白痴 2 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463384

感想・レビュー・書評

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  • ロゴージン、アグラーヤ、そして、イッポリートがフィーチャーされる展開。イッポリートは、肺病を病んで余命わずかという青年である(たしか十九から二十歳位)。
    ペテルブルグ近郊の別荘地「パブロフスク」の地に、ムイシュキン公爵は寄宿。その他の登場人物も、同地に滞在している。
    本巻の後半部、ムイシュキンの誕生日の前夜、主要登場人物一同が集う。そして、この夜会で、イッポリートの長い「独白」が始まる。イッポリートは「わが不可欠なる弁明」なる論考を書き上げており、これを朗読するのだ。この「弁明」、60頁を超えるボリュームである。「カラマーゾフの兄弟」の「大審問官」を連想する。だが、「大審問官」ほどの切れ味はない。死を目前にした心境などを語るのだが、テーマ・論旨もよくわからなかった。
    さて、「カラマーゾフ」も「罪と罰」も、長編ではあるのだが、ひとつの太いストーリーライン、テーマの柱があり、その下にエピソードが収斂していくのを感じた。
    全体像をイメージしながら、読み進めることが出来た。
    だが、本作「白痴」は、お話がどこに向かっているのか、なかなかつかみづらい。大きな器に、様々なものが、ゴツゴツと放り込まれている、という様相。どこに連れて行かれるかわからない、読みづらさがある。物語を力強く書き込むよりも、種々の人間像を描くこと、あるいは、人々をまるごと群像のまま描こうとしているのか。
    この巻だけで500頁を超える大部でもあり、読み進めるのが辛くなってきた。

  • この巻(第2部~第3部7まで)は本当に何が何やらわからないことだらけ。まず第1部から6ヶ月の時間が開いて突然第2部が幕を開ける。この間あったことは極めて大まかにしか語られず、詳しい経緯は謎。公爵がアグラーヤに送った手紙も、すごく唐突で何を言いたいのかわからない。いろいろほのめかされるのに本当のところがなかなか明らかにならないから、先を知りたくてページをめくる手が加速する。
    脇役たちもガヤガヤと騒々しい。何かを画策するものあれば、公爵を正気の人間と考えていいものか判断の付けられないものもあり。イッポリートなんてほんのチョイ役だと思っていたら、この文庫にして50ページ超の「弁明書」を読み上げた挙句狂言自殺。なんなんだ…。主人公の公爵よりも、周りの人物たちの方がよほどぶっ飛んでいると思われるのだが。こんな人たちまともに相手にしていたらもともと正気な人間だって精神病むよ…。あ、だからみんな公爵に魅かれるのか。狂った人たちにも「まともに、誠実に」接してくれるから。ということはきっとみんな「自分はまともじゃない」と心の中ではわかっているんだな。うーん逆説的。

  • 裏表紙
    夜会での奇妙な事件から六ヶ月後、ムィシキンはペテルブルグに帰還した。
    ナスターシャ、ロゴージンとの愛憎入り交じった関係はさらに複雑怪奇なものとなり、さまざまな階層の人々を巻きこんでいく。
    自らの癲癇による至高体験や、現実の殺人事件にも想を得た、ドストエフスキー流恋愛小説を、画期的な新訳で!

    本書は文庫オリジナルの訳し下ろしです。

  • (意外と重要なことではないかと思うのだけど)この河出文庫版の『白痴』全三冊、表紙がいいですね。本当にイメージどおり。

  • いやー、結構苦労をして第2巻(中巻)を読了。
    はっきりいって登場人物が誰が誰だか…人物相関関係が分からなくなります。ネット上でどなたか登場人物一覧を作成くださっている方がいないかと検索したところ、「人物相関図」を作成されている方がおり、その図を頼りに読み解きました。

  • レヴュは3巻にて。

  • 第1巻がムイシュキン公爵とその影ロゴージン、更にはエパンチン家の秘書ガヴリーラという3人の男対ナスターシャの"恋の空騒ぎ"ならば、第2巻はムイシュキン公爵とガヴリーラ、そして途中から将校ラドームスキーの3人対アグラーヤのそれに変わり、あろうことかナスターシャがそこに介入するという、バブル期のトレンディドラマ真っ青の構図、結核で余命幾ばくもないイッポリートの自殺未遂が次のステージを用意するが、ナスターシャもアグラーヤも真意が図りかねて、無垢なムイシュキンが浮き立つばかり。つくづくロゴージンは人間臭い奴だ。

  • 登場人物たちの饒舌ぶりに舌を巻き、脱線につぐ脱線に翻弄されまくった第2巻(2〜3章)。各々の個性が際立ってきました。鼻っ柱の強いアグラーヤと(この巻では鳴りを潜めていた)ナスターシャとの女対決が予想されます。ムィシキンの真意は‥? エリザヴェータ夫人のヒステリックな情の深さが魅力的でした。‥では3巻へ。

  • ロシアの小説家・ドストエフスキーの代表作。ナスターシャという一人の高潔な女性を中心に、「白痴(バカ)」と形容される主人公・ムイシュキン侯爵と、情熱的で粗暴な男・ロゴージンという三者の愛憎と破滅しを基にして「愛」について描かれた小説。
    ムイシュキン侯爵は作者によって「無条件に美しい人間」として描かれており、ある種社会的な暴力性の代表として描かれているロゴージンとの対比の中で、純粋な「愛」の高潔さや儚さを訴えかけられているように感じる。
    この小説は、自身の体験やその時々におかれている状況により、読むたびに異なった感動(または疑問)を与えてくれる。

    事務局 K.M


    越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1000769541

  • 一部で自身の死刑判決に触れた様に、二部では持病の癲癇についてムィシキンの口を借りて語られる。曰くそれは「自意識が異常に強まる瞬間」であり、生命の力が異様な勢いで一挙に緊張するかの様な体験だという。ドストエフスキーの描く登場人物はどいつも熱に浮かれたかの如く喋りまくる上にヒステリー持ちなのも、癲癇の発作の様なものだと考えれば腑に落ちる。本作ではドストエフスキーの経験が直接的に反映されているが、それは三角関係というものを扱う上での必然だったのだろう。憎しみと区別の付かない愛情とは、そして哀れみとは愛なのか。

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著者プロフィール

(Fyodor Mikhaylovich Dostoevskiy)1821年モスクワ生まれ。19世紀ロシアを代表する作家。主な長篇に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『未成年』があり、『白痴』とともに5大小説とされる。ほかに『地下室の手記』『死の家の記録』など。

「2010年 『白痴 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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