- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167910914
作品紹介・あらすじ
恋の”きゅん”がつまっています!別れた恋人と食べるアツアツの葱やき、結婚する気のない男との一泊旅行で食べた駅弁、女友達の恋の悩みを聞きながら食べる焼肉、浮気夫のために作るビフテキ……男女の仲に欠かせない「おいしい料理」と「恋」は表裏一体。すれ違いつつも寄り添おうとする男女の、せつなくて可愛くて、ちょっとビターな9つの恋の物語。田辺さんは恋愛小説の名手でもあることをしみじみと感じさせられる一冊です。目次●卵に目鼻●ずぼら●婚約●金属疲労●わかれ●夢とぼとぼ●ちさという女●どこがわるい●百合と腹巻
感想・レビュー・書評
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食と恋がテーマの短編集。これまで読んできた田辺さんの短編作品は昭和に書かれたものが多かったので、平成に発表された作品に「福山雅治」の名前が出てきてちょっとビックリしたが!個人的には平成の作品が、洗練されていて且つ大人の駆け引きの描写も読み応えがあって好きだなと思っていた。でも、「時代を感じるなー」と思いながらも、昭和のコテコテした作風も楽しんで読んでいる。そして、いつ書かれたものであろうと、鮮やかにこちらの予想を覆す展開がまぁお見事!それがクセになっちゃって、田辺作品を読み続けているのである。
特に本作は、田辺作品の魅力の1つでもあるフード描写が効いている。印象的だったのは「どこがわるい」に登場するビフテキ。鬼嫁な妻はモラハラすれすれで言動が不快だし、気弱な夫も煮え切らなくて苛々するし…なのに夜更けに作るビフテキが背徳感あって、ヒビが入ってる関係の2人が食すのに、美味しそうに感じてしまうという矛盾ね。
そして「百合と腹巻」の葱焼き。私は葱が嫌いなのに、美味しそうと思わせるなんてどういうこと!そういうところで田辺さんにやられてしまうのだ。
ちょっとレトロ感ある表紙イラストも可愛くて好きです。
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田辺聖子さんの本は元気が出るなー。大阪弁のポンポン弾む感じ、登場人物も憎めないし。ハイミス、離婚とかより、20-30代の片思い、駆け引きの話を書かせたらお腹抱えて笑っちゃう。
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登場人物と同年代ということもあり、親近感を持って読めた。いや、同年代ってだけじゃない。田辺さんが創り出す登場人物は、みんな弱みを隠さず開けっぴろげに語りかけてくれるからだ。
私も実はそういうとこあるなぁとか思いながら読んでいくうちに、登場人物に体温を感じて、いつのまにか感情移入している。
たこ焼きのソースも顔負けのコテコテの関西弁を読んでいると、今は田辺聖子さんの本を読んでいるという感じがして、それもまた好き。
この短編集の中では特に卵に目鼻、百合と腹巻きが良かった。
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田辺聖子さんの本は好きだなぁ。柔らかな大阪弁。読みながらイントネーションはこんな感じかなといつも想像する。いつもおいしそうなお料理の描写と登場人物たちの会話がたまらない。夢とぼとぼ、がかわいかったなぁ。わかれ、も良かったなぁ。なんだか幸せな気分にさせてくれる本でした。
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「恋ってどんなだったかなー」と思ったときに手に取った。
恋の部分がわからなくても、おいしいものの部分が楽しめればいいやと思って。
結論:おいしいものの部分を楽しんだ。 -
田辺聖子さんと言えば、登場人物が大阪弁で、リアルにその辺りにいるような男女のこれまたリアルな恋愛模様の名手、というイメージ。
描かれているのもものすごく日常的なのに、どうしてこんなにキュンとしたり胸がちくっとしたりするのだろう、といつも思う。それは自分もありふれたリアルを生きる者の1人で、自分も過ごしたり感じたりしたことのある風景だからなのかも知らない。
恋愛小説の小品集。タイトル通り全編通して「おいしいもの」が絡んだ「恋」が描かれている。
恋愛ものの作品に食べるシーンが出てくると、どことなく艶っぽさを感じるのは私だけではないと思う。知識として、食欲と性欲は繋がるものがある、ということを知ってはいるけれど、知らなくてもそう感じていたような気がする。
男女が仲睦まじく食事をともにするばかりでなく、会社におけるバレンタインチョコレートの悲喜こもごもだとか、パートナー不在の中で淋しく食べるごはんについても描かれていて、おいしいもの、と一口に言ってもそれぞれで、だからこそリアリティを感じる。
恋の始まり、ままならない恋、恋の終わり。腐れ縁のようになって他に目を向けてしまったり、だけどまたよりを戻したり。そんなどこにでもいそうな男女の物語が、大阪弁の効果なのかより可愛らしく感じる。
「夢とぼとぼ」と「百合と腹巻」がとくに好きだった。 -
2人の空間が楽しいからご飯が美味しい、よりも、ご飯が美味しいから2人の空間も幸せになる。
細かい心情が描かれてて、登場人物の体温を感じやすかった
とくに百合と腹巻きが好きかな〜 -
好き、を前提に、
好きなキャラと
そうでないキャラが色々登場して
お話によって、入り込め方にすごい差がでた。
でもやっぱりこの関西弁は
感情移入しやすいし
すごく細かい心情まで伝わるから
良いな、ってなって
一気読みになってしまった。 -
初読みの作家さんでしたが、平成初期の関西ノリな恋愛は親近感よりも珍しさを感じる。
バブルの名残と、亭主関白感、結婚に固執する感覚が強くて、なんか昔って大変だったねと思ってしまう。
短編の中では個人的には「夢とぼとぼ」が1番理想的な結婚生活だったけど。別居婚は女性はイキイキするけど、男性には寂しいものかな。それが疑いになるから、気持ちが離れてしまうんだけど。
今の男性は趣味も多くてSNSもあるから、主人公の旦那に共感する人は少ないかもですが。
「どこがわるい」はちょっとひやっとした。
確かに、怒るのって愛情あればこそだけど、皮肉と憎まれ口ばかりで、瞬間の苛立ちを全てぶつけるのは違うよね。。そこを混同して被害者ぶっても結局離れていくんだよなぁ。。と、振り返り反省をしてしまう。
地域も違うし時代も違うので、共感性は低くて物語として淡々と読める感じだったけど、ところどころ挟まる食べ物はやっぱり美味しそうだった。
時代も価値観も違えど、美味しいものが人との交流に不可欠なのは変わらないですね。 -
読むほどに、
おいしいものが食べたくなる、
呑みたくなる短編集。
ほんとにおいしいもの、
人の気持ちのどうしようなさ、
その愛しさ、情のもってゆきかた。
…大人にならないとわからないことは
いっぱいあって。
歳を重ねるのは、いいもんよ。
味わい深くなるもんよ。
と、一編一編が教えてくれる。