ハローサマー、グッドバイ (河出文庫 コ 4-1)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463087

感想・レビュー・書評

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  • あとがきによれば、この本は英国の作家マイクル・コーニィにより1975年に出版された青春恋愛SFとのこと。日本でも、元々サンリオSF文庫から出版されていたとのこと。(サンリオSF!懐かしい。)
    舞台は、地球ではなく別の星。(普通の青春小説として読めてしまうけれど…)この星の気候や、生物相がストーリーに大きく影響している。気候変動により、人々は死への恐怖にさらされてしまう。しかし、政府は、一部の人間だけが生き残れるような方策を選択し、住民は激しく反発するが、破滅の時は近づいてくる…
    結構お勧めできる本。
    作者は2005年に亡くなられている。続編も執筆されているそうだけれど、まだ未訳とのこと。この本が売れれば、出版されるのだとか。読んでみたいな…

  • 休暇を過ごすため海辺の街を訪れた少年ドローブは少女ブラウンアイズと再会する。二人の恋と戦争の影、政府と人々の抗争、高官である親への反発。背景には、夏になると押し寄せる粘りのある海流や、他者の思念に感応する動物ロリンなどの不思議な生物。忘れられないひと夏の物語。

  • 夏の休暇を過ごすため、政府高官の息子ドローヴは
    自分たちの住む首都アリカを離れて、両親とともに、
    今年もまた港町のパラークシへとやってきた。
    この星の夏は短いがその間の日差しは強烈で、
    蒸発して濃度の高くなった海水が、南から北へと移動する現象、
    粘流(グルーム)を発生させ、豊かな漁獲を人々にもたらす。
    しかし一方で、冬の時期は長く厳しく、
    人々は寒さを忌み嫌い、心の底から恐れていた。
    一応は息子思いのようだが頭が固いドローヴの両親は
    自分たちの息子が港町の住人などという
    身分の低い連中と親しくなるのを嫌い、
    同じ役人の子供であるウルフという少年を紹介したりしたが、
    ドローヴが会いたいと願うのは、一人の少女だった。
    それはブラウンアイズ。
    去年の夏に、彼女が暮らすこのパラークシで出会い、
    一年間、ひそかに思いを温めていた相手なのだ。
    両親の監視が厳しく閉口していたドローヴだが、
    あるアクシデントが原因でブラウンアイズと再会を果たす。
    その日から、町の住人であるリボンという少女や
    その弟であるスクウィント、そしてウルフらとともに
    ドローヴとブラウンアイズはたびたび散策をする仲となった。
    やがてお互いの好意を確認しあい、愛を急速に深め合う。
    しかし、戦争の影がしだいに彼らを、町を覆ってゆく。
    町のはずれにある新缶詰工場や、
    目立たない場所に建設されている埠頭は何のための施設なのか?
    そして、壮大な機密計画が、ドローヴとブラウンアイズ、
    二人の間を引き裂くときがやってくる――。

    少年の忘れえぬひと夏の思い出を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説。
    何十年か前にも一度刊行されていたようだが、
    本書は待望の完全新訳版となっている。
    原題「Hello Summer, Goodbye」。

    SFなど今まで手に取ったこともないのに、
    どういう理由で本書を購入したのかは覚えていない。
    おそらくどこかのサイトで話題になっていたのを気に留めて
    書店で見かけたときに衝動的に購入したのだとは思うが。

    SFとはいえ、本作はそこまでハードなSFではない。
    あくまで物語の主軸はドローヴとブラウンアイズの恋である。
    しかし、SFとしての様々な設定が物語上欠かせない要素として
    見事な効果を発揮しているのは明らかである。

    価値観の狭い役人(両親)との対立、
    ブラウンアイズやウルフ、リボンたちとの関わり、
    そういったものの中で、ドローヴは少しずつ成長していき、
    またブラウンアイズとは愛を深め合っていく。

    その一方で不審な動きを見せている役人たちや、
    戦争についてのことが描写され、
    やがて訪れるであろう悲劇的展開を示唆している。

    情景の描写も巧みで、氷魔や粘流といった架空のものについても
    容易に映像が思い浮かぶくらいリアリティがある。
    しかし説明くさくてわざとらしい文章というわけではなく、
    あくまで物語の流れに沿った形でそれは行われる。

    これらのことはそつなく、ユーモアに富んだ表現に包まれ行われ、
    ストーリーテラーとしてのコーニイの手腕を思い知ることができる。

    終盤の悲劇的な展開までは裏表紙にも書かれていることだが、
    その果てに待ち受けている、希望を感じさせるラストシーンも良い。
    伏線もきちんと利いたうえでの展開なので気持ちも良い。

    SFと言うとあまりなじみのないもののように聞こえるが、
    読んでみて思ったのは
    「ラノベにどこか近いものがある」
    ということ。

    現実にはない架空の物事が多く登場する世界で、
    少年少女たちが悩んだり戦ったりする話。
    ラノベに多そうな話のタイプではないだろうか。

    まあもともとラノベというジャンルの起こりからして
    SFとの間には浅からぬ縁があるのだろうとは思うが、
    つまり本作のような物語は今の時代にも
    受け入れられる可能性が大いにあるということではないか。
    何しろ、世にあふれかえっているラノベより
    おそらくは圧倒的に面白いのだから。

    あまり知名度は高くない作品だと思う。
    しかしこういう物語が好きな人はそこそこ多いはず。
    凡百のラノベなどよりは断然面白いので、
    なかなか書店で遭遇することのない本だとは思いますが、
    興味があったら手に取ってみるのも良いかもしれません。

  • ジブリが映画にするのによさそうな内容だなーと思う一冊。
    SFで青春で恋愛で戦争とか。

  • 厳格な父、ヒステリックな母、どうにもならない僕と、膨らみ始める君の胸。まるで青春文学のスターターパックのような構成。

    舞台となる特殊な公転軌道を持つ惑星で、2人は選ばれたように恋に落ちる。だが、忍び寄る戦争の影、そして、陰謀。たった一度の愛の記憶を、2人は何度も反芻するがーー。


    「そしてこの夏のあと、僕たちは誰ひとり、前と同じじゃなくなっているだろう...それが怖いって思うところもある。すごくたくさんのものを、すごい早さで失っているような感じがして。」

  • 読後、スッキリ感と甘酸っぱさ感を感じられた。

    地球とは異なる惑星の独特の世界観がちゃんと描かれているし、
    少年の思春期にありがちな自己中心的な思考や葛藤と
    様々な経験をしていくことによる成長が読み取れるし、
    少女との恋愛と、惑星を二分する戦争を絡めたストーリーもグイグイ引きこまれるし、
    最後まで一気に読めて、とても面白かった。

    思春期の甘酸っぱさを思い出させてくれるSF小説としておススメ。

  • SFで青春で戦争で恋愛な小説。とても読みやすい。
    身分違いの恋とか、分かりやすい三角関係とか、古い体質に縛られた親とそれに反発する子どもとか、夏休みのちょっとした冒険気分とか。
    そういうものがいっぱいに詰まってるお話。
    少年少女は、誰しも気付けば大人になって、大人になることで失ってしまったものはもう戻ってこないんだな…と少ししんみりした。夏の終りのこの時期に読めてよかったと思う。

  • 政府高官の息子ドローヴは、海辺の町パラークシで、ブラウンアイズという少女と念願の再会を果たす。しかし町には戦争の影が迫りつつあった・・・。

    ずばり、片山若子さんの絵に引かれて手に取った。

    ここで描かれる世界は地球ではなく、登場人物も宇宙人なのだそうだが、描かれる彼らの心情は人間そのもの。淡い恋、親との確執、そして戦争・・・。
    時にあまりにもバカらしく軽薄に見える親や知人(親からは「お友達」になりなさい、と言われる同年代の男子)と、次第に渡り合う方法を主人公が見つけていく様は、ちょっとした「子供時代への別れ」が窺える。
    ここでの彼らの年齢は、地球人の何歳ぐらいなのだろう。私は14,5歳ぐらいかと思って読んだのだが、それでは幼すぎるだろうか?

    主人公にとってヒロインのブラウンアイズの存在があまりにも天使なところがちょっと引っかかるが、ぎりぎりのところで踏み留まっていて、恋愛小説としても結構楽しめた。
    というより、きっとこういう女の子がいればいいな、という理想を形にしたのがブラウンアイズなのだと思う。恥ずかしがりやだけど能動的で、小さくて可愛い女の子。
    この話、文体をちょっと変えたら日本人作家の作品と言ってもわからないのではないだろうか。なんというか、ブラウンアイズの造詣といい、ストーリーの生真面目さといい、日本人の好みに非常に近い気がするのである。

    ただ、私はラストがよくわからなくて、いまいち消化不良なのです(え゛?)。

  • すごく面白かったです。
    ヒロインのブラウンアイズがとても可愛く書かれていて良かったです。
    最後の逆転劇も良かったです。

  • 夏の避暑地を舞台にした恋愛小説。まさにボーイ・ミーツ・ガールなので、甘酸っぱい気持ちになりたいときにオススメかな。舞台設定はSFなんだけど、ストーリーは恋愛小説寄りで楽しく読めた。

    ちなみに、続編はあるけど翻訳されてないみたい。

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著者プロフィール

1932年、英国バーミンガム生まれ。SF作家。72年にカナダのブリティッシュコロンビア州に移住。『ブロントメク!』で英国SF協会賞受賞。2005年没。著書に『ハローサマー、グッドバイ』『カリスマ』他。

「2016年 『ブロントメク!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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