- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309467122
感想・レビュー・書評
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『存在の耐えられない軽さ』で知られるチェコ生まれのフランス作家ミラン・クンデラが2009年に出版した文学や音楽などの芸術論集。本国フランスでは初版20万部がすぐに売り切れになるというベストセラーになったというから驚かされる。
評論の対象となるのは、文学からはラブレーやセリーヌ、美術からはフランシス・ベーコン、音楽からはヤナーチェク、クセナキスなど多岐に渡る。個人的には、20世紀を代表する現代音楽家の一人、クセナキスの作品に安らぎを見出したという小論が印象に残った。「プラハの春」の衝撃によって、音階という技法に基づく伝統的な西洋音楽から完全に乖離した、もしくは別世界に位置するクセナキスの音楽がクンデラにとって極めて美しいものに聞こえたという。
また、母国チェコを代表する作曲家であるヤナーチェクに関しては非常に思い入れたっぷりにその魅力が語られている。これを読みながらオペラ「イェヌーファ」を聞いているが、確かに素晴らしい。 -
ベーコンの解説と第一章の書評が良い。ワンポイントに絞り自身の経験を交え持論を展開する論理の筋と視点が明確かつ独自性がある。本から音楽までよくこんなに語れるなあと、惚れ惚れ。冗談、忘却、キッチュなどクンデラの文学作品を読む上でも重要なキーワードに触れられていて興味深い。
知らない芸術家がばかりだし、歴史にも疎くて正直全然分からないところが多いのだけど、所々ピカッと頭に知的なライトを付けてくれるのが病みつきになる。世の中には芸術に対してこんなにも真摯に向き合っている人がいると知ると、地球も悪くないかもと思える一冊。知的好奇心と創造性を刺激される。