悪の教典 下 (文春文庫 き 35-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167839024

作品紹介・あらすじ

圧倒的人気を誇る教師、ハスミンこと蓮実聖司は問題解決のために裏で巧妙な細工と犯罪を重ねていた。三人の生徒が蓮実の真の貌に気づくが時すでに遅く、学園祭の準備に集まったクラスを襲う、血塗られた恐怖の一夜。蓮実による狂気の殺戮が始まった!ミステリー界の話題を攫った超弩級エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • ハスミンこと蓮実先生は、ご自身の学級運営の障害となる問題解決の為に、彼の優秀な頭脳を使って、駆け引き・裏工作等々、工夫を凝らした活動に余念がありません。それでも、解決が難しい場合は、躊躇なくお相手の息の根をお止めになります。感情の一部が欠如しているサイコパスと思われますが、理想的学級運営や合理的学校マネジメント意識はお高いご様子です。
    遂に、担任している生徒数人が彼の裏の貌に気付いた事に憂い、クラスの生徒が集結して準備にかかっている学園祭前夜、彼らの根絶を決行されます。出席簿を殺戮簿と活用されたり、Good!バードウオッチングのごとく、殺戮数をカウンターに打ち込んだり、Great!果敢に対抗した生徒を褒めることも忘れません、Excellent! 完遂したかと思われた殺戮にほころびが見えた途端、一瞬にして精神異常者に擬態、Magniticent!社会復帰への望みをつなぐ?

    ラストの書き下ろし「アクノキョウテン」は、不覚にも、笑ってしまった。

    サイコキラーとしては、なかなかの博識で躊躇なく面白いです。学校を舞台としたバトルは、誰しも経験ある場所ですのでイメージしやすく臨場感があります。ですが、学校バトルは他作品も複数出てしまい、個性を出すのは大変だろうなあと思いました。

    • 1Q84O1さん
      おびのりさんの次の貴志作品に注目です!
      おびのりさんの次の貴志作品に注目です!
      2023/03/20
    • おびのりさん
      はーい。次は、新世界でーす。
      で、「開くの、今日、十時?」を外国人風に。
      はーい。次は、新世界でーす。
      で、「開くの、今日、十時?」を外国人風に。
      2023/03/20
    • みんみんさん
      ちょっとDVDで観ようかな?
      伊藤英明ハスミンで( ̄∇ ̄)
      ちょっとDVDで観ようかな?
      伊藤英明ハスミンで( ̄∇ ̄)
      2023/03/20
  • この作品は面白い!どこまでも異常で、常人には理解できない。貴志祐介さんはきっと普通であるのにサイコパス教師をリアルに創り出すのだから、表現力と取材力がすごいなと思った。

    上巻の始まってすぐに蓮実聖司が毎朝ベランダに鳴きに来る2羽のカラスのうちの1羽を駆除するシーンがある。手の込んだ仕掛けで感電死させた。学校に頻繁に苦情を言いに来るモンスターペアレントの家の猫よけのペットボトルの中身を全て灯油に変えた、運に任せて太陽光で火災を発生させる為に…。度の過ぎたいたずらかと思ってたら火を放って確実に殺した。そこから色んな違和感が募るっていく。ただの人気英語教師ではない?!

    全ての殺人に至る流れとその前後の無感情さ。日常の当たり前の事を当たり前にしたかのような言葉とユーモラスな表現。

    下巻最後の三池崇史さんの「蓮実聖司を愛する者として」の解説ではこの作品の魅力が存分に語られている。ただの大量殺人、サイコパス教師でない、彼が彼らしく生きる場所を求めた結果だと。作品を誰よりも理解してるだろう映画監督の作品をすぐに観たいと思いました!

    最後、蓮実が逮捕される時に下鶴刑事が感じた「こいつは、もう、次のゲームを始めている」が抜かりのない表現で好きです。

    • アンシロさん
      映画を観終わりました。
      「次のゲームを始めている…」はやっぱり意味のあるセリフになっていたのですね!「to be continued」がとっ...
      映画を観終わりました。
      「次のゲームを始めている…」はやっぱり意味のあるセリフになっていたのですね!「to be continued」がとってもいい感じ(^^)
      小説を読んでからでしたので細かい所まで理解できましたが、うまくまとめられてる作品でした。面白かったです(*^^*)
      2024/03/16
    • yukimisakeさん
      この作品はどっちも良いですよね!
      林くんの演技が上手すぎてびっくりした記憶もあります(^^)
      評価がすっぱり別れてますけど、個人的には凄く好...
      この作品はどっちも良いですよね!
      林くんの演技が上手すぎてびっくりした記憶もあります(^^)
      評価がすっぱり別れてますけど、個人的には凄く好きですので、アンシロさんもお好きなようで嬉しいですー♪
      2024/03/17
    • アンシロさん
      お恥ずかしながら林遣都さんを知らなかったのですが、今をときめく俳優さんだったのですね(^^)Wikipediaで調べて、大島優子さんと結婚さ...
      お恥ずかしながら林遣都さんを知らなかったのですが、今をときめく俳優さんだったのですね(^^)Wikipediaで調べて、大島優子さんと結婚されていたとは…笑。とても演技がお上手でした!

      評価が分かれるのは映画だけではストーリーが少し分かりにくい部分があるのと、気持ち悪いとか怖いって感想を持ってしまうとそれ以上受け付けなくなるからでしょうか?
      自分は原作も映画も面白くて、気に入ってます(*^^*)
      2024/03/18
  • 読み終えてぐったり(°_°)
    自分が期待していた想定の結末ではなかった。

    むかーしに見たバトルロワイアル?の映画を見ている感じ……Dragon Ashの曲が頭で流れて。

    上巻はハスミンひたすら怖かったが、下巻は、イライラ、いい加減にしろー!って思いながらも、生徒側のハラハラする気持ちに同感していた。

    サイコパスとは、こゆことなのか。
    やはり幽霊やお化けよりも、人間の方が恐い。
    _φ( ̄ー ̄ )

    • 1Q84O1さん
      メンタル固めなおしてくださいねw
      もうここまで来たら何が何でも読んでもらいたいです<(`・ω・´)

      表紙!?
      そんなものは外してしまえば新...
      メンタル固めなおしてくださいねw
      もうここまで来たら何が何でも読んでもらいたいです<(`・ω・´)

      表紙!?
      そんなものは外してしまえば新改正ですw
      もしくはブックカバーで隠しちゃいましょう!

      もしかしたら『黒い家』も意外とホッコリ系かも…(゚A゚;)ヒェェ~
      2023/02/09
    • なんなんさん
      表紙外したら新改訂とか面白すぎる!!笑
      この表紙の本を購入して自宅に置いとくのが恐いくらい、表紙こわいですよ?見てください!

      でも、もう読...
      表紙外したら新改訂とか面白すぎる!!笑
      この表紙の本を購入して自宅に置いとくのが恐いくらい、表紙こわいですよ?見てください!

      でも、もう読むしかないかも……(*'▽'*)?
      2023/02/09
    • 1Q84O1さん
      確かにこれはこわいですよねぇ…(゚A゚;)ゴクリ

      わかりました!
      そしたら、何か笑いがでるようなハッピーな本の表紙とメンタルが溶けても固...
      確かにこれはこわいですよねぇ…(゚A゚;)ゴクリ

      わかりました!
      そしたら、何か笑いがでるようなハッピーな本の表紙とメンタルが溶けても固めなおせれるように大量の保冷剤をお送りしておきますね!
      これで準備万端ですね( ´∀`)b
      なんなんさんガンバレー!!
      2023/02/09
  • 上巻とは打って変わり、バトルロワイヤルと化した展開に、全く別の作品を読まされている錯覚に陥った。

    また、バトル前はユーモアがある展開や工夫が見られたものの、バトル開始から結末まで、あっさりした印象に物足りなさを感じてしまったのだけが残念だったが、総じてハラハラドキドキさせてくれた作品であった。

  • 貴志祐介である。
    嫌悪感も超越して、爽快感か......

    上巻から一転、スピード感を持って一気にクライマックスへ進む。

    蓮実聖司という男の言葉には力がある、ということは読んでいて納得。こんな先生ならそりゃ人気あるに決まっている。

    蓮実の生きる世界は蓮実の為にあるべきである。
    彼は自らの生きる世界を求め、奔走することになる。

    蓮実は最後に笑っているのか。
    メッキー・メッサーのモリタートの口笛が聞こえる。

    以下ネタバレ有り(備忘録)

    P.176~
    行き過ぎた行為は自らを破滅に向かわせた。
    蓮実の行動と思考が極限の方向へ進んでゆく。
    彼の頭の中で可能性と不可能性が見え隠れし始めた。

    読者としても、まさか全員を殺すことになってゆくとは、展開として直球にもほどがある。

    伏線回収などの目立った見所はなく、ただただ殺戮が行われてゆくシーンが大半を占める為、驚きというもは少なく、惨たらしい描写は十分にムカムカさせてくれる。
    知的で冷酷な蓮実のイメージとは違う展開には、違和感があるのは否めない。なんだかな。

    下鶴刑事に関しては、ぐいぐいストーリーに関与して来るだろうと予想したが、蓮実の悪事のお膳立てに徹した設定に留まった。

    また保健室の先生である田浦潤子も少し謎めいている。
    恐らく、蓮実の狂気を少なからず感じていたに違いない。

    生き残ったのは3名。片桐 怜花、夏越 雄一郎、安原 美彌。彼らにとってあの一日とは。
    最後に、蓮実が逮捕されるまでの数ページに期待をしてはいけない。彼の全ては奪われるのだ。
    口笛を吹きながら。

    追記:
    巻末の章については、読了後にネットでレヴュー等を参照している際に、見解を出されている方がいた。
    なるほど、過去の高校の生徒である、佐々木麻美、栗栖こずえ、中嶋晴。
    こずえが蓮実を好きにならないように先手を打った麻美という生徒。今作の事件からトラウマのように蓮実を恐れる少年。
    『開くの、今日、十時(テン)? 』
    何を言うとんねん。

    読了。

  • 面白かった!
    教師がサイコパスの殺人鬼というホラーエンターテイメント
    主人公は高校の英語教師 ハスミンこと蓮実聖司

    いよいよ下巻です
    蓮実の真の姿に気が付く生徒たち
    一人は、カンニングの罠を仕掛けながら、逆に蓮実にやられてしまいます。
    結果、殺害されることに

    徐々に気が付き始めた生徒たち
    その中には、自分の淫行の相手も含まれ、彼女も殺害することに
    そして、この辺から隠ぺい工作もほころび始めます。
    結果、学園祭の準備に集まったクラス全員を殺害することになります。
    この辺がサイコパスなんでしょうね。全員殺害なんて考える?普通?

    夜に蓮実の殺戮が始まります。

    逃げ惑う生徒達、闘う生徒達、隠れる生徒達、しかしながら、蓮実は確実にその生徒達を散弾銃で仕留めていきます。
    生徒達の反撃を上回る対応ができるところが怖い..

    全員が殺されてしまうのか?
    蓮実のストーリ通りになってしまうのか?
    といった展開です。

    しかし、いくら散弾銃をもった殺人者が校内に入ってきたとしても、学校外に逃げ出すなんて簡単にできそうなものなのに...
    その辺はちょっと設定に無理があるかなと思います。

    とはいえ、エンターテイメントとしては十分楽しめました。

    ビデオみなくっちゃ

    お勧め

  • 下巻はサイコパス教師、蓮実聖司ことハスミンが大暴れ。

    ハスミンの計画が徐々にズレてゆく中、思い立った修正方法がクラス全員の40人を殺害すること。

    ハスミンは目的を果たすのに手段の善悪はまったく関係ないので躊躇なく殺しも行う。

    その様はまさに地獄でした。

    ですが、その表現がエグくはあってもあっさりなのと、現実味が良い意味で薄く不思議と恐ろしさはそこまで感じなかった。

    反撃を試みるも次々に死んでいく生徒とそれを追い詰めるハスミン、途中どちらに味方しながら読めばいいかわからなくなって交互に応援してた笑。

    サイコパスなんだけどカリスマ性が強いハスミンに毒される1読者になってしまった部分があって、私もサイコパスに足を突っ込んだ気分になりました( ̄▽ ̄;)

    設定自体は今読むには珍しいものではないがとても面白かったです。

    ハスミンの活躍がまた見たい。

  • 晨光学院町田高校・英語教師・蓮見聖司。
    そのルックスと行動から、生徒だけでなく、同僚からも慕われている。が、裏の顔はサイコパス。

    自分の邪魔をするものはなんであれ、排除…
    人を殺すことに何も感じない。

    ここまでやってくれると清々しい。
    ここまで人を殺しても、何か全然暗さを感じない。
    まるでスポーツをやっているかのように…
    ハスミン、バレないように、と思ってしまう。

    でも、ハスミン、もうちょっと上手くやれたのでは⁇
    今までやれてきたんだから…

    もっと計画的にやればよかったのに…
    突発的に排除しようとしたばっかりに…
    何も学校でやらなくても…
    クラス全員を排除の対象にしなくてはならなくなるなんて…
    なかなか難しい…

    ハスミン、死刑にならずに何気なく戻ってくるようは気がする…



  • メインイベントの後半戦。
    殺戮のシーンは当たり前の様に人の命が奪われるし、長編スプラッタと化している。全力過ぎて最早爽快だ。

    ビバ世界観。

  • この悪漢をどの様に退陣させるのか期待したけど、思ったような幕切れではなかったなぁ。大量殺人も思いつきのように感じたし、期待したキャラは次々に倒れるし、みやちゃんは生きてるし。。そういう意味では、期待を裏切られた物語ともいえるか。
    蓮見がサイコパスに至った経緯や心情の変化をもっと表現してくれていたら良かったのか?エンターテイメントとしてはありかもしれないけど、自分の趣向には合わなかったな。

  • 息つく暇もないほど一気に読んでしまいました。
    序章といいつつ、後半はだいぶ恐ろしくなってきたと感じていた上巻が
    嵐の前の静けさでしかなかったことを改めて知ります。

    生徒達の必死の行動も極限状態では無力にほど近く、
    様々な工夫が、いとも簡単に破られどんどん減っていく有様は
    敵さえ違うものの、高見広春「バトル・ロワイアル」を思い出しました。

    こんな大量殺人をあっさりやってのける蓮実聖司は、
    どう考えても極悪非道のサイコパスであることは間違いないのに
    どこか憎めないのがまた恐ろしい。

    なんでもできてしまうほどのキレ者なのに、
    殺人を躊躇してしまった自分の気持ちには気づけないような
    不器用さがそうさせてるのでしょうか…。

    それまでと一転、事件翌日からは一切の蓮実の心理描写がないところがにくいです。
    彼らを前に、サイコパスは一体何を考えていたんだろう。
    ゲームオーバーかと思いきや、次のゲームスタートの合図のようでとても怖い。

  • 読めば読むほど後半のスピード感が心地よい。
    恐ろしさを感じながらも、ページを捲る手が止まらなかった。

    残酷な描写が苦手な人にはおすすめできないが、耐性がある人には是非このスピード感を味わってもらいたい。

  • 高校の英語教師である蓮実聖司は、多くの生徒から慕われる人気教師。しかし、彼の周りでは次々と事件が起きて…。

    このミス1位、山風賞受賞ということで、期待を持ってずいぶん前に購入。上下巻で結構ボリュームのある本なので読むのを躊躇い長い間積読本になっていたが、ようやく読了。貴志祐介氏は寡作家だが、一つ一つの作品に一球入魂!という感じでハイレベルだと思う。「黒い家」や「クリムゾンの迷宮」など、ゾクゾクしながら読んだ記憶がある。本作もその類に漏れず、ページをめくる手が止まらない。特に後半の文化祭準備編のハスミン劇場たるや、息つく暇も無い。ただ、読後感は後味悪し。好き嫌いの分かれる作品だろう。登場人物が多いので、なるべく間髪入れずに読むのがオススメ。

    週刊文春ミステリーベスト10 1位
    このミステリーがすごい! 1位
    本屋大賞 7位
    ミステリが読みたい! 2位
    山田風太郎賞受賞(2010年)

  • おもしろかったー!

    クリムゾンの迷宮も好きだったけど、この人の作品はハラハラ読めていい!
    新世界は世界観が入れず断念したけども。

    面白く読めてた中でツッコミ所はやはり満載で。
    それもいいや!と思えるスピード感とエンタメのワクワクが。

    気になったのは、蓼沼がバカすぎてもうね。
    せっかく外にいたのに、助け呼びなさいよ。
    誰かが言ってたように『むしろ助けを呼びに行ってほしいんだけど。あいつの性格なら、自分で犯人をやっつけようとしそう。』って。

    あと、警察。
    無能すぎだよね。
    そんなツッコミところはあるけど、面白いです。


    誰が生き残るのか?
    最後までそれが気になって、けど終わらないで〜って気持ちで読み進めた。



  • えっ!?ハスミン....アクの...ある意味で衝撃のラストが2つ待っていました。

    説明
    内容(「BOOK」データベースより)
    とびきり有能な教師がサイコパスだったとしたら、その凶行は誰が止められるのか?

    晨光学院町田高校の英語教師、ハスミンこと蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAから信頼され彼らを虜にしていた。そんな〝どこから見ても良い教師〟は、実は邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。

    蓮実聖司は問題解決のために裏で巧妙な細工と犯罪を重ねていた。三人の生徒が蓮実の真の貌に気づくが時すでに遅く、学園祭の準備に集まったクラスを襲う、血塗られた恐怖の一夜。蓮実による狂気の殺戮が始まった!ミステリー界の話題を攫った超弩級エンターテインメント。

    デビュー以来、著者のテーマである〝心を持たない人間〟を中心に据えたピカレスクロマン。「悪の教典」を現在とするならば、その過去にあたる「秘密」、未来にあたる「アクノキョウテン」の小話も併録。解説は三池崇史(映画監督)

  • ブレイクダンスで人を殺した小説はこれが世界初ではないか?
    大層わたしは驚いた。ほかにもまじめにやってるのかギャグなのかわからないシーンが結構あったので、映画でどのように映像化されているのか気になるところ。※映画は未視聴。

    生徒たちは蓮実によって次々と殺されていく。
    ほとんどの生徒は「死体を隠すなら死体の山の中」理論で巻き添えを食った形で、蓮実のサイコパスぶりがいっそ痛快である。
    でも蓮実よ、ここまで慎重だったのに、2人をとり逃したのはあまりにもつめが甘いだろう。
    アメリカに蓮実よりももっとずっとヤバイやつがいたり、自分でも気付かないくらい気に入ってしまった女の子をひと思いに殺せなかったり、そういう完璧じゃなくて意外と人間くさいところが憎めないんだけれど。……なんて思わせてしまうところにも、蓮実のサイコパスとしての能力の高さがあるのかもしれない。

    ところで読み終わった後3日くらい、夢に蓮実が出てきて魘されました。
    ハスミンこわいよハスミン…

  • 他者に共感できない、気に入らない人を当たり前のように殺す(さも無視したりいじめたりするかのような程度に)人間が描かれる世界、があまりにも恐ろしくて、作者の鬼才っぷりを感じた。
    せっかく殺すなら、全員『卒業』させてあげないといけない---
    信じられない神経でありつつも、世の中のサイコパス、サイコはこういう感覚なのかもしれないと思うと納得できる部分もあった。

  • こ、怖い…だけれども目が離せない。この怖さがクセになる。
    下巻は一気読み必至です。

  • ※上下巻あわせての感想です。

    いつか読もう読もうと思いつつ、今更初読。
    身もふたもなく言うと、サイコパスの教師・蓮実が学校という「王国」で好き勝手する話。
    上巻序盤での蓮実の明るさと、だんだんと明らかになっていく冷血な本性の対比がぞくぞくします。
    また、下巻に入ると上巻とは打って変わって蓮実が殺戮の限りを尽くすパニックホラーのような展開になっており、これも上巻日常生活・静に対して非日常・動という感じで上下巻での落差、対比も面白いのではないかと思います。

  • 蓮実は、インスタントコーヒーを淹れると、応接用の椅子に座って目を閉じた。映画のようなイメージを脳裏に描きながら計画を細部まで再検討してみる。
    たぶん、やれる。‥‥‥いや、やれるはずだ。
    同じことを成功させた人間は、未だかっていないだろう。だが、外部からの侵入者とは違い、校舎の中のことは知悉しているし、マスターキーも使える。最後までやり抜くのに必要な頭脳と体力、精神力も備えている。
    それでも、さすがに躊躇があった。これまで一度として犯行に億したことはないが、今度ばかりは、やりすぎではないかという気もする。
    ‥‥‥しかし、他に代案がない以上は、やるよりない。(191p)

    先ず検討したかったのは、蓮実は本当に「完全犯罪」を最初から目論んでいたのか、ということだった。目論んでいた。しかし、躊躇は一瞬したみたいだ。

    私は映画の感想で「動機も方法も確かに完全犯罪に向かっていた。しかし、どうしてもクラス全員殺すのは、綻びが起きない方がおかしいのではないか。」と書いた。確率からすれば失敗する可能性は10%以上(←蓮実主観を想像)あっただろう。それでも実行してしまうこと自体、精神構造が理解できなかったのであるが、蓮実が自分の犯罪をスポーツに例えていた。普通では危険極まりない直滑降などのスキーをあえて行うスポーツがあるという。スピードと思い切りの良さが、彼の成功を保証しているらしい。この記述で「なるほどね」と思ったのである。

    自分には理解不能な精神構造を小説という形で追体験するのは、確かに小説や映画の役割であり、エンタメの使命だろう。AKBメンバーに秋元康がこの映画の試写会を強制させたのは、「アイドルとは疑似恋愛の対象である」という信条を持つ彼としては当然だったのかもしれない。メンバーの中でも一際知的で感受性が強い大島優子が「この映画嫌いです」と大泣きしたのは、この作品の本質を1番理解した証左だろうと思う。優子は、センターとしてこの映画の中の蓮実の役割を担わざるを得ない。もちろん、蓮実と正反対に「共感能力」が強い彼女はまるで自分がAKBメンバーを殺したかのような錯覚を覚えたかもしれない。また、後で秋元康の意図も察知しただろう。後でひつこい様に「この映画嫌いです」とブログに書いたのは、「人生をエンタメに徹せよ」という秋元康のメッセージに関して若者らしい「反発」だったのかもしれない。

    というような、ある事ないことをつらつら思わせてくれるこの小説はやはり見事なエンタメ小説でした。

    2012年11月29日読了

  • 桁違いのサイコパス小説で、恐怖や嫌悪を通り越して吐き気がしそうでした。(褒めてます)
    全く共感できないのに、こんなに引き込まれるのは何故なんでしょう…
    追いかけられるホラーとは違ってサイコパスを主人公にしているので、誰か生き残れるかのスリルが半分、主人公が計画を遂げられるかのスリルが半分という感じでした。
    共感性ゼロのサイコパスだからこそ、冷静沈着で自己分析がよくできているところがまた恐ろしいです。
    ラストはサイコパスではない語り手になって、そこでやっとゾッとできました。
    後半は特に一気読み必至です。

  • 人を殺める、、その理由が驚愕だ。
    それしか手段を知らないかの様だ。
    おぞましい。

  • まさかクラス全員殺すハラハラなシーンを全員分書くと思わなかったので斬新だと思った!自分もその現場にいるような錯覚が面白くて何時間もかけて我を忘れて楽しみました笑


  • スリラー映画は苦手だけど、活字ならなんとか、、そんな甘い気持ちで読みはじめたのが運の尽き。半端なく怖かった。読み終わったあと動悸がしばらく止まらなかった。

    悪の教典、上巻だけ昔ちょっと読んだことがあったが、通しでしっかり読むのは今回が初めて。

    上巻はまだ楽しみながら読める。沢山の生徒から信頼されるやり手サイコパス教師のハスミンこと蓮実聖司の視点で物語は進んでいく。
    大抵の怖い映画ではサイコキラーが何を考えてるか分からないから怖いのだが、悪の教典では彼の思考は全部地の文に描かれている。これがまためちゃめちゃ怖い!!
    彼が笑みを浮かべるポイントや困惑するポイントが変なのだ。到底理解できない思考なのだ。怖い、、怖いけど面白いよ、、。サイコパスの人の内面をしっかり描いてる著者の貴志祐介さん、、貴方もしや、、?ってなった。

    下巻の後半で起きる事件は、圧倒的な恐怖で胸が押しつぶされそうになりながら読んだ。生徒一人一人の名前が明示されながら殺されていくのだ。思い入れがあるキャラも、希望の光になりそうなキャラもどんどん。当たり前のように殺されていく。
    事件がひと段落してからも、3段構えで絶望に叩きつけられる。やっと言い逃れが出来なくなって、蓮実が精神異常者を演じ始めた時に私の心はポッキリ折れた。

  • 上に比べ、少しテイストが変わり、ほとんどが生徒とハスミンの対決でしたが、テンポよく読むことが出来ました。
    生徒の個性や、特技がしっかり伏線となっていて、ハスミンに挑むところは読み応えがありましたが、圧倒的サイコパスでばったばったと殺していくハスミンにはただただ恐怖でした。

    ラストの悪の教典の部分は、外国人の台詞さえもハスミンに見えてしまうという、後遺症を与えられてしまったという事ですかね…?

    サイコパス視点での、心情など斬新で、久々にスルッと読めた作品です。

  • 本の内容よりも「蓮実聖司を愛する者として」という、三池崇史監督の解説?のような、最後の章がおぞましかった
    なぜ載せたのかな
    ほんのわずかも共感できず薄気味悪いばかりです
    本はおもしろく(というと語弊があるけれど)読みました
    三池崇史監督の文章がすべてを台無しにした
    余韻もないし、やっぱり理解もできないし

  • 上巻オモロかったんやけどなぁ。
    下巻の展開、ザツすぎ。こういう風(キチガイ先生VS思春期高校生1クラス)にしたかったんだとしたら、もっと早めに散らかして行かないと、蓮実のキャラクター設定が勿体ないと思う。

    壮絶に頭が良くて、人の命を奪うことへの罪悪感を欠如したシリアルハンター。書きたい人物像は分かるが、その両立に失敗している。後半の彼はちっとも頭がよくなくて、前半に感じた魅力を全部かなぐり捨てている。

    いっそ、アーチェリー部の彼、剣道部の彼女、ドラムの彼、空手の先生、陰湿酒見らでアベンジャーズ的なものを結成させて、蓮実と取り巻きをサノス軍団に見立てて、活劇やった方がオモロかったんじゃないの?

  • 上巻があるなら下巻も買わないとと買った小説

    上巻と同じで気分が悪くなるような内容でした。

    目的の為には邪魔な物はすべて排除する。みたいな考えで次々と人を殺していくのは読んでて気分が悪い。
    そして殺人に対してためらいが、なく無感情・・

    この殺人教師が最後に捕まってもなぜかスッキリしない最後だった。

    上巻同様、気分が悪くなってもすらすら読める小説でした。

  • 下巻に来て、蓮実先生が暴走(^^;

    あー、もうこれは凄い。
    私の気持ちも、ここからはもうついていけない(笑)


    なのに、何でこんな興奮しながら読んでいるんだ、私(笑)

    次のページを読むのが怖くて、ここでやめよう、ここでやめよう・・・
    と思いつつ、やっぱり次を読んでしまう。

    もうここまで来て、最後はどうなってしまうんだ!?
    一体どうなるんだ!?

    最後までドキドキワクワク(ワクワクしていいのか!?)
    の物語。

    百面相しながら読み終わりました。

    面白かった~。

    満足!!!

  • TSUTAYAで借りたDVDみてたら、悪の教典の映画の宣伝されてて気になったので読みました。

    共感、という誰もが生まれながらに持つ能力が病的に欠落した蓮実のつくり出す「世界」は、理想と合理性でできている。故に、王国の実現のためには倫理観などは妨げとはならないし、人を殺すことにも躊躇はしない。
    彼は完全に冷徹な非人道的人間…
    …なのか?
    確かに彼のやり方は倫理的に間違っている。だがしかし、完全に血も涙もない人間だったのか?私は憂実と、あと美彌に最後の希望を見たい。
    首を握る指に力を掛けられなかった理由。それを分かることができれば憂実の"家庭教師"としての最も重要な"指導"は完了したのではないだろうか。
    あの時美彌を突き落していなければ、彼は最期の破滅へと向かわずに済んだのではないか。(まあ、どっちにしろやってはいけないことを今までやっているのだから裁かれるべきではあるが)
    しかし、憂実は死に、蓮実は美彌を手にかけてしまった。
    …憂実の復讐をした時点ではまだ人間みを非常に微弱ではあるが持っていたのかもしれない。が、最後の希望ともいえる美彌を突き落すという選択をした時点で、彼はもう後戻りができなくなった。
    …まあ、蓮実にとっての"家庭教師"を失ったといういらだちだとしたならば、復讐なのかどうかも分からないが。

    しかしながら、こんなに一般的に狂気的に思われることをしているにもかかわらず、蓮実はどこか魅力的な人物であるのが、この小説の一番のこわいところかもしれない…。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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