すごい物理学入門 (河出文庫 ロ 3-2)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309467238

感想・レビュー・書評

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  • 【物理を知りたいと思っているあなたに贈る、最も軽やかで最も素敵で、あっというまに理解できる感動的な究極の名著。】
    という触れ込みであるし、文庫で実質120ページと軽めの本なので読んでみることにした。

    以前に読んだロヴェッリ氏の「時間は存在しない」は「ループ量子重力理論」という概念を説明する本だったが、本書もそうだった。
    ( [すごい物理学] とは [ループ量子重力理論] のことだったのかと納得 )

    最初に「一般相対性理論」と「量子力学」の概要を説明しているのは「ループ量子重力理論」への前振りでした。
    「超ひも理論」に関する書籍は多数あるが、「ループ量子重力理論」の本は少ないので多くの人に知って貰うための入門書としてはいいのではないでしょうか。

    本書が易しいと感じるのは、概念だけ述べて理論の説明をしていないから。
    アインシュタインの「一般相対性理論」についても、"空間も時間もゆがんでいる"程度のことしか言っていない。

    説明は軽やかですが理解はできません。例えば以下のような説明。
    「ループ量子重力理論によって記述される世界は、入れ物となる空間もなければ、事象が起こる時間軸も存在しません。
    存在するのは、空間の量子と物質とのあいだの絶え間ない相互作用による基本的な反応だけです。」
    空間も時間もない、と言った次の行で空間と時間が出てきている?何を言っているのか分かりません。

    「ループ量子重力理論」についても、"空間も時間も存在しない特異点がある"という考えだと言っているだけ。
    つまり、宇宙の始まりというとビックバンが出てきますが、ビックバンは「反跳」を起こす特異点だという理論の啓蒙書なんですね。

    とりあえず読んでみて、触れ込みにある「あっという間に理解できる」人とは「(本気で)物理を知りたいと思っている」限られた人だと思う。
    理科に興味がない人には変な教えの宗教か哲学の本を読まされているようで、読み通すことも苦痛かもしれません。
    物理に限らず、「○○をあっというまに理解できる」本などありません。

    物理の世界を感じたいなら「世界でいちばん素敵な物理の教室」とか子供向けの本がいいでしょう。
    この本が面白いと感じて、もう少し知りたいと思った人には多田将さんの「すごい宇宙講義」もお勧めです。

  • カルロ・ロヴェッリといえば、ベストセラー「時間は存在しない」の天才物理学者
    個人的には「科学とは何か」に次いで2冊目

    こちらは「世界一わかりやすく美しい『七つの講義』」が売り文句
    対象者は一応(ワタクシのような)初心者向け

    ついつい備忘録を書きたくなるが、本書はそんなことより圧倒的な何か大切要素が詰まっており、
    未だかつて体感したことのない不思議な感覚の理系書籍である
    何が凄くてベストセラーとなったか…について、私なりの分析を踏まえご紹介したい

    まず一番驚くのがものすごく凝縮されているのにも関わらずしっかり伝わる凄さ…だ
    そう、ギュッと凝縮しているのにバンバン伝わる
    素晴らしくコンパクトにまとまっている(文庫本としても全く厚くない)
    そして「量子力学」や「一般相対性理論」などの複雑難解な物事をこれほど柔らかくほどいて説明できるというセンスはお見事
    なんだかまるでエッセイでも読んでいるような緩めの心構えで大丈夫なのだ(理解できているかは別だがイメージと概要は掴める)

    一つ例を挙げてみる
    アインシュタインの理論が理解できなくても、以下の内容は理解できる
    〜アインシュタインによって、宇宙は爆発とともに誕生し、空間は出口のない穴に沈みこみ、時間は惑星に近づくほどゆっくり流れ、果てしなくひろがる星間空間は海面のように波立っているという、驚きに満ちた世界のようすが記述された〜
    神秘的で美しく、イメージが湧くはずだ

    そして理系の本なのに、著者が誰であるか全く見えないようなお堅い教科書的な書ではなく、彼の個性がきちんと見える
    だからといって、昨今にありがちな「いかに理系の苦手な方にも受け入れてもらえるか」に力を注いたような涙ぐましい努力が見え隠れする書とは全く違う(笑)
    いくつかの詩を挿入させたり、(先日読んだ某書では清少納言を絡めておられた…ような)文系要素を押し込んできたり、
    はたまた小説家を気取った著者のプライベートが語られたり(ありがたい反面、ちょっと無理があるなぁと感じることも…でも別にクレームではございません)

    しかしながらカルロ・ロヴェッリの場合、哲学的でセンスの良さが光り、揺れのある感情さえも物理学の中で大切にする…
    恐らくユーモアと愛情に溢れた人物なのではないだろうか
    そしてこれは私の偏見なのだが、イタリア人らしさをしっかり感じることができる
    (読みながら「ベーネベーネ」と何度も偉そうに頷いておりました)
    このような心に響く科学の本があるとはちょっと驚き

    世の中の仕組みを知る
    自然を知る、世界を知る、宇宙を知る…
    すなわち己を知ることに繋がる
    そうすることで何か人間としての生き方さえも学べ、この地球で生きるための義務や姿勢さえも感じることができる
    広く深く
    押し付けがましくなく
    自然なのに圧倒的な…(ちょっと盛り上げすぎだけど)
    そんな魅力的な内容であった

    ただ、「一般相対性理論」とは何ぞや…というピンポイント知識の為だけの書籍としては物足りないのでそういう期待をして読む本ではないかな
    そこを求める人にはちょっと満足できないかも

    とりあえず次の「すごい物理学講義」も読んでみたい


  • 『時間は存在しない』のカルロ•ロヴェッリ。
    解説では、リベラルアーツ的な知の在り方を考えさせられたというようなことが書かれていたが、読んでいると最近読んだ哲学書との重なりが見えてきて、面白い。

    自由意思とは何か。
    まさか物理学の本でもこの問いに触れるとは思わなかったのだけど、ある本では「偶然性」と述べていたように、この本の言葉を使うとすれば「確率」の一つなのかもしれない。

    一般相対性理論と量子力学の世界の見え方?の違いも、面白い。なのに、両方それぞれもっともらしく、またその考え方があったから、進んだものがある。

    「世界の圧倒的な傑作といえるものは、いずれもその真の素晴らしさを理解しようと思ったら、一定期間の修業を積むことが求められます。努力をすれば、純粋な美という褒美を手にできるだけでなく、世界に対する新しい視野もひらけるのです」

  • こんなにコンパクトにまとまった一冊に物理学の概要が学べる。しかも、読んでいて理解した気分になれるほどにわかりやすい。訳者後書き含めても150ページに、広大な宇宙全体の法則を謎とく旅に連れて行ってくれる素晴らしい本。
    一般相対性理論、量子論、宇宙の構造、素粒子、量子重力理論、ブラックホールをめぐる確率と熱について、これら6つの講義と最終講義で自然界における人間とは何者か?について学べる。
    繰り返し読んで、暗記したい。そして、何かの折に、この本の一節を交えた会話をしてみたい(気が早いか・・・)。
    イタリアの経済紙『イル・ソーレ・24オーレ』の日曜特別紙面「ドメニカ」で連載した記事に手を加えたものとある。新聞の日曜版での連載と言われれば納得のボリューム。
    本書を読んでから、量子論や量子重力理論に関する書籍を手に取りたい。帯に書いてある通り、「誰もが感動する究極の入門書」であるからだ。

  • 現代物理学のテーマにつきてイタリアの新聞に連載したコラムに加筆したもの。
    内容としては、あくまでもコラムに加筆したものなので、自分で本を選んだりするための取っ掛かりくらいの位置づけになる。

    裏表紙にはあっというまに理解できるとあったが、物理学をの理論を学ぶための前提知識が理解できるわけではないので邦題と合わせてミスリードだと思う。
    むしろ、本書はニュートン物理学から発展した相対性理論、量子論など現代物理学の柱となる理論の位置づけが整理されることが効用であると思う。
    物理学に限った話ではないが、現代の科学は直感と反するところが多いため、無意識的に直感を形作っている固定観念を解くことは多いに有益で、本書はそういう効用が得られる。
    私は特に「空間は物質で満たされている箱のようなものではなく、空間それ自体が物質である」という話でそれを感じられた。
    ビッグバン以前は「無」である、というのはよくピンとこない話の例として挙がるが、ここの違和感がすっきりした。
    そもそも「空間がある」ということのイメージが更新されたことにより違和感が解消されたのだと思う。

    知識を受け入れる土壌となるのが教養であり、無意識的に固定化して独りよがりになっているイメージをアップデートして、土壌を豊かにするための手段が読書であるというのが私の価値観なので、私の価値観に照らすと本書は読書の楽しみを感じられる1冊だと思う。
    ただ、物理学の前提がない人にむけてと始めに書いてあり、入門というからにはもう少し物理学自体の知識にも触れて欲しかった。
    数学や物理学の本で「数式が必要ない」を売りにするのは数式への逃げの姿勢だと思うし、本当に理解するには数式というツールは必須のはず。
    本書に限った話ではないし、邦題や裏表紙の紹介文について著者は責任はないが、入門書という位置づけなら数式から逃げずに説明しきってこそ理解させたといえるのでは。

  • 新聞のコラムとして投稿した記事をまとめたもの。平易な文章で宇宙や量子力学の最前線を紹介してくれている。前著のすごい物理学講義を読んだ後だからか、大まかな内容だなと感じたけど初手としてはその魅力に触れる意味で最適かなと。

    最終講義が秀逸。著者の学問の意味、自然科学と人文学の垣根を超えたシンクロなんかを諭してくれて、人間の好奇心、探求心は果てしないし心が躍る。そう、未知のことへの挑戦は人間の性なのだ。人間も自然のほんの一部、自由意志なんてものはないのではという不安を、自然の一部である脳ニューロンの決定という自然の法則に従っている限り自由なのだと。読んでいると浮遊感がすごい。スピノザの一元論(汎神論)にも言及しており、ここにも人文学と自然科学の融合が垣間見れる。
    「統合情報理論」にも食指を伸ばすしかなくなるな。知識欲がリンクして、これこそが学ぶ楽しみですね。

    P130
    いいえ、そうではありません。私たちを形づくっているものの何ひとつとして、自然の法則に従わないものはありません。・・・私たちが自由であるいうとき、・・・それはつまり、私たちの内部にある、脳のなかで起こっていることによって私たちの行動が決定づけられており、外部から強要されたののではないということです。「自由である」とは、なにもなにも私たちの行動が自然の法則に左右されないということではなく、私たちの脳の中で作用する自然法則に従っているということなのです。

    とはいえ、ループ量子重力理論なんてものを自分で語れるくらいに理解できるのは、もっと専門的な書籍に挑戦するしかないのでしょう。
    ”P146「世界に対する新しい視野」を身につけること”は一朝一夕ではか叶わないが、在野の人間として愚直に真摯に歩んでいきたいと勇気づけられました。

  • 相対性理論や量子力学などが描く世界は、私達が日常ありありと感じている世界とは途方もなくかけ離れている!それが高校時代に理科・数学に挫折した文系人間の私が得た本書の感想。
    一般相対性理論の視点では、空間は不動の入れ物ではなく、動いている巨大な軟体動物の中に私たちは蹲っているようなもので、それが縮んだり曲がったりしているそうである。一方、量子力学的な視点では、あらゆる場は、細かな粒子状の構造になっており、物理的空間も量子でできているという。そして近年ではこの一般相対性理論と量子力学を統合しようとする試みとしてループ量子重力理論が提唱されているという。この理論によると、もはや空間の量子というものは存在せず、「時間」という概念まで消えてしまうと考えられるという。
    そのような奇妙な世界に生きている我々も、この物理的世界の構成物であるという。物理の世界は敷居が高いと感じる人にも、その世界へやさしく誘ってくれる素晴らしい本と感じる。

  • ①重力場という概念
    ニュートンは引力を発見したが、何故二つの物体同士に引力という力が備わっているかは未解明であった。
    これを解き明かしたのがアインシュタインである。
    アインシュタインは「重力場」という概念を提唱した。重力場は地球や宇宙にある空間のことであり、平らなマットをイメージしてもらうと分かりやすい。マットの上に、太陽という巨大な鉄球と地球という小さな木の玉がある。太陽は大きく重いためマットに沈み込み、太陽の周りのマットが漏斗型にヨレる。太陽と地球の位置は離れているものの、地球は軽いため、マットの歪みに合わせて太陽に引き寄せられ、いずれ二つはぶつかることになる。これが引力の正体だ。実際の地球は、漏斗型になったマットの形に沿うように太陽の周りをぐるぐる回っている。地球は直進しようとしているが、重力場が波打っているため、漏斗円に円運動を繰り返してしまうのだ。
    ブラックホールも原理は同じであり、それは太陽以上に重く、原子核程度の小さな点まで縮小した恒星のなれの果てだ。ブラックホールはその重さゆえに宇宙に強力なひずみを作り、直進する光さえも屈折させるため、真っ黒に見えるのだ。
    ブラックホールは恒星の終焉だが、宇宙そのものの終焉が起こった結果発生したのがビッグバンだ。ビッグバンは、過去の宇宙が重みによりどんどん縮小し、極小サイズまで収縮したあと反発し膨張した結果発生したと考えられている。もしこの理論が正しければ、ビッグバンの前は無ではなく、今より古い宇宙だったのかもしれない。

    ②量子論について
    光は粒子であり、波でもある。これは条件によってどちらか一方になるということが定義づけられているわけではなく、観測方法によって変わる。一見、粒という「点」の物質と波という「揺らぎ」の物質が同じものであるとは、到底信じがたい。
    これを一緒くたに解決することを試みるのが「ループ量子重力理論」だ。
    ループ量子重力理論は、「空間の原子」と「原子同士の関係性」に着目する理論である。
    時空は、本質的に連続で滑らかな値をとるものと考えられてきたが、この理論では、量子のふるまいのように、時空も離散的な(とびとびな)値を取るものと考えられている。
    自然は単一のテンポからなる連続的な空間ではなく、空間と空間にある量子が独自のリズムを刻みながら、近くのもの達と個別に反応する。物体は単一のゆるぎない個体から出来ているのではなく、最小単位ごとに変化しており、この変化の総計(単位全てを個々に見た時の揺らぎの平均値)として物体が存在する。物体は個体ではなく現象なのだ、と言ってもいいかもしれない。
    量子力学の研究によって、物理学に確率論や統計論が持ち込まれることになった。


    ③時間
    量子力学の発達で、「今」という概念も不確実なものになってきた。現在というものは、客観的な「ここ(話者がどこで発するかによって異なる意味を生む用語)」が存在しないのと同じように、絶対的なものではなく、無数にある変数の平均値なのではないかと考えられる。

  • h10-図書館ー2024/02/12 期限2/27 読了2/ 返却2/20

  • 世界の見方。科学が明らかにしたこと、まだ明らかになっていないこと。
    理解し切れたわけではない。少し垣間見る、直観と異なる世界、新しい視点。

    ・ニュートンは、自らの導き出した結果の限界に自覚的だった。

    ・ファラデーは、懐疑と熟慮の末に、力線は実在すると結論づける。しかし彼はその結論を、「ためらい」とともに提示する。というのも、ファラデーの考えによれば、「科学の根幹にかかわる問題に相対するとき」、わたしたちはつねに「ためらい」を抱くべきだから。

    ・色とは、光を形づくる電磁気の波の振動数(振動する速度)である。

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著者プロフィール

1956年、イタリア生まれ。ボローニャ大学からパドヴァ大学大学院へ進む。ローマ大学、イェール大学などを経てエクス=マルセイユ大学で教える。専門はループ量子重力理論。 『すごい物理学講義』など。

「2022年 『カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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