浅草蜃気楼オペラ

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299052384

感想・レビュー・書評

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  • 当時のことをもっと知りたくなった。

  •  歌劇女優憧れて上京し、帝劇に入り、ローシーの厳しい指導の元、夢を追う妙子とヴァイオリンで父親の病気の治療費を稼ぐハルが出会い、2人で歌劇ブームの大正の浅草を駆け抜けるお話。

     大正の当時の歌劇界が舞台の本作品。

     歌劇ブームの浅草や今では考えられない理不尽さのある大正の日本を知ることのできる1冊だと思います。

     オペラとは書いてますが、イメージとしては今でいうところのミュージカルかな?イメージとしては。

     オペラとミュージカルの違いを説明しろと言われると難しいですが、何となく読んでいて思うのはミュージカル方かなぁと思います。

     そんな本作品ですが、今では信じられないような理不尽がバンバン起きます。

     ただ、その理不尽、本当に大正特有なのか?というと恐らくそうではないのだろうなぁと思います。

     例えば、本作品は大正の価値観なので女は結婚して子供を生む、男は長男なら家の跡を継ぐという考えが当たり前です。

     本作の言葉を借りるなら「生まれ」に縛られるという事態が起きています。

     古い!とか思うでしょうし、今はそんなことはない、女性だって大学に進学してるし、社会でだって活躍しているじゃないかと言うかもしれません。

     しかし、今でも私達は「生まれ」に縛られているという側面はあります。

     例えば、最近の流行りの言葉「親ガチャ」。

     生まれたときの両親で受けられる教育や境遇が違うということからこのようなことが言われていると思うのですが、時代がかわっても「生まれ」に縛らるという例ではないかと思います。

     また、今私達は日本国憲法で人権が保障されていて、ある程度自由にいろいろなことができます。

     それは形式的には男女関係なくです。

     しかし、憲法や法律は一旦おいておいても、仕事をしている以上は組織や人間関係で守るべき暗黙のルールを守らないといけないし、学校にいけば校則を守らなければならない。

     そういう意味では大正時代と比較しても今の私達の生きる世界も完全自由に生きていけるというわけではなく、結局、不自由の中で限られた自由の範囲内で日々暮らしていると思います。

     不自由の中の自由というか、なんというか…

     それでも私が私らしく生きるにはどうしたら良いのか?

     答えはきっと本作の中にあると思います。

     理不尽なことばかりヒロイン妙子の周りで起きてはいますが、それでも自分らしく生きることを考えさせてくれる作品だなと思いました。

     歌劇ブームはもしかすると本当に大正時代では蜃気楼みたいなものだったのかもしれないし、歌劇のことを現実を忘れさせてくれるものという意味では蜃気楼とは舞台そのものなのかもしれませんが、その蜃気楼の中を必死で生きぬいた妙子とハルを是非頭の中の大正の蜃気楼のような二人を思い浮かべながら読んで欲しい。

     そんな作品です。

     そして、どんなに辛くても歌や音楽があれば心を休めることができるかもしれない。

     大正は私達にとっては蜃気楼みたいなものですが、きっとその時代がかわっても良くも悪くも変わらないものがあるだろうなぁと思いました。

     

  • 以前、挫折したので、乾緑郎作品は、初・読了。

    らぶりいな表紙から、アタリをつけ
    女子の友情モノは大好物と、期待して読んだ。
    その通り!

    う~ん、でも友情ものとしてはどうなんだろう?
    ちょっと弱いかも。

    大正時代に人気を博した浅草オペラ史を縦糸に
    オペラ歌手を夢見る妙子の物語。

    印象に残るのは浅草オペラのあれこれ。

    実在の人物多数。
    浅草オペラの細かい歴史は知らないけれど、
    物語の重要なキャラである「でんりき」こと田谷力三って
    亡くなった時のことを覚えているわぁ~

    それから逗子の施設ね、リアルに思い浮かべられちゃうw

    今の時代の人々には遠い昔でも、
    私には大正って近しい時代なのかも。

    なんせ今や昭和レトロの世の中らしいけれど、
    わたしの時代は「大正レトロ」だもんね。

    乾氏、実在の人物を上手に配していらっしゃる。
    辻潤の使い方が秀逸。
    関東大震災後、大阪でのシーンは泣けた。

    ここ、辻潤を知らないと、この良さはわからないけれど・・・
    何の説明も余計なことがないところが、良い!
    ここだけで乾氏および小説への評価が⤴!

  • 大正時代の浅草〜上野〜赤坂界隈をメイン舞台にした歌劇役者の下積み苦労話しを中心に、女性の社会進出への差別やヤクザの陣取りなど当時の時代背景を知ることが出来た。物語は出来事が次々と落ち着きなく浅くガチャガチャ展開していきます。ゆっくりじっくり読みたい派には向かないかもしれないけど、大正時代の流行や雰囲気を味わえる小説は少ないので、私は街を現代と比較妄想しながら読めた点が良かったです。

  • まるで朝ドラ。

  • この当時の雰囲気を知るにはいいのかも。
    どんな芸能が流行ったのか、
    芸能に携わる人の人間関係、
    流行病やその対処。

    でも、誰かに感情移入して読むことができず。

  • 夢見た舞台女優として歩みを進める
    妙子が、ある日出会ったのは
    着物に女袴、おしゃれな断髪のおかっぱで
    あたまにちょこんとベレー帽を載せている
    自分と同じ年端ぐらいのハルちゃん。
    右に左に、楽しそうにステップを踏みながら
    ヴァイオリンを弾くハルちゃんとそれに合わせて歌う妙子との掛け合いは心に残る名場面。
    舞台が近代というのがまた雰囲気あって良い。

    出会いや別れ、恋模様やお家問題…次々と起こるそれはまるで人生の一部を見ているような。
    可愛い表紙とは打って変わってしっかり重めな内容。
    読み終えてから表紙を見てポカポカ。
    プロローグを見返してジーン。

  • 大正時代の歌劇、オペラを題材にした話。
    この作家さんは近代を背景にした物語作りが魅力的。

    妙子の真っ直ぐさやホロリとする読後感が好きな人にはおすすめ。
    ただ、私には妙子が眩しすぎる真っ直ぐさだった…。
    なのでやはり、「機巧のイヴ」の方がオススメなのです。

  • 表紙のファンシーさに反して内容はちょい重めな話だった

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。小説家・劇作家。2010年『完全なる首長竜の日』(宝島社)で第9回「このミステリーがすごい!大賞」を、『忍び外伝』(朝日新聞出版)で第2回朝日時代小説大賞を受賞しデビュー。2013年『忍び秘伝』(文庫化タイトル『塞ノ巫女』)で第15回大藪春彦賞候補。近年は作品の英訳版が発売され、中国のSF雑誌にも掲載されるなど、海外での評価も高い。『機巧のイヴ』シリーズ(新潮社)、『見返り検校』(新潮社)、『僕たちのアラル』(KADOKAWA)、『ツキノネ』(祥伝社)、『ねなしぐさ 平賀源内の殺人』(宝島社)など、著書多数。

「2020年 『ドライドックNo.8 乾船渠八號』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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