資本論 (3) (国民文庫 25)

  • 大月書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272802531

感想・レビュー・書評

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  • 資本論第一巻の最終部分(マルクス本人が書き記した箇所はここまで)。第三巻では資本の蓄積について主に焦点を当てる。ここまで一通り読むことで、資本主義社会の仕組みとは何かをとりあえずではあるが把握することできる。それにしても、『資本論』が今なお読まれる、とくに昨今のように社会情勢が危ういとき(資本主義社会が不安定なとき)に参照されると思うと、この本の特異性がよくわかる。今後、資本主義社会が続く限り、この本はその社会の分析のために読まれるであろう。

  • 労働者は給料を得るために働くだけでなく、資本家の剰余価値を生み出すためにより多く働かなければならない。
    原始的な世界では、労働者は、自分の生活が賄えればよかったので、それほど働く必要はなかった。しかし文明が進んで、労働者は自分のためだけに働けばよいというものではなくなってしまった。

    どうやらマルクスが主張しているのは人々が均等に労働することによって労働者階級に自由な時間が生まれるというものらしい。

    労働者が仕事に携わる時間や賃金は資本家が決めており、労働者はそれを受け入れるだけだ。作業時間が減れば賃金も減る。そういった労働者の生活は全て資本家たちに牛耳られている。

    マルクスの時代、労働者は時間給と出来高制のいずれかの支払い体系だったようだ。そのどちらにしても労働者は大して儲からない。また中間業者の存在にも言及されている。要するに中抜きされるのだ。これは今もある話だ。

    当時のイギリスでは1つの工場で複数の事業を労働者が兼業している場合もあったようだ。また、ロシアにおいてもイギリス風の過酷な工場があるという話が出ている。こういった状況は、イギリスが特徴的なのだろうか。もしくは少なくとも欧米諸国は皆似たような状況だったのだろうか。

    労働者たちは、自分たちの先々の労働を前払いされていた。資本は、つまり商品を売って得たお金は、工場主、資本家、地主などいろいろな人たちに分配されて再生産される。

    労働者たちは、資本家から支払われる給料で、最低限の生活をしていた。それは家畜が資本家を儲けさせるために食べ物を食べるのと同じで、労働者たちの利益になるわけではない。かろうじて生きて、労働力を再生産する、そのための金なのだ。

    資本家たちは、最初は粗末な暮らしをしていたが、収入が増えるにつれて、ぜいたくな暮らしをするようになっていった。逆に労働者たちは、パンの値段が下がれば給料が下がるといった調子で、給料が安定しなかったし、いつも最低の賃金しかもらえなかった。

    人間は宗教では自分の頭の作り物に支配されるが、同様に資本主義的生産では自分の手の作り物に支配される。マルクスは神を信じていなかったのだろうか。

    資本が、いかに拡大していくか。つまり他社の買収であるとか必要に応じて新しい技術が発展するとか、そういった話。労働者の待遇と言うものはそんな中でも良くなる事は無い。失業者が増えたり減ったりするだけだ。

    資本の規模が拡大したり減少したりすると、あおりを食うのは労働者である。資本が拡大すれば働いていなかった労働者たちが搾取され、資本が減少すれば解雇される。
    資本家たちの主張としては、自分たちは労働者に対してできる事は何でもやっている、後は自分たちでやってくれと言うが、それは資本家の都合だ。
    資本と言うものは、誰かが困窮すると誰かが豊かになる。シーソーゲームだ。そして困窮するのはいつも労働者だ。

    資本の増加と貧困層に対して。資本の増加によって貧困層の貧しさは多少緩和されたと専門家が主張するが、マルクスはそれを批判する。
    要するに資本家は、自分の立場でしか語らないのだ。

    労働者たちは貧しい中で、さらに貧しくなり、資本家たちは、自分たちに都合の良い契約で、労働者を搾取する。

    労働者たちの厳しい生活が描写される。そこでは、人々は、粗末な家に押し込められて、その家賃は支払わなかったとしても、給料の中に含まれている。つまりそれだけ給料が安くなるのだ。
    病気が蔓延しており、対策は講じられない。
    彼らは家賃として給料から天引きされる額が非常に大きいそうだ。
    犯罪者が懲役刑を受けて刑務所で与えられる食事は、普通に働いている貧しい人たちよりもはるかに良い。そして彼らのつまり犯罪者たちの労働は貧しい人たちの半分だ。

    労働者たちは粗末な小屋に過剰な人数で押し込められ、病気が発生すればすぐに蔓延してしまう。生活のモラルは低下し既婚者も未婚者もみんな一緒に寝ている。
    労働者たちの生活は乱れており、私生児もたくさん生んでいる。そして仕事がなくなると他の場所に移民する。その移民の料金が生活を潤っている人もいる。

    資本の歴史がどのように変化していったか過去の表現などをもとに描写していく。どうやら、労働者の状況が悪くなったのはそれほど昔のことでは無いらしい。もともとは労働者にも土地が与えられていた。しかしそれはやがて与えられる土地が小さくなっていき。最後には土地が奪われた。
    過去において貧しい人々は奴隷的な生活をしていた。マルクスの時代には、奴隷ではなくなったが過酷でなくなったわけではない。

    国が繁栄するために人民がどれだけ犠牲になったか、どれだけ非道なことが行われたかと言うことを述べている。歴史の教科書で学んだ事は、背景にこんなことがあったのかとわかる。

    イギリスの資本家たちが海外に移住する話。彼らは海外に移住するが、そこには労働者たちが自由に暮らせる条件が揃っていた。資本家はそこで嘆く。

    労働者たちは、働いて金を貯めて、海外に自分の土地を買って、資本家になることができる。それは理論上はそうなのであって実際には不可能だ。

  • 第三分冊は主に拡大再生産とそれに伴う失業のメカニズムについて述べられる。剰余価値は資本に転化されることで資本の蓄積がなされる訳だが、生産性の向上や資本同士の集積により、資本が吸収する労働力は減っていく。その結果生じる相対的過剰人口は失業者となるのだが、この失業者は産業予備軍として新たな産業が生まれた際の労働力となる。つまり失業は資本主義的生産様式の必然であるが、この失業者を利用して資本は更なる拡大を続けていくのである。

    この相対的過剰人口はこれまでも絶対的人口減少をもたらしてきたが、それは植民地への移民という形を取ることが多かった。現代日本においては「征服する土地がない」ため未婚という形を取ることで、相対的過剰人口を解決しようとしている。

    要するに引きこもりも転職もそう目くじら立てて騒ぐなということだ。l

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著者プロフィール

カール・マルクス(Karl Marx):1818-83年。ドイツの経済学者・哲学者・革命家。科学的社会主義の創始者。ヘーゲル左派として出発し、エンゲルスとともにドイツ古典哲学を批判的に摂取して弁証法的唯物論、史的唯物論の理論に到達。これを基礎に、イギリス古典経済学およびフランス社会主義の科学的、革命的伝統を継承して科学的社会主義を完成した。また、共産主義者同盟に参加、のち第一インターナショナルを創立した。著書に『資本論』『哲学の貧困』『共産党宣言』など。


「2024年 『資本論 第一巻 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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