- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309026954
作品紹介・あらすじ
羽田⇔台北――空港を舞台に鮮やかに浮かびあがる10の人生、そして新しい生のかたち。いま最も注目される気鋭作家の飛翔作。
感想・レビュー・書評
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私が中国語勉強中で、台湾にも興味を持ってるせいか、すっごく興味深くするする読めた。
ピンインや簡体字繁体字がナチュラルに出てくるので苦手な人は苦手かも。逆にわかるとふむふむ度合いが上がる。
戒厳令下の台湾の話もちょっと出てきて、最近白色テロとかを知ったばかりだったので、台湾をもっと知りたいなと。
最後、謎にスペイン語のいつかまた台湾に戻って来たいな、で涙でた。私よ涙腺が謎(笑)たぶん、遠い地に来てまた来れるかな、もう来れないかなという感情に猛烈に共感したらしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は、空港を行きかう人々の雑感10編による「空港時光」と、著者の台東旅行のエピソード「音の彼方へ」の、二部で構成されている。著者は台湾国籍を持ち、主に日本語を使って生活してきた。彼女が様々な場面でアイデンティティーの問題に突き当たる様子が、日本語、中国語、台湾語の「音」を交えながら語られる。言葉や旅行に興味のある私にとっては貴重な一冊となった。
自分の立場は最初の短編「出発」の大祐に近い。第二外国語のクラスで出会った「かのじょ」から「ふつうの日本人に、自分のなにがわかる」という言葉を浴びせられた場面では、自分が言われた気分だった。大祐の出発はその意味を理解するための第一段階と言えるかもしれない。
「あの子は特別」には、台湾の人々から見た日本人の「群れる」特性が描かれ、無意識の行動に気づかされた思いだ。「ススム」のその後を見てみたい。
父母よりも上手な日本語を話す祖父母からは、時代背景を考えさせられる。いとことのコミュニケーションがたどたどしくて、「もし台湾で育っていたら」と考える主人公に対しては、返す言葉が思いつかない。あの大祐同様、自分にとっても相手を理解する第一段階である。
「空港時光」に登場する人物はいずれも関連性がなさそうだ。どこかですれ違っているなど、つながりのある設定だったらもっと面白いだろうに。ミステリー好きの私の勝手な希望である。 -
羽田⇔台北。空港を舞台にした10人のショートストーリー。そこに絡んでくるのは日本と台湾の歴史、民族、言葉、アイデンティティなど。複雑な土壌にある関係性。台湾の人たちにはそれこそ人の数だけ日本に対して、中国に対してそれぞれ異なった考え、想い、生き方がある。もっと台湾のことを知りたい。そこから。温さんの本をもっと読みたい。
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著者はこの間読んだ『鉄道小説』の一編を読んで知った作家さん。台湾で生まれ、3歳から日本で育った台湾人で、この本はどの話も台湾と日本、旅やアイデンティティに関わる話だった。
台湾にも日本にも過剰に肩入れしないバランスなのは意識的なものなのか、ご本人のものなのか。
英米文学ではだいぶ昔から移民文学が盛り上がっていて、いろんな国にルーツを持つ作家さんがときに陽気でカラフルな、ときに悲哀を含んだ物語を紡いで文学賞なども取っている。
日本だと、韓国系の作家さんはいても台湾系の作家さんはあまり目立っていなかったかもしれない。もう何冊か読んでみたいし、また台湾に行きたくなったなぁ。 -
初読作家さん。空港、私も好き~と思い読友さんのレビューにも感化され読んでみた。年代も色々な設定の短編10編と温さんのエッセイ収録。温かい文体がとても良かった。台湾と日本の歴史はぼんやりとしか知らずにいたが、ほんの手始めを教えてもらった感覚になる。台湾は複雑な内政や多様な国民感情を抱えているのになんで優しいのだろうと読後に思う。
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国、民族、言葉、教育、、それらは否が応でも個々のアイデンティティの形成に小さからぬ影響を及ぼしているのだと感じる。その上で、主人公は個々人であって市井の暮らしが人をつくるのだと思う。
台湾のことを知りたくなる本。 -
読みながら、自分は台湾のことを何も知らないと思った。台湾のことを知り、いつか行ってみたい。
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すらすら読めればもっと面白いのでしょうが浅学の徒の悲しさ、つっかえもっかえ読み終えた。互いに親派の多い日本と台湾だけど実は加害側と被害側であったという現実をついつい忘れがちですよね。ここにはその点はストレートに出て来ないけど、水面下に少し透けて見える気がしました。友達は以前から 是非とも訪問すべき国 だと盛んに薦めてくれるのですが、いまだに行けていません 泣。
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空港を舞台にした短編数編とエッセイ一編。
「台湾生まれ、日本語育ち」である著者の言葉には、フィクションであってもそうでなくても、これまでの歴史と現代の社会が固く結びついている。
けれど、それは当然のことであるべきなのに新鮮に感じてしまうほど、日本の作品は(そしておそらく読者も、私を含めて)それらを切り離しているものが多く感じられる。
いずれ重いツケを払うことになるのではないかと、この頃感じていることをまた強く思った。
短編はどれもとても短いが、くっきりと余韻が残る。
作者の本は二作目で、もっと読みたいと思う作品だった。 -
日本、台湾、中国、それぞれの関わりの歴史、いろんな思いを抱えた人々が交錯する空港でのエピソード。
とても第三者的立場で読んだのだけど、浮かんでくる言葉は「郷愁」だった。