(萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文 (14歳の世渡り術)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309617466

感想・レビュー・書評

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  • 古文の世界は魅惑的なカップリングだらけ。そこを萌えポイントにすれば、苦手な古文も好きになるし、忘れない。そんなコンセプトで書かれたのが本書。

    冒頭は私もイチオシの中宮定子と清少納言の『枕草子』。その後は『源氏物語』『伊勢物語』『落窪日記』『更級日記』『とりかへばや物語』…。

    何ともおもしろい視点のアプローチで、ざくざくと読み進めた。古文はちょっと…という人も楽しく読めることは請け合い。ちょいちょい出てくる若者言葉や中年オヤジへの辛辣な物言いに、まさにオッサンな私は若干たじろいだが(笑)。

    なかでも私がおもしろく読んだのは、高校の授業
    の時から凄まじく親近感を覚えた『更級日記』で知られる菅原孝標女。文学オタクのイメージだったが、そうなるのかと興味津々。
    そして最終章の『古今和歌集』。これは萌える!なんじゃ、この大河も真っ青な人間ドラマは!おお、萌えるとはこういうことかと興奮して、出てきた短歌を書き留めた。

  • 「(萌えすぎて)絶対忘れない!妄想古文」 三宅香帆著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/317644

    (萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文 :三宅 香帆|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309617466/

  • 「光る君へ」が面白く観れるように、ちょっと古文の知識入れとこ。と思って読みました。
    紫式部と道長は関係があっただろーと当然のように思っていたが、紙くれたからぐらいしか根拠のないとしてわかっていなかった。紫式部日記の中の和歌のやり取りから推察されるわけね。
    道長が、源氏を見て、梅の下に敷かれた紙に「すきものと名にし‥」酸っぱくて美味しいと評判の梅の枝を折らずに通り過ぎる人がいないように、源氏作者を前にして口説かないわけにはいかないのです。
    返し「人にまだ折られるものを‥」まだ折られていないのに、どうして味がわかるのですか?どうして評判が立つのですか?
    そしてその晩、ドンドン戸を叩く音。無視。
    翌朝「夜もすがら水鶏よりけに‥」水鶏はコンコンと鳴きますが、私は一晩中水鶏より大きな音で叩いてましたよ。
    返し「ただならじとばかりに‥」普通じゃない叩き方でしたが、お遊びでしょ。そんな水鶏に開けたら後で後悔しますから。

    源氏物語の、源氏と若紫。後の紫の上の初夜の場面。源氏のクズ男っぷり。なるほど。よく知る22歳の今までいいお兄ちゃんだった人が14歳の子をいきなり襲う。しかも、綺麗になったなあー藤壺に似てるなぁだって。身代わりか!
    「あやなくも隔けるかな‥」どうして僕たち今まで服を脱がさなかったんでしょうね。と下品な歌。しかも、若紫の情けない気持ちに、全く気付かず、「まだ子供だなあ、かわいいなー」と思うだけ。

    歌物語 「うい、大和、ヘイ」歌物語、伊勢、大和、平中
    作り物語「作ったうつぼ」作り物語、竹取、宇津保、落窪
    平安以後の物語「源氏、ハマ、チュ、夜目覚めて、衣を取り替えて」源氏、浜松中納言、堤中納言、夜半の寝覚め、狭衣、とりかえばや

    紀貫之 職業歌人として評判高く、文学の世界で活躍。しかし身分は高くない。自分は歌を作りながらひっそりと人生を終えるのだと思っていたら、ある日天皇から「現代最強の歌集を作ってくれ」「へっ?」古今和歌集

    「俊頼髄脳」に貫之、躬恒コンビの連歌。
    「奥山に船漕ぐ音の聞こゆるは」
    「なれる木の実やうみわたるらむ」
    海と熟み 掛詞。

  • 古文の勉強が楽しくなる。

  • 見えないモノを見ようとして望遠鏡を覗き込む。
    目の前に見えているやり取りのわずかな隙間に、行間にひょっとして…?と考えて二人の関係やそこに生まれる感情を補完してしまう。
    これこそがカップリングが大好きな人間の業である。
    それぐらい人間ドラマが、人間関係が好きだ

    『名作古典はカップリングだらけ!? 伊勢物語から古今和歌集まで、古文を「カップリング≒関係性の解釈」で妄想しながら読み解く本。「萌えポイント」さえ掴めば楽しく学べて、忘れない!』妄想古文/三宅香帆

    この紹介文を見たらカップリングが大好きなオタクは読まざるを得ない。
    私はそれらに萌える。
    映画や漫画やアニメの登場人物たちの関係性、そこにぐるぐると流れる大きな感情。
    おもしろいに違いない。人間の感情が揺れ、轟く様子はどうしたっておもしろい。

    人間、千年前も今も相変わらずおもしろい生き物だなあと思う。
    時代は明確に違うはずなのに、なんだか現代の人間たちと同じようなことで悩み、同じようなところで躓いている。
    三宅さんのわかりやすく作品への愛がこもった解説でつまびらかにされる古文に出てくるカップリングたち。
    もう推しカプ(=推しカップリング)候補がありすぎて、こういう時どんな顔すればいいのかわからないの。

    三宅さんが最も推したいという中宮定子×清少納言のカプ。
    こういうカプ、好きです。まんまとハマりそう。
    片方から巨大な矢印がぐーんと向かっているように思わせて、もう片方からも大きさは小さくとも、たくさんの矢印がびゅんびゅんと伸びている相思相愛カプ。
    枕草子は清少納言が中宮定子との日々を書いたエッセイだ。
    定子に起こる悲劇等は描かず、彼女の素敵な部分だけを思いっきり抽出して綴っているという。
    もう清少納言の健気さに胸が苦しくなる。
    好きな人の良いところをしか、美しい部分しか描かない。
    これは個人的にかなり覚悟のいることで、難しいことだと思う。
    三宅さんの解説を読んで思ったことだから、また枕草子をちゃんと読めば考えが変わるのかもしれないけど、清少納言は何があっても、絶対に、定子が憐れまれるような状況を作りたくなかったのかなと思った。
    同情や憐憫は清少納言のなかで定子に向けられるべきではない、自分の大好きな人がそういう対象になることが耐えられない、許しがたかったのかもしれない。
    定子が見舞われたあれこれを正直に清少納言が書いていたら、きっと色んな学校の古文の先生は訳知り顔で「この中宮定子はねえ、けっこう悲劇的な人だったんですよ」みたいな小話を始めるに違いない。
    清少納言の「そうはさせてなるものか」という気概を感じる。
    これが愛ではなくてなんだというのか。
    枕草子、そんな一面があったの……?もうこれは原作をちゃんと読みたい。
    読んで清少納言の定子への愛情に触れたい。

    本書内で紹介されていた「『枕草子』は清少納言が中宮定子の鎮魂のために書いたものである説」。これを個人的にめちゃくちゃ推していきたい。
    オタクにとって二人を永久に別つ死とはかなりビッグな出来事だ。
    推しカプの片方が死んだときにもう片方がレクイエムを贈るという一連の流れ、大好きですから。
    山本淳子先生の『枕草子のたくらみ「春はあけぼの」に秘められた思い』も絶対に読みたい。

    古文。有名作品の内容はだいたい知っている。高校のころからもっと読みたい、理解したいと思っていた。
    でも現実にはそうはいかず、どうしても知識先行の授業内容や参考書の内容は興味の芽を早々に摘み取ってしまう。

    三宅さんはまえがきで授業で取れる古文の時間は短い。わかりづらいのも仕方のないことだ、と書いてくれている。
    この一文にかなり気が楽になった。
    近寄りたくてもなんか近寄りがたくて、近寄ってみたはいいものの自分が打ちのめされたときのことを考えると手が出しづらい分野ではあった。
    でもずっと古文で取り扱われる作品のことをもっと理解したい、近づきたいと思っていた。

    『本書でお伝えする、学校では教えてもらえない、古文のおいしい部分。
    それは―古文で描かれている、人間関係の面白さを知ること。
    つまりは【推しカップリングを見つけること】なのです。』妄想古文p17/三宅香帆

    人間は人間と関わることから逃れられない。だからこそ人間関係が重厚に描かれた作品や人と人との絆やつながりにフォーカスしたコンテンツは注目され、人気があることが多い。
    古文も同じで、同じように楽しめる。
    人間関係によって生まれる感情の機微をわかりさえすれば。
    職場のこと、家族のこと、恋愛のこと。
    どれも関わる人間がいるからこそ生まれる悩みで、それは今も昔も変わらない。
    古文は物語として充分におもしろいのだと教えてもらえた。
    ひとまず角川のビギナーズ・クラシックスあたりから楽しんでみたい。

  • 清少納言と紫式部があまり仲が良くなかったぐらいしか知らないほど古典は苦手中の苦手。図書館で目に留まったので借りてみました。

    シスターフッドやブロマンスは大好きなので推しカップリングという視点で読み解かれているというのも心惹かれました。

    トップバッターは『枕草子』、著者曰く布教ファンブログだそうです。

    歌も取り上げられていますがこの訳がとても分かりやすい(笑)。今の子たちにはこれぐらいのほうが親近感が湧くでしょう。あと歌自体も簡単。短いお手紙、という感じ。

    和歌というと百人一首のいくつかしか知りませんが教科書に載っていたものはたぶん技巧が凝っていて難しいものばかり目にしていたのかも。

    続いて『源氏物語』や『伊勢物語』などが紹介されていますが、最近になり写本が見つかったという『有明の別れ』という作品の内容がすごい。神のお告げにより男装して生きていく超能力を持つ有明姫。もうラノベだし、もし超能力でチートならなろう系では(話の展開もなかなかすごい…)。

    一番気になったのは『古今和歌集』の紀貫之と凡河内躬恒(著者曰く平安のビートルズ)。紀貫之も文学史の中で勉強した名前しか知らない上に、ぼ、ぼんかわち??誰?ぐらいの知識で我ながら酷い。凡河内 躬恒(おおしこうち の みつね)、がんばってチェックしてみよう。

  • 自分に引き寄せると一気に古文も興味がわく。
    源氏物語も知っている気になっているだけで
    読んだことがないので一度しっかり読んでみたい。

  • 古文のテストにはほとんど出ないだろうけど古文の勉強のモチベーションにはなりそう。時代背景の説明もするする読めて面白かった。
    しかし、2022年でもこの感情は「萌え」でいいんだね?!となりました。レーベル的な想定読者層は中高生だけど、今の中高生は「萌え」っていうのかな……

  • わかりやすくて面白かった!
    文中にもある通り、1000年の時を超えて残ってきた文章は、一度や二度では味わいきれない!
    文芸の裏にある人間ドラマ、楽しめました。

  • 古文て動詞や形容動詞の活用ばかり覚えて中身は全く忘れてしまっているし難しかった記憶しかないという諸君に、本当は面白い古文というのをわかりやすく教えてくれる良書。

    私はすでに作者の三宅氏のファンで彼女の本を何冊も読んでいるのだがやはり過去の名文を令和の時代に合わせて現代人に伝えてくれるのが巧い。

    本当はもっと1冊1冊を深堀りしたいんだろうーなーという気持ちを抑えて、おいしい部分だけを凝縮して興味を持ってもらえるように仕掛けている。挿入されているイラストも素晴らしい

    『枕草子』『源氏物語』『紫式部日記』『伊勢物語』『落窪物語』『更級日記』『浜松中納言物語』『とりかえばや物語』『有明の別れ』『万葉集』『古今和歌集』と取り上げているものが多く、そのどれかには共感できる。個人的には『更級日記』を読んでみたくなった。

    2024年の大河ドラマは紫式部に決定したそうだ。まずはこの本で予習をするとよいかも

    三宅氏は江戸時代のものなどまだまだ書きたいものがいっぱいあるという。この本が売れたら続編が出そうな勢いなので是非ぜひお願いしたい

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著者プロフィール

1994年生まれ。高知県出身。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。大学院時代の専門は萬葉集。大学院在学中に書籍執筆を開始。現在は東京で会社員の傍ら、作家・書評家として活動中。
著書に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)、『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』(幻冬舎)、『妄想とツッコミでよむ万葉集』(大和書房)、『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(笠間書院)。ウェブメディアなどへの出演・連載多数。

「2021年 『女の子の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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