- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167900717
作品紹介・あらすじ
漫画や映画にもなった伝説の傑作。復刊中国古代、「墨守」という言葉を生んだ謎の集団・墨家。たった一人で大軍勢から城を守った男を、静謐な筆致で描いた鬼才の初期傑作。
感想・レビュー・書評
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清貧な軍師という珍しい集団の中の一人に焦点を当てた作品。実在したようだが、歴史の荒波に紛れてしまったようだ。
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独自の思想の下に戦国時代を生きた思想家集団「墨家」。兼愛と非攻を旨とし侵攻を否定しながらも、防衛戦争に関しては一流というなんとも変わった集団です。
驚異的な知識と精神で恐れられたにも関わらず、こつ然と歴史上から消えたというのもおもしろい。
本書はそんな墨家を題材とした創作小説で、タイトルの「墨攻」は「墨守」を転じた作者の造語だそう。
大軍の趙に攻められる小さな城を、たった一人の墨者が守るというエンターテイメントです。
わずか百数十ページの攻防戦ですが、城攻めや守りの戦術がおもしろく、墨家の矛盾や人間の悲喜こもごもも描かれ盛りだくさんな内容。スッキリと、しかし奥が深い1冊でした。
思想家集団ということですがとても実際的で、主人公の墨者である革離がお偉い思想家ではなく、小汚くも優秀な技術者のように描かれてるのが新鮮。
女も老人もかり出して組織と規律を作り戦う様は、素人集団がプロ集団に挑む緊迫感で胸が高まります。
一人の墨者の戦いの中で謎に包まれた墨家という集団にひとつの解釈を与え、またその矛盾と理想を描き、革離の運命とともに幕を降ろすストーリー運びが素晴らしい。
スパッと短くも大満足でした。 -
墨家という言葉をこの作品で初めて知った。
元々、中国に関しては奇書と呼ばれる白文か、「神仙伝」のようなものばかりを好んで呼んでいるためなのだが……。
老子、孔子、孫子等聞いたことはあれども、手に取ったことがあるのは学校の授業で仕方なく学んだ論語がいいところ。(現在、遅ればせながら孫子を読もうと積読の山に入っている)
実際、二千年近く本国でも存在が忘れられていたというのだから驚いた。この年月の長さはさすがに我が国とは比べることができないくらい歴史の深い国だと思う。
では墨子とは何かと言えば、戦争(あくまで守り)の職人だと作者は言う。
これは一人の墨子が小さな城塞都市を守る物語だ。正しくいえば一人対二万の戦の物語である。
ひたすらに墨家の教えに従って突き進む革子がいい。彼の中にあるのは墨家としての誇り。中編とも云えない短い物語だが読み終わった瞬間に、彼と共に長い戦を戦いぬいたような気がした。
楽しい時間を過ごすことができたし、終わりに近づくのが切なかった。 -
諸子百家の中で特に謎めいた集団、墨家(墨子教団)を書いた中編小説。デビュー作で第1回ファンタジーノベル大賞を受賞した著者は、いきなりその受賞作『後宮小説』で賞の方向性を思いっきり変えてしまったことで知られるが、この作品でも、いかにもありそうな古代中国を描くのに成功している。
墨子の教えは兼愛(博愛)として知られ、キリスト教と比較されたりもするが、同時に非常に強力な軍事知識・技術を持つギルド集団・戦闘集団でもあった。ただし、攻めることは禁止され、そこから「墨守」という言葉が生まれた。
彼らは軍事的経験から、物理、建築、ビジネスに関する当時としては驚異的な内容の数多くの命題を導き出している。教団内では術語にいちいち定義をつけ、論理的な会話に用いたが、その多くは、建築から出た用語だった。この辺りから、フリーメーソンと結びつけて語る論者もいる。
例えば、「円。一中心から同じ長さにある」「方。直線が四か所で直交するものである」と言った具合に、幾何学上の用語に厳密な定義をつけ、また抽象的な概念も定義づけていくことで、かなり高度な論理学をも構築した。 -
漫画や映画の原作にもなった時代小説。墨子というイマジネーションの膨らむ集団であるからか、小説からスタートしたこの物語は、それぞれの表現方法で展開する中でストーリーや世界観を大きく膨らませている。本書では、その原点を確認できる。
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新装復刊を受けて旧版を持っているのにも関わらず買ってしまった。
職人としての軍師。理詰めの戦争の話。華のある話ではないのだけれどタイトルの時点で既に最高に格好いい。 -
漫画 映画の原作本になる。
謎の墨家についての小説という事で期待したのだが、ウーン。
読んではいないが、漫画の方が戦闘シーン表現が面白く仕上がっているのではないか•••。
短い小説ゆえに、もう少し文章にも工夫があってもよい。山月記や李陵と比較するのは酷かもね。 -
漫画もよかった。