- Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309462134
作品紹介・あらすじ
強力な統率力と強靭な抵抗精神でイギリス国民を指導し、第二次世界大戦を勝利に導いた歴史的な政治家チャーチル。本書は、歴史の舞台に直接参加した彼の手による、最も信頼すべき最高の第二次世界大戦の記録だ。深い歴史観に基づく著作活動によってノーベル文学賞を受賞した彼の歴史物語を堪能できる。第1巻は、一九一九年から第二次世界大戦勃発の翌年までを描く。
感想・レビュー・書評
-
第二次世界大戦を英国首相として闘ったチャーチル。時局を的確に把握する眼力に秀でていたのでしょうか。第一次世界大戦敗戦後に課せられた過酷な賠償により疲弊したドイツから勃興するナチス主義、ヒットラーの本質を早くから見抜いていたことが、第一巻に記されています。ドイツに対する宥和政策の気分が高まっていた英国にあって、時局に対する危惧を正しく主張していたチャーチルの勇気と気力には感心させられました。
ドイツがヒトラーのもと軍備を拡大する中、対抗する欧州の大国たる英仏が何ら実効性のある対策を講じなかった結果として、チェコスロバキア、ポーランド、北欧諸国が次々と攻略されてしまったことに、事態を傍観して相手を利する結果となることの危険性が良く描かれています。
本書では、英国首相チェンバレンや、スターリンの懐刀であったモロトフなどの人物像も詳しく触れられています。チャーチル自身については、時局の急転下であっても絵を描きに旅行に出かけたりと、精神の余裕を感じさせる一面を知ることができました。首相として戦時内閣を組閣後は、昼寝をして深夜までの激務に耐えていたといい、長寿であった彼の健康法を垣間見た気がしました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第一次世界大戦が終わり、ヒトラーが台頭し、オーストリア併合、チェコへの進出、ポーランドに侵略し、チャーチルが首相になるまで。ヨーロッパ側から見る第二次世界大戦に関する本を読むのは初めて。確かに翻訳は気になるが、全体的な流れが分かって良い。チャーチルは貴族なんだね。ノブリスオブリージュなんだね。そう言う気構えを持って生きて来た人じゃないと対処出来ないのかな。でもアメリカは違うか。ヒトラーの野望やスターリンとの融和。ムッソリーニなどが出てくるすごい時代。これに日本とアメリカが絡んでくるんだね。本当に世界大戦だ。
-
原書名:THE SECOND WORLD WAR,Abridged one‐volume edition(Churchill,Winston S.)
ノーベル文学賞
著者:ウィンストン・スペンサー=チャーチル(Churchill,Winston S., 1874-1965、イングランド、政治家)
訳者:佐藤亮一(1907-1994、青森県、翻訳家) -
1巻は首相就任まで
歴史記録に際しても修辞を駆使して
ギリシャ文明と中華文明の隔たりを感じる -
第二次世界大戦において大きな役割を果たした英国首相ウィンストン・チャーチルが後年当時の情勢を振り返って書いた伝記。第1巻は開戦前からチャーチルが首相の任に着くまでが記されている。
あくまでチャーチルの主観で書かれているものであるものの、第二次世界大戦が起こる経緯が、関係する諸国の政治家との交流の記録とともに説明されている。なぜ開戦にまで至ってしまったのか。防ぐ道はなかったのか。何が失敗だったのか。あとからなら何とでもいえる、と思うかもしれない。しかし、政治家の判断、国民の世論、他国に対する交渉と妥協点、防衛力と平和希求の関係性と様々な視野から語り出されており、当時の感覚を論拠としている以上、疑いなく重要な見解ではなかろうか。
軍縮や圧力をかけすぎない方向性の、開戦前のイギリスの国民の世論と、ネヴィル・チェンバレンの平和の求め方が、どこか日本的であると感じるのは私だけだろうか。現代は当時とは事情が違えど、安全保障問題を考えるうえで、最も現代に近い時代の大戦について知っておくことは不可欠なのではないか、と思わされる一冊であった。
チャーチルの文章は軽快なので比較的読みやすいものの、地名・人名がピンと来ない部分や、非常に詳細に記している点でやや読みにくい部分もある。第二次世界大戦前後の状況について、他書で概要を先に確認しておいた方が良いかもしれない。 -
素晴らしく格調高い名文。彼が有名作家のタレント議員として国会議員になれたのも当然かと思う。でも、これが知的障害で、まともな文章も書けなくて、まともな高校にも入学できなかったというのだから、ほんとに信じられない。
-
第二次世界大戦を前史から丁寧に掘り起こしチャーチル自身の危機感を記述しついには第二次世界大戦が始まりチャーチルに組閣の大命が下るまでをこの巻で描いている。やや回りくどい表現も多いが極度に難解でもなく歴史を大局から必要十分な情報量で書いています。良書。
-
新書文庫
-
かなりのボリューム
なかなか人物名とかヨーロッパの地理が頭に落としきれてないので理解できてない部分もあるが、そもそもこんな詳細な描写ができるのが凄すぎる。(何かで退任時に資料を全部もらったとか読んだ気も)
最後の首相になる部分は熱くなる -
[世界を決めた男の言]第二次世界大戦中のほとんどを英国の首相として過ごし、卓越したリーダーシップと戦略眼で連合国を勝利に導いたウィンストン・チャーチル。その激動に次ぐ激動の大戦期を自ら振り返った作品です。当時の国際情勢を知る上での超一級的著作であると同時に、チャーチルの人間像がくっきりと浮かび上がる一冊でもあります。訳者は、日本翻訳家協会会長を務められた佐藤亮一。原題は、『The Second World War』。
どんな時代に読んでも、様々な角度からの考査に耐え、同時に読者に対して有意義な教えだけでなく、読書の楽しみまでをも教えてくれる作品が古典と呼ばれるに足るものと考えているのですが、本作はまさにその条件を軽々と満たしているように思います。読み終えたあとに、「やっぱりチャーチルはとんでもない......」と感動の内に嘆息してしまうこと間違いなしの一作です。本書が持つ魅力は、何がすごいかを評するまでもなく、とりあえず読んでみてくださいとつい言いたくなってしまうほど。
チャーチルの当時の心情が余すところなく描かれているのも本書をして他の作品の追随を許さないものにしている理由の一つかと。もう引用したい箇所が多くてどれをここで紹介しようか迷いに迷ったのですが、やはり組閣命令を受けた晩のチャーチルの心境を物語る下記の一節を読んだ際には震えを覚えました。危機の時代においてここまで言い切ることができるチャーチルという人に改めて敬意と興味を抱くことになった読書体験でした。
〜私はあたかも運命とともに歩いているように感じた。そしてすべての私の過去の生活は、ただこの時、この試練のための準備にすぎなかったように感じた。〜
読んでよかったと心から思える作品に☆5つ
(注:本レビューは全4巻を通してのものです。)