マインド: 心の哲学

  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255003252

作品紹介・あらすじ

よく知られている理論、しかも影響力のある理論が、そもそも全部誤っているという点で、心の哲学は、哲学のなかでも類を見ないテーマである。本書の目的のひとつは、そうした誤った理論へ導かれてしまうやみがたい欲求から、真実を救い出すことにある。これまでにも他の著書、とくに『心の再発見』でこの課題に取り組んできた。だが、本書こそが、心の哲学というテーマ全体への包括的な入門書の試みである。

感想・レビュー・書評

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  • 心の哲学について、歴史的な変遷から著者の主張まで幅広く書かれている入門書。と言っても、その情報量は非常に多く、網羅的に書かれている点で読むにはそれなりの時間と覚悟が必要。
    ただ、基本的には一般向けで平易な文体で書かれているため、この分野の書籍にしては読み易いものとなっている。
    唯物論や二元論の主張とそれらに対する反論、著者の見解である生物学的自然主義の考え方など、理論的に概説されており、心身問題、意識、志向性、自己同一性など、心の哲学に興味のある人にとって良い導入となる一冊。

  • 言語哲学の大家であるJ.R.Searleが、人生の総決算として自身の考えを書き記した本。言語の働きを解明しようとしたら、心の問題を避けて通ることはできない、というのが、昨今の分析哲学の潮流となっているみたい。著者は、本書において、これまで独立に扱われてきた「物理世界」と「精神世界」の関係性を究明し、それらを統一的に扱う必要性を強調している。
    本書では、著者の主張に関連する50人以上の著名な哲学者・心理学者の思想を整理し、それらの1つ1つに対して賛否を論じている。読んでいて、理解できたことはそれほど多くはないが、著者の問題意識だけは伝わった(と思う)。

  • 二読目。前回読んだ内容は記憶から消えていたらしい。哲学とはなんなのか…という初心者目線から読んでみて、哲学って面白いのかもと思わせてくれた。一、二年後に三読目するかも。

  • 心の哲学の第一人者らしい著者による『心の哲学』の入門書。翻訳されたものではあったが、文章から分かりやすく説明しようという意図が伝わってきてとてもよかった。
    肝心の説明している中身についてだが、入門書とはいえやはり内容を理解するのに苦労した。
    心が二元論的に捉えるのは間違っているが、因果論に捉えるのも間違いでどちらも半分合ってて半分間違っているというような表現があるのだが、このあたりは混乱してしまっている。著者の立場は心、意識といったものは生物学的事象でしかなく(ここはうなずける)が、一方で物理現象に全て還元できるわけではない。というものだが、ここが一番混乱した。そのせいで二元論と因果論との区別まわりが怪しくなってしまった。

    とはいえ、全体として丁寧に説明はしているので、一回読んだだけでは消化しきれる量ではないというだけだったのだと思う。

    結論としてはよい入門書だと思う。

  • (むずかしい)

  • 悩んでいるときには読まない方がいいかも・・・。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 心の哲学の入門書にしてサールの代表的著作。デカルトから始まる心身二元論の系譜とその問題点を整理しつつ、心というものが哲学上どのように扱われてきたのかが把握できるようになっている。また語彙も平易であり、翻訳もこなれているため入門書としては十分な出来。が、肝心のサールの主張がどうにも飲み込めず、有名な「中国人の部屋」にしても志向性の話にしても、いまいち自分の中では消化しきれない。個人的な感覚としては、ダニエル・C・デネットが『解明される意識』で述べている「意識の多元草稿モデル」の方がまだ納得できたのだが。

  • 哲学/人間よりすぎてあまり興味を持てなかった。進化生物学に興味が出た。

  • タイトル通り、心の哲学についての筆者の講義録。
    心の哲学に関するほとんどすべてが網羅されていて、基本的な知識があれば「ああ、このことか!」と結びつくのも楽しい。
    (でも、基本的な知識がないところはすごく難しかった、恥ずかしながら)
    しかし、現在問われることの誤謬はデカルトからはじまり、回答は古代ギリシャ時代に提示されているなんて、哲学は因果な商売である。

  • デカルトの心身二元論以来、精神と物質、意識と身体の相互の関係は哲学の一つの大きなテーマになっていた。著者は意識を物理的存在としての脳細胞とその神経回路が構成するシステムであるとの立場を取っていて、これは自分も素人ながら、同じ考えを持っていて同感するところが多かった。

     問題は意識が脳で構築されていたとしても、それがすなわち意識の必要条件になるわけでも必ずしもないことである。囲碁は19路に白黒の構成があればいいが、これは碁盤が木であろうが、ディスプレイであろうが、紙であろうが何で出来ているかに依存しない。同様に意識もその構成が、電子回路で出来ていても同じことが実現する可能性があることである。かといって、脳に変わる意識の構成物質が見当たらないことも事実である。

     また意識では一人称の意識ということも問題になり、またその一人称も自我に目覚めた一人称と自我の意識のない一人称の問題がある。また三人称としてもわれわれは壁一枚隔てて向こう側にいるものが意識を有する者であるかどうかを判断する能力があるかという問題もある(中国語の部屋)

     筆者は恐らく同意しないであろうが、地球表面の構造に意識感じることもあるだろうし、またそれを意識と呼べるのではないかという疑問もある。つまり、惑星レベルの大きさの知覚生物が地球を観測したときに夜間に煌めき、時を置いて表面が幾何学的に変化し、接近すればミサイルを持って抵抗し、衛星を飛ばしてこちらを観測する物体はそれ全体として意識性を感じるのではないかということである。

     これらはカントの意識の統一性という論とも絡んでくるだろう。カントは原典では読むことは自分ではとうてい無理だが、和訳で精読する必要があるが、まだ自分はその巨峰を昇る段階には来ていない。

  • ※本書はメンタルヘルスや宗教に関する本ではありません。 どちらかというと、科学哲学的な内容です。意識とはなにか。自分はどのようにして意識をもって思考しているのか。機械(人工知能)に自己を自覚する意識を与えることはできるのか。こんなことを考えたことある人は結構いるのではないでしょうか。私も物心ついたころから、何度となく、この手の疑問について考えてきました。自分ひとりで考えていると、なんだかまとまりなく様々な考えや思いが浮かんでは消えるだけなのですが、本書を読むと、かつて自分が考えたこと、考えなかったこと、いろんなテーマが分類され、体系的に記述されており、読んでいて非常に知的好奇心をそそられる内容でした。とりいそぎ、この本を出発点として、積年の疑問を再考してみようと思っています。この本は何度も読み返す必要のある良書だと思います。

  • ジョン・R. サールは自著「心の哲学」で断言している。

    「心身問題」は伝統的なフレームワーク「心身二元論」と「唯物論」を捨て去れば簡単に解決すると…

    そして新たに、「因果的な還元/存在論的な還元」「一人称的な存在論/三人称的な存在論」という視点を導入している。

    志向性・自由意志・心的因果・知覚・意図的行為といった「意識」は、ニューロンの振る舞いによって引き起こされ、脳のシステム内でリアルな存在となる。つまり「意識」は、胃の消化や胚の減数分裂と同じ、単なる自然現象に過ぎない。
    また「意識」という概念は、主観的な特徴を理解すること(因果的に還元可能)だが、これを客観的な言葉で記述し直すと失われてしまう(存在論的には還元不可能)という性質を持っているのだ。

    つまりサールの唱える「生物学的自然主義」のベースは「唯物論」だ。ただし、既存の「モノ」の概念に主観的要素を加味した「条件付き唯物論」といえる。

  • 【NASA推薦・読んだらゲシュタルト崩壊必至・パラレル移動前に読みたい意識の不思議本厳選2冊】その1

  • 心の哲学について。哲学の古典から最新の脳科学までよくまとまっていた。

  • 何を思ったのか、久しぶりに手に取って読んだハードな哲学系の本でした。
    著者のジョン・サールに出会ったのは、ホフスタッター&デネットの『マインズ・アイ』の中に所収されている有名な中国人の部屋の論文を読んで以来、約13年ぶり。

    本のテーマは、意識、志向性、自由意志、心的因果、知覚、自己、など、「心」の周辺にある問題系であり、筆者はここでそれらの問題整理と解決に向けたアプローチを提示している。(各章ごとにたいてい"結論"が付いていますが、後で見返すときの役にはあまり立たない...)
    まず始めの準備として、心を扱う上で一般的な「心身二元論」と「唯物論」に代表される各主義を基本的に誤っていると宣言し、正しいアプローチはそのどちらでもない方法だと指摘している。専門家ではないので、実のところ筆者が意図する深さまで理解は到達していないのかもしれないですが、次のようなことなんだと思います。
    ・「心」というものは、脳内の神経生理学的な過程から生じる(因果的に還元できる) → 心身二元論は×
    ・「心」というものは、因果的に還元できるが、存在論的には還元できない (一人称と三人称とでは、存在論的な位置が異なるので、一人称の話を三人称の言葉で語ることはできない) → 唯物論は×

    このような考え方をベースにして、各問題系の解釈に挑んでいます。

    本の中でもあったように、この辺りの問題は近年に脳神経生理学から得られた知見が非常に貢献しているのだと思います (本で言うとオリバー・サックスの『妻を帽子と間違えた男』やラマチャンドランの『脳の中の幽霊』など)。そう感じるために求めて読んでいるような気がしますが、改めて人間てまあ不思議なもんだな、と思います。

    また、一人称/三人称の部分は『探求II』あたりのころの柄谷行人の議論を思いおこさせます(「この私」の"単独性"について議論したあたり - 久しぶりに読み返してみてもいいかな)。

    全体としては知的刺激性は十分。正しさについては判断できる範囲ではない。面白さは、...まずまずですかね。関連する問題群について網羅的にカバーしようというところもあって、ちょっと読むのがしんどいところも正直ありました。

    ということで星4つ。

  • 読み通すのが大変だったが、なかなかよい心の問題への入門書です。入門書といってもかなり難しい内容で、とくに志向性の問題はぼくにはまだ未消化。しかし、生物学的自然主義や、心身問題を因果論的還元と存在論的還元に組み替えて論じるところ、そこに一人称的存在論という心に特異な存在論が関わることなどは、比較的容易に理解できます。また、認識可能なのはセンスデータだけだという論に対して、発生論的誤謬や物とその像の類似概念が意味を持たないことなどの概念で論駁しているところは面白いです。しかし、無意識概念の混乱、自由意志の謎、などは残されたままで、やはり心の哲学の深みを感じます。とにかくサールは、常識的な確信を大事にしていて、科学的世界と日常世界の分離などないことを示そうとしていて、強靱な思索の力を感じます。訳者たちが書いた『心脳問題』もなかなかいい本でした。『心脳問題』の方が、心の問題の「出口なし」の状況をつきつめていた点は興味ぶかいが、社会論の方へ転換してしまうのがちょっと残念だったので、こちらを読めば、もっとディープな心の哲学を考えることができます。

  • 脳科学の観点を盛り込んで、意識とは、心とは何かを問う作品。
     科学は追い求めすぎると、人間を支配してしまうのではないか、そうならないためにはどうすればいいか、実際に我々の「心」は存在するのだろうか。そのような問いに対して、肯定的、否定的両側面から考察した上でさらに読者に疑問を投げかけている。意識や心についての考えを構築する手助けをしてくれるような内容。

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ジョン・R.サールの作品

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