決定版 脳の右側で描け

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309291659

感想・レビュー・書評

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  • 絵が描けない人を対象とした本。実際に花瓶を書いてみたら、左右対象には書けなかった(言語システムが勝利し、視覚システムが敗北)。
    急いで描こうとすると、「ここが額」「ここが鼻」とか、言語化しながらそれっぽく描くので、ちゃんと見て描いてない。みて描こうとするときは「この曲線はどこまでか?」を気にしながら書いてる。本の中では、前者を「Lモードで描く」といい、後者を「Rモードで描く」という言い方をされている。
    ピカソの手前まで読んだ。
    =====
    美術の世界で、写実主義と呼ばれているものに焦点を当てている。人間の手、椅子、風景や建物の内部、人の横顔、自画像。
    大きな満足感は、本当に難しいことを乗り越えた時に得られるという考え方のもとに、難しい主題を選んでいるとのこと。

    著者の目的は、絵画教育が教養や娯楽としてだけでなく、創造的思考を高めるための知覚訓練としてもその意義が見直されるようになること。
    創造的な人とは、身近な情報を社会に役に立つ新しい方法で処理できる人のこと。
    作家は言葉を使い、音楽家は音符を、芸術家は視覚を使う。

    絵を書く事は、字を書くことと同じで、一つの技能である。
    洞窟画は文字が生まれる以前に書かれたもの。絵文字から文字が生まれた。
    地球上の生物の中で、物事を書きとめ、目に見えるものを絵で表現するのは、にんげんだけ。

    絵を描くという行為は、思考を伴い、知覚訓練の方法として効果的かつ効率的。
    デッサンという知覚の基本技能を、他の分野での学習や思考一般に応用することが可能。

    素描の基本技能を身につけよう。素描で使われる知覚の技能を、日常生活の問題解決に応用できる。
    見たものを書くために最低限必要な基本技能とは、エッジ、スペース、相互関係、光と影、ゲシュタルトのこと。

    1. エッジを知覚する
    一つのものが終わって、別のものが始まるところを見る
    2. スペースを知覚する
    周囲や奥に広がっているものを見る
    3. 相互関係を知覚する
    対象を遠近法によって正しいプロポーションで見る
    4. 光とかげ(明部と暗部)を知覚する
    対象を明暗の度合いによって見る
    5. ゲシュタルトを知覚する
    全体像とその各部分をみる

    脳が同じ知覚情報を取り入れるときに、左脳での認識と右脳での認識は異なる。
    左脳は言語的。右脳は視覚的。
    視覚的なものは、複雑視ぎて、言葉で表現しにくい物があり、ジェスチャーなどで表現することもある。

    右脳と左脳では、日常生活では、左脳が圧倒的に重んじられている。
    字が読めなければ、失語症や識字障害という名前がある。
    絵が描けないことを失描症や描画障害とは言わない。

    読むことと描くことは、一対の技能。
    読む=言語的、分析的なLモードの技能
    描く=視覚的、知覚的なRモードの技能

    言語の優位性がある。
    左脳の世界では、名前がつけられ、数えることができ、時間が表示され、着実な計画によって、未来の不確実性が排除される。
    右脳の世界では、物事は文脈のなかに取り込まれ、複雑化した未来の見通しは絶えず変わり続ける。
    左脳は右脳が見ている複雑な全体像に痺れを切らす。抽象化された記号のようなイメージを描いてしまう。
    そうならないようにするためには、左脳が嫌がる作業を脳に課す必要がある。
    例えば上下逆さまのスケッチをするとか。
    左脳が理解できない作業をさせると、左脳はフェードアウトする。
    そうすると、左脳は、右脳を抑制しなくなるので、右脳の潜在能力が現れてくる。

    4章 花瓶と顔。
    4章 上下逆さまのスケッチ。左脳には理解できない作業。
    6章 エッジを知覚する。左脳にとっては小さくてとるに足りない細部をゆっくりと知覚しながら描く。
    7章 スペースを知覚する。左脳が拒絶する「何もないスペース」が重要。
    8章 相互関係を知覚する。左脳にパラドクスと曖昧さを突きつける。右脳は目に見えるものが現実だと考える。
    10章 明暗を知覚する。光は言葉で表現できない複雑さがあり、変動する形を作り出す。
    ゲシュタルトを知覚する
    右脳の閃き。対象を注意深く知覚し、各部分を相互関係と全体との関係において記録する。
    美しいものに喜びを感じる美への感受性に似ている。

    手強い邪魔者は左脳。
    描くべきではない理由をどんどんと上げてくる。
    スーパーに行かないと。
    母親に電話しないと。
    休暇の予定を立てないと。
    持ち帰った仕事をやらないと。など。
    上下逆さまにした写真を模写すると、左脳は意味がわからず、右脳が働き始める。
    とにかくはじめること。
    (脚じゃない)
    左脳がいないときの状態は、ゾーンに入った状態。
    携帯電話がなったり、ご飯ができたと呼ばれると、元の状態に戻る。

  • 素描をとることは、簡単に取りかかれることができるけれど、多くの人がその魅力を知らずに過ごしている。また、画を描くことが子どもの頃には言うまでもなく、誰でもが好きで夢中になってやっていたのに、成長するに連れて段々とやらなくなってしまう。それが学校教育の問題点のひとつで、創造性を育てられていない環境にしてしまっている、という指摘はそうだなぁと思う。
    ここで取り上げているのは、素描をすることは物をよく観察する力を身につけること、よく観察し描くことは左脳の働きでなく右脳の働きが優勢になるということ、それは無心になることであり、フローの状態である。
    それは現代の教育に求めらられている「創造性」を伸ばす方略に成るのではと思う。その観点からすると、「画がうまくなりたい」人のための本でありつつ、現代の創造性を高める教育をしたい教育者向けの本である。

  • 右脳開発を期待して読書。
    3Dのモノを2Dへと視覚情報を忠実に模写する際には右脳を使うとのこと。その脳の仕組みの解説と、段階を追っての練習法が記載されている。
    練習する事で右脳が開発されるのかどうか不明。
    どの練習も何時間も邪魔されない空間と、気力が必要。
    5日間合宿セミナーもあるよう。

    仕事やプライベートでの右脳の能力アップを目指すというよりは、純粋に絵を恥ずかしがらず描けるようになりたい人には有効な本だと感じる。

    2013年の第4版と比較したが、あまり上手く訳されていなかった。2021年の新装版の訳の方が断然良い。
    ワークブックにはピクチャー・プレーンや、ファインダーも付属(本書には手作りの仕方もあるので必要はないかもしれないが)してるらしく、併用もありか。



    まだ技術を練習をするまでの気持ちにはならずに保留。ただ物事を細かく見つめて正確に捉える脳の使い方は、やはり仕事や人生にも活かせる右脳開発力だとは感じるので取り組みたい。

  • 上下逆さまの絵を模写する実習で、左脳モードから右脳モードへの転換を引き起こすと、、、描くことに集中し、時間が経つのを忘れてリラックスする。言語的な左脳が休んでいるためか。瞑想状態に近いのか。でもこれは創作活動の最初の段階。(写真ではなく)絵を描くのは、自分独自の知覚(対象をどのように見て、どのように理解いるのか)を表現するため。自分独自の線、強弱、無意識の心の動き(つまり個性)がデッサンに反映される。絵を見る人は描かれたものだけでなく、描いた人についても理解することになる。

  • 写実的にありのままに描く技術は、知覚つまりものを見る方法を教えることで、読み書き同様誰でも習得できる。基本技能は、エッジ、スペース、相互関係、光と影、ゲシュタルトを知覚すること。左脳の言語による妨害を抑え、右脳でゾーンに入る。一般的問題解決や創造活動に応用できる。

    横顔の絵を見てもまず額・目・鼻などの単語で考えるのが普通?になるアメリカの教育ってある意味すごいと思いました。用紙サイズのフレーム付き十字マークの透明版を対象に向けて、水性ペンで輪郭をなぞるって、禁じ手のように思っていました。

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著者プロフィール

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の美術学部の教授を引退し、大学や美術学校等で定期的に講演をしている。UCLAから美術、教育、認知心理学の博士号を取得。TV番組や多数の出版物にて紹介されている。

「2020年 『色彩・配色・混色』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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