太陽と毒ぐも (文春文庫 か 32-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167672041

感想・レビュー・書評

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  • 夏でもお風呂嫌いの彼女、買い物依存症の彼、ひどい浮気性の彼…一見すると安定して見える恋人たちがふと抱える問題と陰りを描いた11の短編集。

    第三者としては「なんでその人なの?」と思ってしまう相手でも、当人同士にしか分からない魅力があるものです。
    相手の良い面・好きな面を見てわくわくした気持ちで付き合い始めたはずなのに、相手のことを知れば知るほど見えてくる、目を背けられない引っ掛かる部分。我慢をしつつ、たまに相手に小言は言ってみるけど変わる様子はない。であれば自分さえ我慢すればいいと無理矢理納得してみるも、一度気になってしまうと会うたびに嫌な部分が鮮やかに映る。
    嫌なら別れればいい、とは簡単に片づけられない心の葛藤がうまく描かれています。
    「ここが…ここだけが嫌なだけで、他は申し分ないんだけどなぁ…」
    そんなぼやきが全篇通してため息とともに聞こえてきます。

    他人同士が一緒にいて平穏を保てるのは、努力の程度に差はあるにせよ、歩み寄る努力をしているからこそだと思わずにはいられません。
    角田さんの作品は、現実を丁度よく教えてくれる。他人事ではない恋人たちの恋模様。

  • 普通の人なんていないし、それぞれ違うところをどうすり合わせるか、どこまでが許容範囲なのか、人と生活するっていつまでもそうなんだな。

  • とりあえず、設定が少々大げさな話たちだなぁと。

    だって、名前がクマコって…(笑)
    適当に付けられたような気もするんだけど~、
    話を読んでるとその名前以外似合わないような気もしてくる。

    あと、そんな些細なことでそんなに怒るのか~と思ってしまう。
    でも、私は主人公たちではないからわからないのであって
    主人公たちには本当に許せないんだろうな~ということは
    本を読んでいて伝わってくる。

    少々大げさな話たちだからこそ、
    作者も「ばっかじゃねぇのこいつら」って思ったんだろうし~
    私も、「ばっかじゃねえのこいつら」と
    笑ってしまう。
    アホなんだけど~憎めないんだなぁ。

    ところで、私が角田さんのエッセイから読み始め
    角田さんの行動などを知っているからかもしれないが、
    この小説…というか
    私が今まで読んだ角田さんの小説には
    「この主人公って角田さんかなぁ」
    って思うことがよくある。
    行動であったり、話し方であったり。
    人から聞いたことは書かない。自分の言葉で書くようにしている、と
    角田さんが以前仰っていたが(新聞(の切り抜きで))
    人から聞いたことは書かないぶん、
    いろいろな経験をされているのだと思う。
    小説を読んでいると、
    本当にそれがよく分かる。
    そして、毎回違う話を書く想像力に驚かされる。
    小説家って本当すごい職業だなぁ、と思う。
    そう思うと、職業に関係なく働いていることがすごいなぁと思ってくる。
    そんな風なことをひたすら思っていると
    自分がすごくちっぽけに思えてきたりもするけど、
    それは仕方ないと思う。
    だってまだ人生経験21年だし。
    まだ働いてないし。
    むしろこれからが正念場ではないでしょうかね。

    なんて、レビューからかなり内容ズレてるけど
    そう思った小説でした。
    うーん、まとまってない…

  • 好きな本。
    いつかの新婚旅行は絶対に国内にしようと思った思い出。

  • 一週間に二回程度しか風呂に入らない彼女
    迷信を信じる彼女
    使いもしない物を買いあさる彼
    他人に何でもしゃべる彼女

    そんな彼・彼女の恋愛もようを描いた短編集。
    1話がどれも短くてすぐ読める。

    普段は気にならない事がふとした瞬間、別のスイッチが入ると耐えられないものになってしまう。
    そういうのって、何となく分かるな~。
    よくこんなに色んなシチュエーションを思いつくな~と感心しました。

    登場人物が皆若いせいか、会話があまりに軽く、単語だらけで見ていて疲れました。
    まるで話だけ変わって同じ人が話しているみたい。

    1話目の「サバイバル」が良かった。

  • 最初の数話は、まだ「バカじゃないの?」と、笑って読めていたけど、それがあまりにも続くので、だんだん腹が立ってきちゃいました。
    主人公みんなに渇を入れたい!

  • 付き合っている相手に対して、「きっと誰も、自分ほどには相手を嫌いになれないだろう」と思うことがすごくリアル。あぁ確かにそうだなぁと、少しの痛みと滑稽さを伴って胸に迫ってくるものがある。
    好きなのに許せないというよりは、好きだからこそ許せないのほうがいろいろと言い得ている気がする。好きだと思うのと同じ分だけ、相手のことを憎いと思う。それでも、我慢して喧嘩して仲直りしてを繰り返して一緒にいる。なんなんだ。好きってなんだ、他人同士が一緒にいようとするってなんだ。
    無駄なことだと思うのと同時に、その無駄こそが一番大事なのかもと思ったりもする。相手のことが憎くてしょうがない、もう疲れたってなったときはこれを読むようにしよう。嫌いなところではない何かを、思い出せると思う。

  • ★購入済み★

  • 11組のカップルの、ほんの些細な心のすれ違いを描いた短編集。

    お風呂に入らない彼女、熱狂的な巨人ファンの彼、不必要な物ばかり買い集める彼。などなど。

    どこまでは許せて、どこからは許せない。そんな心の境界線が巧みに描かれています。

    いつの間にか自然と生まれてくる男女の微妙な心のすれ違い。
    他人の事とは思えないリアルさと、リアルなだけに後味の悪い感じがとても面白かったです。

  • 面白かった。

    角田光代だから間違いないとは思ったけど。ぶっ飛んだ恋愛短編集。

    なんでこの人こんなやつと結婚したんだろう。

    と、思うことままよくあるけども。自分を振り返ってもそうなんだよね。ホントに。
    なんで?っていう人と一緒にいて、なんだそんなことで喧嘩して、許せなくて。

    そんなんだよね。他人から見ても自分でみても。

    大したことないのに許せないこと。

    大したことなのに許せること。

    笑笑

    他人にとっちゃ大事件だしよく一緒にいられるわ!って思うし、そんなこと大したことじなないよね。ってことで離婚したりね。笑笑

    でも、そんなもんなんだよねぇってことをよくここまで丁寧に拾って本にしたもんだ!!!!!と、思う一冊です!!!

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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