ビッグデータ社会の希望と憂鬱 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.04
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411828

作品紹介・あらすじ

情報技術が怒涛のごとく進展する現在、あらゆるものがデジタル化され、インターネットを通じて膨大なデータが日々蓄積されていく。結果、社会は否応なく変わりゆくが、私たちは大切な何かを失うことになるのではないか?…気鋭の大宅賞作家が、高度情報化社会の功罪と来るべき社会変革を検証する名著、大幅増補・改訂版。

感想・レビュー・書評

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  • 無料、お徳、便利、という理由で、どんどん増えていく手元のメンバーズポイントカード。同じく無料で、気軽につながれるから、という理由で始めたLINEやツイッター。登録、投稿した個人情報が、すべて吸い取られて、ビッグデータとして蓄積されている現実がよくわかった。便利さやお徳さと引き換えに、個人情報をさらけ出し、しかもその情報が、誰の手によってどう利用されるのかが、こちらからはよくわからないところに、不気味な恐さがある。さらけ出しても良い情報と、秘密にすべき情報を、きちんと意識して使い分けるようにしたい。

  • i-modeの迷惑メールの話とか懐かしいことがたくさん書かれているね。

  • 時間があれば

  • 2005年に出た本の増補改訂版。参加型ジャーナリズム、検索エンジンによるデイリーミー現象、個人情報、監視社会など、提示されている問題そのものは現在とあまり変わらない。ただSNSの普及による相互監視社会という問題がほとんど触れられていないところに、全体としては警鐘を鳴らすスタンスの本でありながら2000年代前半ならではの明るいインターネット論に通じるものを感じる。

  • 面白くなかった。古かった。

  • 情報化社会における個人情報やセキュリティの問題、コミュニティの分断についてジャーナリステックに記したもの。タイトルにビッグデータの文字があるものの、本書は2005年刊。内容はほとんど古いままで、各章に補遺としてその後の視点を付け加えている。いまから読むと懐かしい単語が並ぶ。Pagerank、オーマイニュース、mixi、Biglobe、RFIDなど。

    情報化社会において便利になると同時に、それは監視を容易にしている。しかも権力によって監視が強まるばかりではなく、民間企業の観点からも強化されている(p.346f)。例えば街頭の防犯カメラを使った権力による監視であるし、あるいは小学生が校門を通過すると保護者にメールが送信されるシステムなどは民間企業によるその例だ。著者はこうした技術によって失われていく「何か」--多様性や自由、主体性という言葉で指し示そうとしている(p.35)--への目配せを行い、情報技術によって我々は幸せになれるのかという問いを立てる(p.36)。

    こうした感覚は育ってきた環境によるのかもしれない。地縁や血縁を中心とする従来型のコミュニティに親和性を覚える人たちは何となくの危機感を覚えるのかもしれないし、ネットが可能にする新たなコミュニティの形を模索する人にすれば、希望の光と見えるのかもしれない。著者が(留保付きで)描く危惧する社会の姿は、どうもネットを始めとする情報技術がもたらすものというよりは、それによって強化されたものに見える。例えば、検索エンジンの結果のパーソナライゼーション。これによって人は情報へのアクセスを知らない間に限定されてしまい、偏狭な意見を持った分かり合えない集団が生まれると危惧している(p.100, 158-168, 172-175)。だがそれは先入観が身体を超えて拡張しただけだろう。先入観を持った人は何にしろ、自分の見たくない情報は見ないものである。

    ネット上を始めとする情報社会におけるやりとりは基本的には不信に基づいている。それは誰でもアクセス可能であるから当然である。そのために認証のシステムや監視のシステムがある。確かに情報社会はそういう意味では多様性を認めない。ここにあるのは不信を基盤とする社会である(p.303-307)。しかし、それは都市化や人口の流動化によるものが大きいのではないだろうか。この留保をつけながらも、著者は不信を基盤とするやり取りが実社会にも広がっていくことを危惧している(p.351-354)。ネットと区別された「実社会」という概念が自分にはあまりよく分からないが、地縁や血縁で結びつく古いコミュニティのほうが多様性を許容せず、コミュニティ外の人間に対する強烈な不信に基づいていたのではないだろうか。とはいえ、ネットがトクヴィル的な共同体を生むとは脳天気に既に信じられる時代でもない。

    こうした議論はもちろん価値のあるものであるし、重要である。しかし結論が見えない議論でもある。著者がここで記しているのは基本的に危惧であり、まさに「憂鬱」である。結論はどこへ行くのだろうか。本書の最後には、(監視や何でもかんでも記録されてしまうことからの)自由を保持するために(情報技術がもたらす)自由を制限しなければならないと示唆されている(p.372)。果たしてこれが著者の結論なのかどうか。そもそも、この二つの自由は相互排他的なものなのか。例えばちょうど今、PRISMを巡る騒動を見ているとそう感じる。

    情報化社会における問題点をさらりと読むにはいいかもしれないが、本格的に議論するには薄い。情報セキュリティの専門書であるとか、理論的にはフーコー、アーレントあたりの権力論が必要か。ロックの自然権を呼び起こす必要もあるかもしれない。

  • ビックデータに関するシントピックリーディング。

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著者プロフィール

森 健(モリ タケシ)
野村総合研究所(NRI)未来創発センター、グローバル産業・経営研究室長
野村総合研究所(NRI)未来創発センター、グローバル産業・経営研究室長。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)経済学修士課程修了。専門はデジタルを含むグローバル経営環境分析。共著書に『デジタル資本主義』(2019年度大川出版賞)、『デジタル国富論』(いずれも東洋経済新報社)、『グローバル・ビジネス・マネジメント』(中央経済社)などがある。

「2022年 『デジタル増価革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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