鞠子はすてきな役立たず (河出文庫 や 17-8)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309418353

感想・レビュー・書評

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  • 春に読むのになんかいい感じの内容だった。
    変わった考えの鞠子が 肩の力を抜いて生きている様子がとても心地よくて、読んでいてゆるく励まされるような感覚になった。
    こんな人になりたいな、とも思う。

  • 久しぶりに山崎ナオコーラさんの小説を読んだ。等身大の文体で、恐らくナオコーラさんが感じたこと、考えたことを丁寧に描写しているのが好きだ。ナオコーラさんは、世間の常識や暗黙の了解に疑問を持って、「こういう考え方があってもいいんじゃないか」と小説を通じて投げかけている気がする。
    本書で言うと、
    ・働かなくても、胸張ってご飯を食べていい
    ・趣味でも社会参加できる
    みたいなこと。

    自分にない考え方に出会うと、反発することもあれば、癒しや救いになることもある。ナオコーラさんはいつも私に新しい道を示してくれる。私がその道を歩むわけでもないけど、人生の選択肢が増えて気が楽になる。

    鞠子との生活を通じて、小太郎が少しずつ考えを変えて、人生の舵を大きく取る様子が読んでいて楽しかった。鞠子の、自由な、悪い言い方をすると緩くて世間を舐めているような考えを頭ごなしに否定しない小太郎が素敵だ。

  • 働かざるもの食うべからず、ではない、というとこか一言でいうと。「そもそもは世の中には働きたくても働けない人もいる。」「主婦は素晴らしいよ。地球のこれまでの歴史は、主婦が家を整えてきた歴史なんだ。」「世間にある「働いていない人を責める雰囲気』が嫌だな」「とにかく、『働いている人だけが、えらい』っていう空気が漂っている。」という鞠子の言葉が響いてくる。そしてそんな鞠子の言葉、行動にふれて、父から強く「働かざる者食うべからず」を刷り込まれてきた小太郎が、だんだんと変わっていき「そうだよ。働かない人も社会に必要だ。働かない時間も人間に必要だ、と考えを改めたんだよ」(p.232)という境地にいたるまでが軽やかに描かれている。そううまくいくかよ、と言いたい人もいるかもだけど、違った視点でとらえてみたら、という示唆をくれたことが重要で。

  • 鞠子の考え方や生き方が良いなぁと思った。自分は地方暮らしだが、肩の力は入りっぱなしでもっと息がしやすい生活をしていこうと思った。

  • 2023.4.6読了
    鞠子の生き方いいなぁ、楽しそうだなぁ。
    自分も楽しく生きたい、どうやったら楽しくなるのか…と考えている時点で、その考えにとらわれていることに気づく。
    苦しんで生きよとも楽しんで生きよとも言わず、ただ自分がしたいことをすればいいんだというのが鞠子の考え方。つまり、究極に主体的なのだ。
    まずは、あまり深く考えないところからやってみようかな?

  • 今の時代には珍しい専業主婦志望の鞠子。自分の信念に揺るぎのないのが潔い。(やり過ぎの感はあるけど)
    でもそうやっていろんな趣味に没頭できるのも小太郎の稼ぎがあってこそ、というのを凡人なら考えてしまうところ、鞠子はびくともしないのよね。
    最終的に夫婦が仲良くいるならそれでいいし、他人と比べなくてもいいんだけど、
    でもやっぱり凡人は他人と比べてしまう。

  • まず鞠子の口調が「〜だわ」とかじゃないのがいい。

    「自分と異なる価値観の人と話すと心に風穴があくような気持ちになる。」根底で共感がないとそうもいかないかもしれないし、そういう余裕があるかどうかという見方もある。でも自分と異なる価値観の人と出会った時に、敵だ!と心を閉じてしまうか、風穴を開ける人が現れたのかも!と一旦受け入れるかの選択肢を持っておくのは良いことだと思った。

    お金を稼がない人を責めない、無理に受け入れない、でも良さを認める、そんな作品。

  • 最近ハマりつつある山崎ナオコーラさん。
    タイトルにすごく惹かれて購入。

    ワークライフバランス、働くことに対する価値観、趣味に対する価値観のお話。

    社会人になってから、手当の出ない残業ばかりで自分の時間が削られ、何度となく「働くために生きてるんじゃないのにな」と思ってきた私を肯定してくれた。

    小説では、主人公が何かに苦しみ悩み、成長していく様が描かれることが多いけど、山崎さんの小説は、自分の理想を形にしていることが多いのかな、という印象。
    だからいつも、心がほくほくと温かくなり、大丈夫、と少し思えるようになる。

    とんとん拍子すぎる節はあるけれど、人生を豊かにするために趣味を楽しむ余裕は持っていたいと思わせてくれた。
    最近、小説の執筆を趣味にするのも楽しそう、とPCに向かい始めたので、なおのこと読んでいてワクワクした。

    職場とプライベートの服装が同じようになってきたら、ワークライフバランスが崩れてヤバいらしいよ、という内容に、やはり私はヤバい、となった。

  • 私も刺繍が好きです。ゆっくりまったりと、時間を忘れてチクチクする事が好き。
    でもそれを仕事にしたときに、締め切りがあったり、クオリティーを求められたり、ニーズに応えなきゃだったり、そうすると楽しめないのかなあ、と思ったり。
    やっぱり趣味は趣味で、仕事にしたらそれだけ大変なこともある。
    だから好きなことを仕事にしている人は、すごいなぁと思う。


    趣味を無限にできる時間なお金があればいいのになぁ。
    鞠子と小太郎の真逆の価値観の2人の会話、小太郎の心の中が面白かった。

  • まさしく自立したくてもがいているのでなんというか。したいというより、しなければいけないのであって、鞠子みたいに恵まれているひとはずるいなと思う。甘えていられるのなら甘えていたいわ。鞠子に限らず、現実にもそういうひとはたくさんいるんだし。鞠子は小太郎に還してあげられているのだろうけれど(小太郎の感じ方としては)、まったく還していなくてその恵まれた状態でいられる人間だっていて、ずるいなあと思う。必死でじたばたしているわたしはずっとひとりだ。僻みですね。そうですね。

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著者プロフィール

1978年生まれ。「人のセックスを笑うな」で2004年にデビュー。著書に『カツラ美容室別室』(河出書房新社)、『論理と感性は相反しない』(講談社)、『長い終わりが始まる』(講談社)、『この世は二人組ではできあがらない』(新潮社)、『昼田とハッコウ』(講談社)などがある。

「2019年 『ベランダ園芸で考えたこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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