世界の99%を貧困にする経済

  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198634353

感想・レビュー・書評

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  • 題名の通り、現在の経済システムは99%を犠牲にして、1%が富を吸い上げるシステムになっていることを批判し、そうなってしまっている原因を明らかにした上で、いかにして公正な経済制度を構築すべきかということについて述べられている。
    感想としては第一にクエスチョンと議論が綺麗に整理されてわかりやすく、またその主張も一貫している。第二には、公的機関で働く上で重要な教訓も知ることが出来た点で有意義だったと思う。具体例の一つとしては、補助金を交付しても本来それを必要としている人に対して届いているか検証することの重要性が挙げられる。
    議論自体は明快でわかりやすく、読みやすいので、学説の妥当性は置いておいて、星五つとした。

  • 不平等は構造的に拡大される。社会は、高い代償を支払わされている。

    維持できているのは、上位に行けるかも、という希望がある-あった名残かも。しかしなかなかに反転は難しい構造。

  • 経済学教科書の延長で読んでみたけど、辞任時から続くスティグリッツの思想が近年の格差是正の潮流に乗っかって息を吹き返すごとく勢い良く書かれており、正直付いていけない。せっかくならばアファーマティブアクションと教育へのアクセス権、それと資源とレントシーキングの関連性をもっと掘り下げて欲しかった、経済学なんだから。

  • ■不平等なアメリカ

    A.米国では、政治が市場に影響を及ぼしている。
    その影響の下、米国の市場経済は今日、上層に利益をもたらし、残りに不利益をもたらす方向へ機能している。

    B.米国の金融界は、生産活動の効率性向上を名目に、グローバル化を推し進めてきた。
    だが、その本当の狙いは、労働者が権利と賃金に関する要求を行った場合、「資本を流出させるぞ」と脅し、賃金水準を低く抑ええることにあった。

    C.米国には企業統治法という、企業の経営陣にかなりの裁量権を与えた法律がある。
    この法律があるおかげで、米国の企業重役は他国の重役よりたやすく、労働者と株主を犠牲にして自分達の取り分を増やすことができる。

  •  本書の著者はノーベル経済学賞をとった著名な「行動する経済学者」であり、昨今のアメリカの現状を「格差の拡大」と「困窮から抜け出せないシステム」として厳しく告発している。
     アメリカでの「我々は99%だ」との運動を思い出すが、減速する経済成長の恩恵が上層のみに独占されている現状をここまではっきりと数字で明らかにされると、現在のアメリカの根の深い病根がわかる思いがした。
     著者は「グローバル化そのものの善悪ではない。・・・政府がグローバル化を運営できず、特定の集団だけに利益を与えていることだ」と言う。読んで、これはアメリカだけのことなのだろうか。日本においても同様なのではないのかとも思った。
     また本書では「第一にグローバル化はGDPを上昇させる。第2にグローバル化の利益がトリクルダウン効果で国民全員に行きわたる。ふたつの議論はいずれも正しくない」と断言している。そうなのだろうか。
     いずれにしろ、高い経済成長は多くの矛盾を覆い隠すが、どの国もこうも経済が停滞している現状では、格差の問題が表に出てこざるを得ないと思えた。
     本書は、アメリカ経済の現状に厳しい警鐘を鳴らすとともに、処方箋にまで言及しているが、とにかく読みにくい。これは、著者の論理展開が稚拙なのか、それとも翻訳に問題があるのかのどちらかと思えるが、どうも後者ではないのだろうか。
     著者のアメリカ経済への指摘は、多くは日本にもあてはまると思える。アメリカを数年遅れで追いかける日本において、本書は多くの問題を日本にも提供していると思うが、この読みにくい文章では、なかなか想像の翼を伸ばせないと思えた。ちょっと残念な本である。

  • 強欲な1%によって、世界の富が収奪されてしまえば、
    世界経済は、自滅しちゃうんじゃない?

    ま、一回滅んじゃって、リセットされれば良いとも思いますがね。

    暴動が起きて略奪されたくなかったら、
    社会貢献的な仕組みにしないとね~。

  • 現在の金融資本主義でなぜこれだけ多くの問題が起こるのか? その本質を理解するにはこの本を是非読むと良いですよ!

  • ITの世界ではアメリカンドリームが華やかな米国だが、もはやアメリカンドリームなど右派の神話として米国の暗部を暴き、悪の巣窟として金融業界を糾弾し、その矛先は法曹界やマスコミにも及ぶ。
    そして、機会平等な公正な社会こそが健全な経済の発展を促すとしてその指針を提示している。

    日本は米国ほど貧富の差は激しくないもののその傾向は強まっているとし、政府債務と高齢化は日本の方が問題は深刻とのステグリック氏の指摘もあり、考えさせられる。

  • 内容は表題の通りであり、私達もそれを実感することができる。リーマンショックに至るまでは、米国も日本も長い好景気を持続していると云われていた。しかし、どれだけの人が好景気を体感していただろうか。また、GDPが増大しているにもかかわらず、アジアから貧困がなくならないのは何故だろうか。
    本書は不平等な富の配分のメカニズムを明らかにする。本書によれば、金融セクターの責任は重大だ。云われてみれば、サブプライムローンなど、詐欺と変わらないではないか。我が国においても、規制緩和の名のもとに、多くの富が失われたのではないか。
    スティグリッツ博士によれば、現在の経済の停滞の原因は需要の停滞であり、有効な施策は公共投資であるという。経済オンチにでもわかる論理である。逆に、緊縮経済や消費増税などはますます需要の停滞に拍車をかけるばかりである。至極当然だと思う。特に、消費税の逆累進性については歴史的に実証されている問題にも関わらず、議論が尽くされている感じがしない。日本の全ての政治家はそれを理解しているだろうか。
    個人的には本年度読んだ本のNo.1にしたいところだが、翻訳が余りにもひどい。素人である私ですら気づく明らかな誤訳が幾つかあった。それで星ひとつ減らした。

  •  主にアメリカ経済の現状について書かれた本。市場の力を悪くするのも、良くするのも政府次第というところ。

     読んでて、ハジュン・チャンの「世界経済を破綻させる23の嘘」と共通することも書かれてた。この本と読み合わせるのもいいかもしれない。

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