかるので、なんというかやるせない感じもしてしまうけど。

  • 連作短篇集。
    コルトでつながれたお話たち。

    たったひとつの小さな拳銃が、人々の狂気を呼び覚ましていく様子に背筋が寒くなった。

    銃社会じゃない日本で、そのコルトは「自分だけの強さ」であり、優位性。ほかの人との「力の差」。
    それを偶然手にしたのは、一般的に見れば社会の「弱者」になるだろう人たち。主婦におさまり、狭い世界で生きざるを得ない女性。家出をしてきた未成年の少女。上司にきつく当たられる平社員。

    わたしが、もし。
    そのコルトを手にしたら、自分は何かに目覚めるのだろうか。

  • ピストルのコルトを巡る話で趣向が変っていておもしろかった。
    同じピストルが、ひょんなところでいろんな人の手に渡る、その履歴と、ピストルを手にした人たちそれぞれの心の変化がちょっとぞわぞわとしました。
    最後の終わり方が、え~って感じでその後のコルトの行方が心配になりました。

  • 年齢、性別、地位、それぞれ全く異なる立場で繋がるはずの無い人々の前に現れる一丁の拳銃。
    その一丁の拳銃によって、年齢も性別も地位も異なる人々なのに皆揃いに揃って自信やプライドを取り戻す。実際に使用しなくても、持っているだけで日常が非日常になっていく。
    最初、なんで登場人物たちは警察に届け出ないのかなぁと思ったけど、読み進めていくうちになんとなく分かった。
    一生拳銃を手に取ることなんて無いと思うけど、そんな非日常的なことでも妙に納得させてしまう描写がすごい!

  • 現実的な日常に転がりこむ一丁の拳銃。
    拳銃を手にした人は、どう変わるのか。
    良し悪しは特になく、さらっと読める。

  • ◆あらすじ◆
    「私は拳銃を構える。恐怖にひきつった顔を思い描くだけで、胸のもやもやが晴れていく」───。
    久しぶりの同窓会で、歌舞伎町に流れ、家出少女から受け取った包みの中身はなんと拳銃。
    なぜか主婦は警察に届けない。
    日常に倦んだ市井の人々を狂気に変えていくコルトの魔力。
    巧みな構成で魅了する連作短篇集。

  • 読み物として、強いメッセージとか強烈なインパクトは
    ないんだけど
    きわめて現実的で、日常ってこんな風に人とつながって
    過ぎていくんだっていうことがわかる小説。

    短編で話が終わってしまうので、あれ?と少し
    残念な気持ちになるんだけど、全ての短編が絡まりあっている
    というもの。

    個人的には最後に大どんでん返しがほしいところ。

  • うむ。つながってるとこが面白い。拳銃って見たこともないけどそんな小さいのもあるのね。ちょっと身近に感じた。08.06読了。

  • 07年より以前

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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