- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309419152
感想・レビュー・書評
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外岡秀俊『北帰行』河出文庫。
2021年に若くして亡くなられた作家で元朝日新聞社の記者であった著者による小説。
石川啄木に魅入られた北海道出身の主人公は、啄木の足跡を追い、北国を旅する。主人公の過去の記憶と交錯するように描かれる啄木の軌跡が、硬質で流麗な文体で綴られる。
地元の岩手県では石川啄木よりも宮沢賢治の方が親しまれているように思う。陰と陽。二人の生きた年月の長さや遺した作品の数だけではなく、その生き方の違いがそこに現れているようにも思う。
石川啄木と言えば、あのすました表情のしゅっとした写真が有名だが、その写真からは想像できないくらい自堕落で放蕩な暮らしを送っていたというから驚くばかりだ。
一方の宮沢賢治は県内外の様々な場所に出没し、真面目に仕事に打ち込みながら、作家活動を行いながら、精力的に歩き回っていたようだ。
啄木は生まれ育った渋民に余り人が来ないひっそりとした啄木記念館があるのと盛岡駅の『もりおか』という文字、幾つかの歌碑を遺すくらいで、宮沢賢治の常に賑わいを見せる宮沢賢治記念館や宮沢賢治童話村、多くの歌碑などに比べると明らかに人気や扱い方が異なるように思う。
定価1,089円
★★★★詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フィクションである物語と同時進行で啄木を主題とした学士論文を読み終えた印象を受けた。
この印象、デジャブを感じながら読んでいたのだか、読み終えてから「『悲の器』か」と思った。高橋和巳も物語と同時進行で法学や転向の論文を書き上げている様に感じたから。
二人とも河出書房の文藝賞を受けている、という共通点を挙げるのは少し牽強付会に過ぎるのかも知れないが。
紀伊国屋書店天王寺ミオ店にて購入。